【ITニュース解説】Protobuffers Are Wrong

2025年09月06日に「Reddit /r/programming」が公開したITニュース「Protobuffers Are Wrong」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

Protobufはシステム間の高速データ交換に便利だが、その設計には問題があるという指摘。データの構造変更への対応が難しく、互換性維持に課題が生じやすい点や、デバッグの複雑さが主な論点。

出典: Protobuffers Are Wrong | Reddit /r/programming公開日:

ITニュース解説

データシリアライゼーションとは、プログラムが扱うデータを、ネットワークを通じて送受信したり、ストレージに保存したりするために、共通の形式に変換する技術のことだ。ウェブアプリケーションでJSONやXMLといった形式がよく使われるのは、まさにこのデータシリアライゼーションの一例である。これらの形式は人間が読みやすく、柔軟性も高いという特徴がある。しかし、大規模なシステム間連携や高速なデータ処理が求められる場面では、より効率的なシリアライゼーション形式が必要となる場合がある。

その一つが、Googleが開発したプロトコルバッファ、通称Protobufだ。Protobufは、データをコンパクトなバイナリ形式に変換し、高速に処理することを目的として設計された。Protobufを利用する際には、まず「.proto」ファイルと呼ばれるスキーマ定義ファイルで、扱うデータの構造を厳密に定義する。このスキーマから、さまざまなプログラミング言語のコードが自動生成され、開発者は生成されたコードを使ってデータを簡単にシリアライズ(直列化)したり、デシリアライズ(復元)したりできる。これにより、異なる言語で書かれたシステム間でも、互換性を保ちながら効率的にデータを交換できるという大きな利点がある。データがコンパクトになるため、ネットワーク帯域の節約や、処理速度の向上にも貢献する。

しかし、Redditで話題になった「Protobuffers Are Wrong」という投稿は、そんなProtobufの設計思想や運用における課題に鋭く切り込んでいる。この投稿は、Protobufが持つ特定の特性が、場合によっては開発者に大きな負担を強いることになると指摘しているのだ。

投稿が特に問題視している点の一つは、スキーマ変更の難しさ、特に後方互換性の維持に関する厳格なルールだ。Protobufでは、各データフィールドに一意の「フィールド番号」を割り当てる。一度割り当てたフィールド番号は、原則として変更したり再利用したりしてはならない。もし変更すると、古いバージョンのシステムが新しいバージョンのデータを受け取ったときに、正しく解釈できなくなる可能性があるためだ。これは、例えばデータベースのカラム名を変更するような気軽さでは、Protobufのフィールドを扱えないことを意味する。フィールドを削除する際も、そのフィールド番号を将来的に再利用しないように注意が必要となる。

また、フィールドの「型」を変更することにも大きな制約がある。例えば、あるフィールドが整数型で定義されていたものを文字列型に変更したい場合、単純にスキーマ定義ファイルを書き換えるだけでは済まない。このような型変更は、一般的に後方互換性を破壊するため、許容されないことが多い。結果として、開発者は一度定義したスキーマ構造を慎重に設計し、後から変更が必要になった場合でも、既存のフィールドを直接変更するのではなく、新しいフィールドを追加するなどの対応を迫られることになる。これは、システムの成長や要件の変化に合わせて柔軟にデータ構造を調整したいという開発者のニーズと衝突することがある。

さらに、Protobufはバイナリ形式でデータをシリアライズするため、人間が直接内容を読み解くことが難しいという問題も指摘されている。JSONやXMLであれば、テキストエディタで開けばデータの内容を確認できるが、Protobufのバイナリデータは専用のツールを使わないと内容を把握できない。これは、システム間のデータ連携で問題が発生した際のデバッグ作業を複雑にし、原因特定に時間や手間がかかる要因となる。特に開発初期や複雑なエラーが発生した際には、このデバッグのしにくさが大きな足かせとなる可能性がある。

Redditの投稿は、他にもProtobufの柔軟性の限界についても触れている。Protobufは固定的なスキーマを持つデータ構造に最適化されており、例えばキーと値のペアが不定なマップのような、構造が事前に決まっていない柔軟なデータ形式を扱うのが苦手だ。このようなデータ構造を表現しようとすると、複雑なスキーマ定義が必要になったり、効率が低下したりすることがある。JSONのように、任意のオブジェクトを簡単に表現できる形式に慣れている開発者にとっては、この制約がストレスになることもあるだろう。

これらの問題は、Protobufが「間違っている」というよりも、その設計思想が特定の用途に特化していることの裏返しと考えることができる。Protobufは、データの厳密な管理と、高速・コンパクトなデータ交換を最優先するシステムには非常に強力なツールとなる。しかし、頻繁なスキーマ変更が予想されるシステムや、開発中の柔軟性を重視したいプロジェクト、あるいは人間が直接データを読み解く機会が多い場面では、その厳格さやバイナリ形式の特性がデメリットとして作用する可能性がある。

この議論から学ぶべきは、技術選定の重要性だ。どのような技術にも一長一短があり、万能な解決策は存在しない。Protobufは確かに多くの利点を持つが、その特性を理解し、プロジェクトの要件や開発チームの文化、システムのライフサイクルに合わせて、最適なシリアライゼーション形式を選択することが成功への鍵となる。開発者は、Protobufのような特定の技術が持つ「利点」だけでなく、「制約」や「デメリット」も十分に理解した上で、導入を検討する必要があるのだ。Redditの投稿は、その選択の重みを改めて問い直す、価値のある議論を提供していると言えるだろう。

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