【ITニュース解説】Markdown方言乱立の歴史
2025年09月10日に「Qiita」が公開したITニュース「Markdown方言乱立の歴史」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
Markdownはドキュメント作成に便利な言語だが、ツールやサービスによって書き方や表示結果が異なる「方言」が存在する。これはMarkdownの仕様が統一されていないためで、乱立に至った歴史的経緯がある。
ITニュース解説
Markdownは、システムエンジニアを目指す皆さんにとって、日々の業務で非常に頻繁に利用する機会がある重要なマークアップ言語の一つだ。これは、文章を簡単に記述し、それをウェブページやドキュメント、プレゼンテーションなど、様々な形式に変換できる点が大きな特徴である。シンプルな記法で構成されているため、プレーンテキストとして読んだ際にも内容を把握しやすく、GitのREADMEファイルや、技術ブログ記事、最近では生成AIとの対話において入力するプロンプトなど、その活用場面は多岐にわたる。
しかし、この便利なMarkdownには、「方言」と呼ばれる、書き方や表示結果に差異が生じる問題が存在する。利用するツールやサービスによっては、同じように書いたつもりでも意図した表示にならなかったり、特定の機能が使えなかったりといった経験を持つ人もいるかもしれない。この「方言乱立」の現象は、Markdownの歴史的背景と深く関連している。
もともとMarkdownは、2004年にJohn Gruber氏によって考案された。その目的は、HTMLを直接記述するよりも、もっと簡単に、しかしウェブでの公開に適した形式で文章を書けるようにすることだった。彼は非常に読みやすい記法を設計し、それをHTMLに変換するツールも同時に提供した。このオリジナルのMarkdownは、そのシンプルさと直感性から瞬く間に人気を集めた。しかし、ここで一つの重要な点がある。John Gruber氏が公開したMarkdownの仕様は、非常に簡潔であり、厳密にすべての挙動を定義しているわけではなかった。これは、Markdownの柔軟性を生む一方で、後の「方言」の温床となる。
Markdownが広く普及するにつれて、さまざまな開発者や企業が、それぞれの目的やニーズに合わせてMarkdownを拡張し始めた。例えば、テーブル(表)の記述や、コードブロックのシンタックスハイライト(色分け表示)、タスクリスト(チェックボックス)など、オリジナルのMarkdownにはなかった機能を追加したいという要望が多く出てきた。それぞれのツールやサービスが、独自の記法や拡張機能を実装していった結果、同じ「Markdown」という名前を冠していても、その裏側で動く処理系(パーサーと呼ばれる、記述されたMarkdownを解釈して別の形式に変換するプログラム)によって対応している記法や、それらがHTMLに変換された際の出力結果が異なる状況が生まれたのだ。
これが、いわゆるMarkdownの「方言」と呼ばれる現象である。たとえば、GitHubで使われているMarkdownは、オリジナルのMarkdownに加えて、GitHub Flavored Markdown (GFM) という独自の拡張を含んでいる。また、Qiitaのような技術共有サービスや、Notionのようなドキュメントツール、Slackのようなチャットツールでも、それぞれ独自の拡張が施されている場合が多い。システムエンジニアを目指す皆さんにとって、これらのツールの多くは日常的に触れることになるだろう。そのため、利用する環境によってMarkdownの挙動が異なることは、ドキュメント作成時の混乱や、意図した情報伝達ができないといった問題につながる可能性がある。
この「方言乱立」の状況は、Markdownの学習者にとっても課題をもたらす。どの記法が標準的なのか、どの記法を使えば互換性が高いのかが分かりにくく、特定のツールで覚えた記法が別のツールでは使えない、といった事態に直面することもあるからだ。
このような問題意識から、Markdownの標準化を目指す動きも出てきた。その代表的なものが「CommonMark」である。CommonMarkは、Markdownの曖昧な仕様を明確にし、異なる処理系間での互換性を高めることを目的として、厳密な仕様を策定しようと試みた。これは、どの処理系を使っても同じMarkdownの記述が同じHTMLに変換されることを目指すものである。CommonMarkの登場により、ある程度の統一性は図られたものの、すでに世の中に広く普及している多くの「方言」が完全に消滅したわけではない。既存のツールやサービスは、それぞれの目的に合わせて独自の拡張を維持しているケースも多い。
システムエンジニアとして、このMarkdownの「方言乱立」という状況を理解しておくことは非常に重要だ。ドキュメントを作成したり、他者の作成したドキュメントを読んだりする際には、常に「今使っているツールやサービスが、どのMarkdown方言に対応しているのか」という視点を持つことが求められる。多くの場合、ツールの公式ドキュメントやヘルプページに、対応しているMarkdownの記法や拡張機能について記載されているため、それらを積極的に確認する習慣を身につけることが、不必要な混乱を避け、効率的な情報共有を行うための鍵となる。Markdownの基本をしっかり学びつつも、その多様性を理解し、利用する環境に合わせて柔軟に対応する能力は、これからのシステムエンジニアにとって不可欠なスキルの一つだと言えるだろう。