【ITニュース解説】「QualiArts様の描画最適化術」を試してみる Part.1
2025年09月11日に「Qiita」が公開したITニュース「「QualiArts様の描画最適化術」を試してみる Part.1」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
QualiArtsのゲーム「IDOLY PRIDE」で使われる描画最適化術を解説する記事だ。JobSystemやComputeShaderなどの技術で、大量のオブジェクトが表示されても処理が重くならないよう軽量化する工夫を紹介する。
ITニュース解説
ゲームや3Dアプリケーションが私たちの目の前に美しい映像を描き出すとき、その裏側では膨大な量の計算と処理が行われている。特に、たくさんのキャラクターや物体(これらをまとめてオブジェクトと呼ぶ)が同時に画面に表示されるような場面では、その処理の重さが深刻な問題となり得る。処理が重くなると、ゲームの動作がカクカクしたり、スマートフォンのバッテリーがすぐに消耗したりと、快適な体験を損なう原因となる。だからこそ、開発者たちは「描画最適化」という技術に日々取り組んでいる。これは、効率よく、無駄なく画面に絵を描くための様々な工夫を指す。
QualiArts社が人気ゲーム「IDOLY PRIDE」で実践している描画最適化術は、この課題を解決するための高度な技術を組み合わせたものだ。この記事では、その具体的な手法として挙げられている「JobSystemによる画面内判定(カリング)」「ComputeShaderによる遮蔽判定」「DrawProceduralIndirect」という三つの技術が、どのようにして大量オブジェクトの描画を軽量化しているのかを解説する。
まず「JobSystemによる画面内判定(カリング)」について説明する。ゲームの世界には、画面に映っているオブジェクトだけでなく、プレイヤーの視界の外にあるたくさんのオブジェクトが存在する。これら全てを描画しようとすると、当然ながら無駄な処理が増えてしまう。そこで、「カリング」という技術が用いられる。カリングとは、簡単に言えば「画面に映らないものは描画しない」という判断を下すことだ。例えば、プレイヤーの背後にあるオブジェクトや、遠すぎて小さくしか見えないオブジェクトは、描画しても意味がない、あるいはほとんど意味がない。この画面内判定(カリング)の処理を高速に行うために「JobSystem」が活用される。JobSystemは、ゲームを動かすメインの処理を担当するCPU(中央処理装置)が、複数の作業を並行して進めることができる仕組みだ。これによって、画面内にいるオブジェクトとそうでないオブジェクトを効率よく瞬時に仕分けし、描画すべきではないオブジェクトの処理をスキップすることができる。これにより、CPUが描画処理のために使うリソースを大幅に削減し、ゲーム全体のパフォーマンスを向上させる効果がある。
次に「ComputeShaderによる遮蔽判定」に移る。画面内判定によって、画面に表示される可能性のあるオブジェクトは絞り込まれた。しかし、その中にもまだ描画しなくてよいオブジェクトが存在する。それは、他のオブジェクトの陰に隠れてしまい、プレイヤーからは見えないオブジェクトだ。例えば、大きな建物の後ろにいるキャラクターや、壁の向こう側にあるオブジェクトなどである。これら「隠れている」オブジェクトを描画しても、結局プレイヤーには見えないため、無駄な処理となってしまう。この隠れているかどうかを判断する技術を「遮蔽判定(オクルージョンカリング)」と呼ぶ。この複雑な計算を高速で行うのが「ComputeShader」だ。ComputeShaderは、グラフィック処理に特化した部品であるGPU(Graphics Processing Unit)が持つ、高度な並列計算能力を汎用的な計算に応用するための機能である。GPUはもともと大量の画素の色を計算するのに長けているため、何百何千ものオブジェクトが互いに隠れているかどうかを、CPUよりも圧倒的な速さで同時に計算することができる。これにより、最終的に画面に表示されるオブジェクトだけを正確に選び出し、描画処理をさらに最適化する。
最後に「DrawProceduralIndirect」という技術が描画の効率をさらに高める。カリングと遮蔽判定によって、描画すべきオブジェクトのリストが完成した。しかし、これらのオブジェクトを一つ一つCPUがGPUに「このオブジェクトを描画して」「次にこのオブジェクトを描画して」と指示を出す方法では、CPUとGPU間の通信にかかるオーバーヘッド(無駄な時間や処理)が大きくなってしまう可能性がある。特に、描画するオブジェクトの数が非常に多い場合、このオーバーヘッドは無視できない問題となる。「DrawProceduralIndirect」は、この問題を解決するための仕組みだ。これは、描画したいオブジェクトに関するすべての情報をまとめて、CPUからGPUへ一度に渡してしまう方法である。GPUは、この情報を受け取ると、CPUからの個別の指示を待つことなく、自分自身で効率的に描画処理を進めることができる。これにより、CPUが描画処理のために使う時間が減り、GPUもよりスムーズに描画作業に集中できるようになる。結果として、描画の総処理時間が短縮され、大量のオブジェクトがスムーズに描画されるようになる。
これらの技術は、単独で使うだけでなく、お互いに連携し合うことで最大の効果を発揮する。JobSystemで大まかに画面内のオブジェクトを絞り込み、ComputeShaderでさらに詳細に隠れたオブジェクトを除外し、最後にDrawProceduralIndirectで残ったオブジェクトをGPUに効率的に描画させる。この一連のフローによって、QualiArts社のゲーム「IDOLY PRIDE」では、多くのキャラクターが同時に登場する華やかなシーンでも、高いフレームレートと滑らかな動作を実現しているのだろう。
ゲーム開発における描画最適化は、ただ映像を美しく見せるだけでなく、ユーザーが快適にゲームを楽しむための非常に重要な要素だ。これらの高度な技術を理解し、適切に活用することは、将来システムエンジニアを目指す上で、パフォーマンスの高いアプリケーションを開発するために不可欠な知識となるだろう。ハードウェアの性能を最大限に引き出し、ユーザーに最高の体験を提供するためには、このような地道ながらも洗練された最適化技術の積み重ねが不可欠なのである。