【ITニュース解説】Early Access is the latest place where Steam is restricting games with mature themes
2025年09月16日に「Engadget」が公開したITニュース「Early Access is the latest place where Steam is restricting games with mature themes」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
Steamの早期アクセスで成人向けゲームが制限された。MastercardやVisaなど決済会社の圧力で、多くのゲームが削除されている。この曖昧な新ポリシーは小規模なゲーム開発者にも影響を与え、混乱が続いている。プラットフォーム運営元は、決済会社からのルールに従わざるを得ない状況だ。ポリシーの明確化が求められる。
ITニュース解説
今回のニュースは、大手ゲームプラットフォームであるSteamが、その「早期アクセス(Early Access)」プログラムにおいて、成人向けテーマのゲームに対する規制を強化したという内容である。これは、オンラインサービスを運営する上で直面する、目に見えない複雑な仕組みを理解する上で重要な情報だ。
まず、Steamの早期アクセスとは、まだ開発中のゲームをユーザーが先行して購入・プレイし、開発者にフィードバックを提供できる仕組みだ。これにより、ゲーム開発者は資金を得ながらゲームを改善し、ユーザーは完成前のゲームに関わることができる。しかし今回、Valve社はSteamの早期アクセス向けポリシーを更新し、同社が「成人向けテーマ」と判断するゲームの受け入れを停止する方針を打ち出した。具体例として、ゲームスタジオDammitbirdが開発した成人向けアドベンチャーゲーム「Heavy Hearts」が、そのコンテンツが成人向けであるという理由で早期アクセスへの掲載を拒否されたことが報じられている。
この規制強化の背景には、外部からの非常に強い圧力が存在している。その圧力の源は、MastercardやVisaといった大手決済プロセッサ、つまりクレジットカードやデビットカードの決済処理を担う企業群だ。これらの決済プロセッサは、ここ数ヶ月にわたりSteamやItch.ioといったビデオゲームマーケットプレイスに対し、特定の成人向けコンテンツを削除するよう求めてきた。彼らは、自社のブランドイメージが損なわれないようにすること、そして不法な活動、特に人身売買などに自社の決済システムが利用されないようにすることを非常に重視している。
実際に、今年の4月には「No Mercy」というゲームが、決済プロセッサとオーストラリアの反ポルノ組織の要請を受けて削除されたという出来事があった。この一件以降、プラットフォーム側が導入した新たなポリシーの適用範囲は、着実に拡大してきた経緯がある。
Steamは、このような決済大手からの要請に対応するため、非常に漠然としたポリシー変更を行った。具体的な基準が曖昧なまま、特定の成人向けコンテンツを禁止する広範な条項を追加した結果、数百ものゲームが削除される事態となった。Itch.ioも同様の変更を余儀なくされ、2万点を超えるタイトルがマーケットプレイスから削除されるという大規模な影響が出ている。
この状況で特に懸念されているのが、「スコープクリープ」と呼ばれる現象だ。スコープクリープとは、当初の計画や対象範囲が、意図せずして徐々に拡大していくことを指す。今回のケースでは、当初は「極端な成人向けコンテンツ」が対象と想定されていたにもかかわらず、比較的無害と見なされるようなゲームまでもが規制の対象となってしまっている点が問題視されている。例えば、「VILE: Exhumed」というゲームは、ほとんどがテキストベースで構成され、わずかなイメージとほのめかしがある程度だったにもかかわらず、Steamで禁止され、Itch.ioからも削除された。これは、最初に問題視されたような成人向けゲームとは性質が大きく異なるものであり、多くの独立系ゲーム開発者が、自分たちのゲームが意図せず規制に引っかかるのではないかと不安を感じている。
このような事態が起こる根本的な原因の一つは、クレジットカード決済の仕組みにある。SteamやItch.ioのようなオンラインストアは、VisaやMastercardといったカードネットワークと直接契約しているわけではない。彼らは通常、「アクワイアリング銀行」と呼ばれる銀行や、決済代行会社と契約を結んでいる。このアクワイアリング銀行や決済代行会社が、カードネットワークが定める「ブランド安全性」や「人身売買防止」といったルールを、オンラインストアに対して適用する義務を負っているのだ。
つまり、決済プロセッサ(MastercardやVisa)がアクワイアリング銀行に対して圧力をかけると、その圧力が間接的にSteamのようなオンラインストアに伝わる構図となっている。地域によっては銀行の対応が異なるため、PayPalのような決済サービスが、特定の地域でSteamと連携する方法にも影響を与える可能性がある。このような複雑な多層構造が、今回の問題の根幹にあると言えるだろう。
現在のところ、このような混乱はゲーム開発者とユーザー双方に不満と困惑をもたらしている。この状況が解消されるには、プラットフォーム側がポリシーをより明確に提示するか、あるいは決済プロセッサ側が自らの基準をより具体的に説明し、圧力を緩和する必要がある。いずれにしても、オンラインサービスが外部のステークホルダー、特に決済インフラを提供する企業からの影響を強く受けるという現実を、今回のニュースは示している。これは、単にシステムを構築するだけでなく、そのシステムを取り巻くビジネス環境や法規制、パートナー企業との関係性など、多角的な視点を持つことの重要性を教えてくれる事例と言える。