Webエンジニア向けプログラミング解説動画をYouTubeで配信中!
▶ チャンネル登録はこちら

【ITニュース解説】タイのエンジニアは発想駆動、日本のエンジニアはスコープ重視

2025年09月17日に「@IT」が公開したITニュース「タイのエンジニアは発想駆動、日本のエンジニアはスコープ重視」について初心者にもわかりやすく解説しています。

作成日: 更新日:

ITニュース概要

タイの高校でプログラミングを教えた森見さんは、ハッカソンで生徒の「作る喜び」を引き出した。日本のエンジニアが計画範囲を重視するのに対し、タイは発想を大切にする文化の違いを経験。この異文化交流が、森見さんの深い理解につながった2年間を伝える。

ITニュース解説

森見さんがタイの高校でプログラミング教育に携わった2年間は、システム開発における考え方の多様性を示す貴重な経験であった。この経験から、タイのエンジニアが持つ「発想駆動」の考え方と、日本のエンジニアに見られる「スコープ重視」の考え方の違いが浮き彫りになる。システムエンジニアを目指す者にとって、これらのアプローチを理解することは、将来のキャリアにおいて非常に役立つ視点となるだろう。

「発想駆動」とは、まさに名前が示す通り、アイデアやひらめき、そして「こんなものを作りたい」という純粋な思いを原動力として、開発を進めるアプローチである。具体的な要件や仕様が細かく決まっていない段階でも、まずは「面白いからやってみよう」「作ったら楽しそうだ」といった発想を優先し、試行錯誤しながら形にしていく。タイの生徒たちは、この発想駆動の精神を強く持っていた。彼らは与えられた課題をこなすだけでなく、自分たちの興味や関心に基づいた独自のアイデアを積極的に提案し、それを実現しようと熱心に取り組んだ。これは、既存の枠にとらわれず、自由に発想し、失敗を恐れずに挑戦する姿勢につながる。

森見さんがタイの高校で行ったハッカソンは、この発想駆動の考え方を最大限に引き出す場となった。ハッカソンとは、短期間で集中的にアイデアを出し、プログラミングを通じてサービスやアプリケーションを開発するイベントである。ここでは、完璧な計画よりも、どれだけ独創的なアイデアを出し、それを素早く形にするかが重視される。生徒たちは、自分の「作りたい」という強い気持ちを原動力に、チームで協力しながらアイデアを具現化していった。このプロセスの中で、彼らは技術的なスキルだけでなく、創造性や問題解決能力を養い、何よりも「ものを作る喜び」を実感したのである。プログラミング初心者が、具体的な成果物を自分の手で生み出す経験は、その後の学習意欲を大きく高める効果がある。

一方、日本のエンジニアリング文化には「スコープ重視」という特徴がある。スコープとは、プロジェクトで達成すべき目標や作業範囲、成果物を明確に定めたものである。スコープ重視のアプローチでは、プロジェクトを開始する前に、顧客の要望を詳細にヒアリングし、要件定義書や設計書を綿密に作成する。そして、定めたスコープの範囲内で、計画通りに開発を進め、品質や納期、予算といった制約を厳守することに重きを置く。これは、高品質なシステムを安定的に提供し、プロジェクトの成功確率を高める上で非常に重要な考え方である。大規模なシステム開発や、金融・医療といった高い信頼性が求められる分野では、このスコープ重視のアプローチが不可欠となる。

タイの発想駆動と日本のスコープ重視は、一見すると対立する考え方に見えるかもしれないが、どちらか一方が優れているというものではない。それぞれが異なる利点と課題を持っている。発想駆動は、新しいアイデアや革新的なサービスを生み出す可能性を秘めている一方で、計画が曖昧になりやすく、途中で方向性を見失ったり、納期や予算をオーバーしたりするリスクも伴う。これに対し、スコープ重視は計画性が高く、リスクを抑えながら確実に目標を達成できる利点があるが、一方で新しい発想が生まれにくかったり、変化への対応が遅れたりする可能性がある。

システムエンジニアとして働く上で大切なのは、これらの異なるアプローチの特性を理解し、プロジェクトの性質やフェーズに応じて適切に使い分ける、あるいは両方の良い点を組み合わせる柔軟性を持つことである。例えば、新しいサービスの企画段階では発想駆動で多くのアイデアを出し、その中から有望なものを選んで具体的な開発フェーズに入る際にはスコープ重視で堅実に進める、といったハイブリッドなアプローチも考えられる。

森見さんは、タイでの2年間の活動を通じて、単にプログラミングを教えるだけでなく、文化や考え方の違いを肌で感じ、異文化理解を深めた。異なる背景を持つ人々と協力し、彼らの価値観を尊重しながら目標に向かう経験は、エンジニアとしての視野を大きく広げたことだろう。システム開発は、技術的な知識やスキルだけでなく、多様な人々の意見を聞き入れ、調整し、最終的に一つの形にまとめ上げるコミュニケーション能力や共感力も強く求められる。

システムエンジニアを目指す初心者にとって、この記事が教えてくれるのは、技術を学ぶことと同じくらい、あるいはそれ以上に、物事に対する多様な視点を持つことの重要性である。与えられた要件をただこなすだけでなく、「これはなぜ必要なのか」「もっと良い方法はないか」と常に問いかける発想力。そして、漠然としたアイデアを具体的な形にするための計画力と実行力。これら両方の能力をバランス良く磨くことが、これからのシステムエンジニアには求められる。タイの生徒たちが感じた「作る喜び」を忘れずに、目の前の課題に真摯に取り組みながらも、自由な発想で新しい価値を生み出す姿勢を持つこと。それが、変化の激しいIT業界で活躍するための鍵となるだろう。この経験は、技術の進化と共に、エンジニアの役割や働き方も常に進化し続けることを示唆している。

関連コンテンツ