LAP(ラップ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

LAP(ラップ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

ローカルエリアポート (ローカルエリアポート)

英語表記

Local Area Port (ローカルエリアポート)

用語解説

LAPは、Link Access Procedureの略であり、データリンク層で動作する通信プロトコル群の一つである。主に、物理的な伝送路を介してデータを信頼性高くやり取りするために用いられる。国際的な標準化機関で定められたデータリンク層プロトコルであるHDLC(High-level Data Link Control)をベースに、特定のネットワーク環境に合わせて機能が具体化された派生プロトコルとして開発された。初期にはX.25と呼ばれるパケット交換網のデータリンク層プロトコルとして広く利用され、その後もISDN(Integrated Services Digital Network)やフレームリレーといった様々なネットワーク技術に応用されてきた。その主な役割は、物理的な回線におけるデータの誤り検出と訂正、データの順序保証、フロー制御などを行い、上位層のプロトコルに対して信頼性の高いデータ転送サービスを提供することにある。

データ通信においては、物理的な伝送路はノイズや信号の劣化によって、データが破損したり失われたりする可能性がある。また、送信側が高速にデータを送っても、受信側の処理能力が追いつかなければ、データが溢れてしまう。LAPは、このような問題を解決し、確実なデータ伝送を実現するための仕組みを提供する。具体的には、上位層から渡されたデータを一定の長さの「フレーム」と呼ばれる単位に分割し、それぞれのフレームにアドレス情報、制御情報、そして誤り検出用の符号(FCS: Frame Check Sequence)などを付加して送受信する。受信側はFCSを用いてデータの破損をチェックし、問題があれば再送を要求したり、破棄したりする。また、シーケンス番号を用いてフレームの順序が入れ替わっていないかを確認し、フロー制御機構によって受信側の準備が整うまで送信を一時停止させるなどの制御を行う。

LAPのプロトコルにはいくつかの種類があり、それぞれ適用されるネットワークや機能に特徴がある。

最も代表的なものの一つが**LAPB(Link Access Procedure, Balanced)**である。これはX.25パケット交換網のデータリンク層で標準的に利用されたプロトコルである。LAPBは「平衡型(Balanced Mode)」という操作モードをサポートする。これは、接続された二つのステーション(端末)がどちらもデータの送信を開始でき、またデータの受信、エラーの回復といった役割を対等に果たすことができることを意味する。LAPBは、ポイント・ツー・ポイント(1対1)の接続において、極めて信頼性の高いデータ転送を実現する。前述のフレーム構造に加え、スライディングウィンドウプロトコルを用いたフロー制御や、肯定応答(ACK)と否定応答(NACK)に基づくARQ(Automatic Repeat Request)によるエラー回復機能を備え、データの確実な配送を保証する。データの損失や重複、順序の入れ替わりが発生しないように厳密に制御されるため、当時の信頼性の低い回線環境において非常に重要な役割を果たした。

次に、**LAPD(Link Access Procedure on the D-channel)**は、ISDN(Integrated Services Digital Network)のDチャネル(信号チャネル)で利用されるプロトコルである。ISDNでは、Bチャネルで音声や高速データを伝送する一方、Dチャネルで呼設定や切断などの制御信号、あるいは低速なパケットデータを伝送する。LAPDの最大の特徴は、一つの物理的なDチャネル上で複数の論理的なデータリンク接続を多重化できる点にある。これは、SAPI(Service Access Point Identifier)とTEI(Terminal Endpoint Identifier)という二つの識別子を組み合わせたデータリンク接続識別子(DLCI: Data Link Connection Identifier)を使用することで実現される。これにより、例えば一つの物理的なISDN回線を通じて、同時に音声通話の制御と、別の端末からのパケットデータ通信の制御を行うことが可能となる。LAPDもLAPBと同様に、信頼性の高いデータ転送機能を持つ。

さらに、**LAPF(Link Access Procedure for Frame Relay)**は、フレームリレーネットワークで利用されるプロトコルである。フレームリレーは、X.25よりも高速なパケット交換サービスを提供するために開発された技術であり、LAPFはその設計思想を反映している。LAPFは、LAPBやLAPDと比較して、データリンク層での信頼性保証機能を意図的に簡素化している点が特徴である。具体的には、フレームリレー網内でのエラー回復(再送処理)や複雑なフロー制御は行わず、ネットワーク内でエラーが検出されたフレームは破棄される。これらの信頼性保証機能は、より上位層(例えばTCP/IPのTCP)に委ねられるという前提で設計されている。これにより、LAPFは処理のオーバーヘッドを削減し、高速なデータ転送を実現している。LAPFは主に、フレームの区切りと誤り検出、そしてDLCIによる論理チャネルの識別を担当する。

LAPプロトコルは、このようにネットワークの進化とともに様々な形態をとり、データ通信の信頼性を支えてきた。今日では、X.25やISDNといった従来のネットワークインフラは、より高速で効率的なTCP/IPベースのイーサネットや光ファイバーネットワークに大部分が置き換わっているため、LAPプロトコルが直接的に利用される場面は減少している。しかし、LAPが提供してきたフレーム化、誤り検出・回復、フロー制御、多重化といった基本的な概念や技術は、現代のネットワークプロトコルの設計思想の中に深く根付いている。例えば、PPP(Point-to-Point Protocol)や無線LANのMAC層プロトコルなど、様々なデータリンク層プロトコルにおいて、LAPが培ってきた信頼性確保の技術が形を変えて応用されている。システムエンジニアを目指す初心者にとって、LAPを学ぶことは、データ通信の基本的な原理と、なぜそのような機能が必要とされ、どのように実現されてきたのかを理解するための重要なステップとなる。これは、現代の複雑なネットワークシステムの動作原理を深く理解するための基礎知識として非常に価値がある。

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