【ITニュース解説】Protobuffers Are Wrong (2018)
2025年09月06日に「Hacker News」が公開したITニュース「Protobuffers Are Wrong (2018)」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
Protocol Buffers(protobuf)は、スキーマ定義が必須で柔軟性に欠けるため、開発初期段階や実験的なプロトコルには不向き。スキーマ進化の柔軟性が低い点や、動的なスキーマ変更が難しい点が課題。JSONなどの自己記述的な形式が、より適している場合もある。
ITニュース解説
この記事「Protobuffers Are Wrong (2018)」は、Googleが開発したデータ交換フォーマットであるProtocol Buffers (protobuf) に潜む問題点を指摘し、より良い代替案の必要性を訴えている。特にprotobufの設計思想が、大規模なシステムにおける進化や柔軟性を阻害する可能性について深く掘り下げている点が重要だ。
まず、protobufの基本的な仕組みを理解する必要がある。protobufは、構造化されたデータを効率的にシリアライズ(データ構造をバイト列に変換すること)およびデシリアライズ(バイト列から元のデータ構造に戻すこと)するための仕組みだ。データ構造は.protoファイルで定義され、protobufコンパイラがこの定義に基づいて、様々なプログラミング言語(Java, C++, Pythonなど)用のコードを生成する。生成されたコードを利用することで、異なるシステム間でデータを効率的にやり取りできる。
protobufの大きな利点の一つは、そのパフォーマンスだ。バイナリ形式でデータを扱うため、テキスト形式のJSONやXMLに比べて、データサイズが小さく、処理速度も速い。また、スキーマ(データ構造の定義)が明確に定義されているため、データの整合性を保ちやすく、エラーの早期発見にもつながる。
しかし、この記事ではprotobufの持つ問題点をいくつか指摘している。その中でも特に重要なのが、「進化の阻害」に関するものだ。protobufは、スキーマが厳密に定義されているため、一度定義したスキーマを後から変更することが難しい場合がある。例えば、既存のフィールドを削除したり、データ型を変更したりすると、古いバージョンのスキーマでエンコードされたデータを新しいバージョンのスキーマでデコードできなくなる可能性がある。これは、大規模なシステムにおいて、システムの進化に合わせてデータ構造を柔軟に変更していく必要がある場合に大きな問題となる。
具体的に、protobufのスキーマ変更における互換性の問題について考えてみよう。protobufは、フィールドに一意の番号(tag)を割り当てることで、フィールドの追加や順序の変更をある程度許容している。しかし、フィールドの型を変更したり、必須フィールドを削除したりすると、互換性が失われる可能性が高い。互換性を維持するためには、慎重な設計と移行戦略が必要となる。
記事では、この問題を解決するために、より柔軟なデータ交換フォーマットの必要性を訴えている。例えば、スキーマレスなデータフォーマットや、スキーマの進化をより容易にするための仕組みなどが考えられる。スキーマレスなフォーマットでは、データ自体に型情報が含まれているため、スキーマの変更による互換性の問題を回避できる。しかし、スキーマレスなフォーマットは、protobufに比べてデータサイズが大きくなる傾向があるため、パフォーマンスが重要な場合には適さない場合がある。
また、スキーマの進化を容易にするための仕組みとしては、例えば、データのバージョン管理や、スキーマの自動変換などが考えられる。データのバージョン管理では、データにバージョン情報を埋め込むことで、異なるバージョンのスキーマでエンコードされたデータを区別できるようにする。スキーマの自動変換では、古いバージョンのスキーマでエンコードされたデータを新しいバージョンのスキーマに自動的に変換することで、互換性を維持する。
システムエンジニアを目指す初心者にとって、この記事は、単にprotobufの技術的な詳細を学ぶだけでなく、大規模なシステムにおけるデータ交換の複雑さや、設計におけるトレードオフを理解する上で非常に有益だ。protobufは、多くの企業で利用されている重要な技術だが、その利点と欠点を理解した上で、適切な技術を選択することが重要だ。また、システムの進化に合わせて、データ構造を柔軟に変更できるような設計を心がけることも重要となる。protobufに限らず、データ交換フォーマットを選択する際には、パフォーマンス、柔軟性、互換性などの様々な要素を考慮する必要があることを覚えておこう。