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【ITニュース解説】You can't test if quantum uses complex numbers

2025年09月15日に「Hacker News」が公開したITニュース「You can't test if quantum uses complex numbers」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

量子力学の理論は複素数で記述されるが、量子が本当に複素数を用いて動作しているかを物理実験で直接検証することは不可能だ。これは量子世界の根本的な性質の理解に関わる問題であり、その検証の難しさを説明する。

ITニュース解説

量子力学は、私たちの日常的な感覚とは大きく異なる、非常に小さなミクロの世界の現象を記述する物理学の分野である。そこでは、粒子が同時に複数の場所に存在したり、観測するまで状態が定まらなかったりといった不思議な現象が当たり前のように起こる。このような現象を数学的に記述する際、標準的な量子力学の理論では「複素数」という種類の数が不可欠な役割を果たす。

複素数とは、実数と虚数単位「i」を組み合わせて作られる数である。実数とは、私たちが普段使っているような、整数、分数、小数点以下の数など、数直線上に並べられるすべての数のことだ。一方、虚数単位iは、二乗すると-1になるという特殊な性質を持つ。私たちが慣れ親しんだ実数の世界では、どんな数を二乗しても負の数にはならないため、iは直感的には理解しにくいかもしれない。しかし、この複素数が、量子力学の根幹をなす数学的な道具として利用されている。

量子力学では、原子や電子のような粒子の「状態」を記述するために、「波動関数」と呼ばれる数学的な表現を用いる。この波動関数は、一般に複素数の値を取る。具体的には、波動関数のある場所での複素数値が、その場所で粒子が見つかる「確率」と結びつけられる。正確には、その複素数の絶対値の二乗が、粒子を見つける確率を与える。つまり、複素数は直接観測される値ではないが、観測される確率という実数値へとつながる「内部的な」情報を持っている。この複素数を使うことで、量子現象を非常に簡潔かつ強力に記述できるため、物理学者は長らくこの枠組みを受け入れてきた。

しかし、ここで一つの疑問が持ち上がる。量子力学の計算に複素数がこれほどまでに深く組み込まれているのは事実だが、これは本当に、この宇宙が根源的に複素数的な性質を持っていることを意味するのだろうか?あるいは、単に複素数が現象を記述するための便利な数学的ツールに過ぎず、実はすべての現象は実数だけで記述できるにもかかわらず、複素数を使うことで見通しが良くなっているだけなのだろうか?そして、もしそうなら、量子力学が本当に複素数に基づいているのかどうかを、実験によって直接確かめることはできるのだろうか?

記事の結論は、量子力学が複素数を使っていることを実験によってテストすることは「できない」というものだ。その理由は、私たちが物理的な実験を通じて観測できるすべての結果は、常に「実数」だからである。粒子の位置、運動量、エネルギー、そしてある現象が起こる確率など、あらゆる物理的な測定値は実数として得られる。複素数はあくまで、これらの実数値へと至る途中の計算や記述に使われるものであり、直接観測されるものではない。

具体的に考えてみよう。標準的な量子力学は複素数を用いて構築されている。一方で、もし「量子力学が実数だけで記述できる」と仮定して、無理やり実数だけで量子力学の理論を構築しようとした場合、どうなるだろうか。このような「実数量子力学」を理論的に構築することは可能である。その場合、量子状態の記述は標準的な複素数量子力学よりもはるかに複雑になり、例えば、より多くの次元を必要としたり、量子状態が純粋なままでいられず、複数の純粋状態が混じり合った「混合状態」として扱われたりすることになるだろう。しかし、驚くべきことに、そのような実数量子力学の理論が予測する観測可能な物理量(つまり、実数値の測定結果)は、標準的な複素数量子力学が予測する結果と全く同じになるのである。

言い換えれば、私たちは観測可能な結果だけを見て、その背後にある数学的な記述が複素数なのか、それとも非常に複雑な実数なのかを区別することはできないのだ。これは、異なる数学的な表現が、最終的な物理的な予測においては完全に等価になるという興味深い状況を示している。複素数は量子現象を記述する上で非常にエレガントで簡潔な方法を提供するが、それはあくまで記述の「形式」の問題であり、物理的な「実体」が本当に複素数でできているのかどうかを直接的に問うことはできない。

この事実は、数学が物理現象を記述する上での強力なツールであることを再認識させる。複素数は、量子力学の多くの概念を直感的かつ効率的に表現することを可能にし、例えば粒子の回転や位相といった現象を自然に説明できる。もし実数だけで量子力学を記述しようとすれば、理論は非常に複雑で扱いにくいものになるだろう。物理学者が複素数を用いた量子力学の記述を好んで使うのは、それがよりシンプルで、より深く洞察を与えてくれるからである。結局のところ、実験が区別できない以上、私たちは物理的な記述の美しさや簡潔さを追求し、最も有効な数学的言語を用いるという選択をする、ということになる。

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