Webエンジニア向けプログラミング解説動画をYouTubeで配信中!
▶ チャンネル登録はこちら

【ITニュース解説】The treasury is expanding the Patriot Act to attack Bitcoin self custody

2025年09月12日に「Hacker News」が公開したITニュース「The treasury is expanding the Patriot Act to attack Bitcoin self custody」について初心者にもわかりやすく解説しています。

作成日: 更新日:

ITニュース概要

米財務省は、パトリオット法を拡大し、ビットコインの自己管理(セルフカストディ)を攻撃する姿勢を示している。これにより、個人が直接仮想通貨を管理する自由が制限される可能性があり、デジタル資産の利用に大きな影響が出そうだ。

ITニュース解説

今回のニュースは、米国財務省が「パトリオット法」と呼ばれる法律の適用範囲を広げ、ビットコインを含む暗号資産の「自己保管(self custody)」に対する規制を強化しようとしているという内容だ。この動きは、デジタル資産の利用方法や、それを取り巻く技術的な側面、さらには個人の金融における自由といった広い範囲に影響を及ぼす可能性があるため、システムエンジニアを目指す初心者にとっても理解しておくべき重要なテーマとなる。

まず、「パトリオット法」とは何かを簡単に説明する。この法律は、2001年のアメリカ同時多発テロ事件を受けて制定されたもので、主にテロリズムの資金源を断ち、資金洗浄(マネーロンダリング)やテロ資金供与といった不法行為を防止することを目的としている。これまでは主に銀行や証券会社といった伝統的な金融機関に対し、顧客の本人確認(KYC: Know Your Customer)の徹底や不審な取引の報告義務などを課してきた。これにより、犯罪組織が金融システムを利用して資金を移動させたり隠したりすることを防ぐ狙いがある。

次に、ニュースの核心である「ビットコイン」と「自己保管」について解説する。ビットコインは、特定の国や中央銀行に管理されない、分散型のデジタル通貨だ。インターネット上で直接、利用者間で価値をやり取りできるという特徴を持つ。このビットコインをはじめとする暗号資産を保有する方法には大きく分けて二つある。一つは、コインチェックやバイナンスといった暗号資産取引所に資産を預ける方法で、これは銀行に預金するのと似ている。もう一つが「自己保管」で、これは文字通り、ユーザー自身が自分の暗号資産を直接管理する方法だ。

自己保管では、「秘密鍵」と呼ばれる非常に重要な情報、つまり暗号資産へのアクセス権限を自分自身で管理する。秘密鍵を誰にも知られずに安全に保管していれば、第三者に自分の資産を勝手に動かされる心配がない。この自己保管は、暗号資産が生まれた背景にある「中央集権的な管理者を介さずに、個人が自身の資産を完全にコントロールする」という思想を具現化したものであり、多くの暗号資産利用者にとって非常に重要な意味を持つ。ウォレットと呼ばれるソフトウェアやハードウェアデバイスを使って、秘密鍵を管理し、自分で送金や受け取りを行うことが可能になる。

しかし、この自己保管の特性が、パトリオット法を適用しようとする財務省の懸念材料となっている。自己保管ウォレットは、特定の第三者が取引を仲介しないため、利用者の身元を特定したり、取引履歴を追跡したりするのが、取引所を介する場合よりも難しいと考えられている。政府の視点から見れば、この匿名性や追跡の難しさが、資金洗浄やテロ資金供与、あるいは脱税といった不法行為に悪用されるリスクを高めると映るわけだ。そのため、財務省は自己保管ウォレットの利用者にも、何らかの形で本人確認や取引報告の義務を課すことを検討しているのかもしれない。これは、従来の金融システムで行われてきた規制を、デジタル資産の世界にも広げようとする動きだと言える。

もし、パトリオット法がビットコインの自己保管に拡張適用されることになれば、どのような影響が考えられるだろうか。まず、暗号資産の根幹にある「個人による完全な資産管理」という思想が制限される可能性がある。例えば、ウォレットソフトウェアの開発者や、自己保管を支援するサービス提供者に対して、利用者のKYC情報を収集する義務や、特定の取引を報告する義務が生じるかもしれない。これは、ウォレットの設計や、その利用方法に大きな変更を求めることになる。技術的な観点から見ると、利用者のプライバシー保護と、法規制への準拠という二律背反する要件をどのように両立させるかが、システムエンジニアにとって大きな課題となるだろう。

さらに、このような規制強化は、暗号資産が持つイノベーションの可能性にも影響を与えかねない。自己保管の自由度が制限されることで、新しい分散型アプリケーション(DApps)の開発や、金融包摂(Financial Inclusion)のような、従来の金融システムでは取りこぼされていた人々へのサービス提供が難しくなる恐れもある。一方で、規制当局は金融システムの安定性や公共の安全を守るという大義名分を持っており、この両者の間のバランスをどう取るかが問われている。

このニュースは、単に法律が拡張されるという話に留まらない。デジタル技術が社会に深く浸透する中で、技術の進化がもたらす新たな自由と、社会秩序を維持しようとする政府や既存の制度との間で起こる摩擦を象徴する出来事だと言える。システムエンジニアを目指す者としては、技術が社会に与える影響や、それに対する社会的な反応を理解し、倫理的かつ責任あるシステム開発を行うことの重要性を認識するきっかけとなるだろう。自己保管規制の具体的な内容や影響はまだ流動的だが、今後の動向はデジタル金融の未来を占う上で非常に注目すべき点だ。

関連コンテンツ