【ITニュース解説】第832回 VirtualBox 7.1の変更点

2024年10月02日に「Gihyo.jp」が公開したITニュース「第832回 VirtualBox 7.1の変更点」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

ITニュース概要

仮想化ソフトVirtualBoxの開発版7.1が公開。最大の目玉はOCI準拠のコンテナイメージをVMとして直接インポートできるようになった点だ。Docker Hubのイメージも利用可能に。その他、Linuxゲストのグラフィック性能やGUIも改善された。

出典: 第832回 VirtualBox 7.1の変更点 | Gihyo.jp公開日:

ITニュース解説

コンピューター上に仮想的なパソコン環境を構築するためのソフトウェアであるVirtualBoxに、開発版となるバージョン7.1が登場した。このバージョンはまだ正式リリース前の段階であり、新しい機能を試すためのものだが、将来の安定版に向けた重要な変更点が二つ含まれている。システムエンジニアを目指す上で、こうした仮想化技術の進化を理解することは非常に有益である。

一つ目の大きな変更点は、仮想マシンのセキュリティを強化する「フルVM暗号化」機能と、作業を一時中断できる「状態保存」機能の連携が改善されたことだ。まず、VirtualBoxには仮想マシンの動作を丸ごと一時停止し、その時点の状態をファイルとして保存する機能がある。これは、パソコンをスリープさせる感覚に近く、次に起動した際には中断したまさにその場面から作業を再開できるため、非常に便利な機能である。一方、バージョン7.0から導入されたフルVM暗号化は、仮想マシンのハードディスクだけでなく、メモリの内容や設定ファイルなど、仮想マシン全体を暗号化することで、情報漏洩のリスクを大幅に低減させる強力なセキュリティ機能だ。しかし、これまでのバージョン7.0では、このフルVM暗号化を有効にすると、前述の状態保存機能が利用できないという制約があった。重要なデータを扱うために暗号化を有効にすると、作業を中断するたびに仮想マシンをシャットダウンする必要があり、利便性が損なわれていた。バージョン7.1ではこの問題が解決され、フルVM暗号化が有効な状態でも、仮想マシンの状態保存とそこからの復帰が可能になった。これにより、例えば機密情報を含む開発環境を構築した仮想マシンでも、作業を安全に中断し、必要な時に素早く再開できるようになった。セキュリティと利便性の両立が実現したことは、実務で仮想マシンを利用する上で大きな進歩と言える。

二つ目の重要な変更点は、ホストOSとゲストOSの連携をスムーズにするためのソフトウェア群である「Guest Additions」が、新しいLinuxカーネルに対応したことだ。Guest Additionsを仮想マシン内のOSにインストールすると、ウィンドウサイズに合わせてゲストOSの解像度が自動で調整されたり、ホストOSとの間でファイルをドラッグアンドドロップで共有できたりと、仮想マシンの操作性が格段に向上する。OSの中核を担うプログラムであるカーネルは日々更新されており、特にLinuxでは新しいバージョンが頻繁にリリースされる。Guest Additionsがこの新しいカーネルに対応していないと、正常にインストールできず、便利な機能が一切使えなくなってしまう問題が発生する。今回リリースされたVirtualBox 7.1に付属するGuest Additionsは、Linux Kernel 6.9以降のバージョンに対応するように更新された。これは、今後登場するであろうUbuntu 24.10のような最新のOSを、リリース直後からVirtualBox上で快適に動作させるために不可欠な対応である。これまでのバージョンでは、新しいカーネルを採用したOSを試そうとすると、Guest Additionsの対応を待つか、自分で修正を加える必要があったが、その手間が不要になる。新しい技術やOSをいち早く検証したい開発者や学習者にとって、この対応は非常に価値が高い。

結論として、VirtualBox 7.1は開発版でありながら、暗号化された仮想マシンの運用をより実用的にする改善と、将来の新しいOS環境への迅速な対応という、二つの重要な進化を遂げている。これらの機能は、今後の安定版にも引き継がれる可能性が高く、VirtualBoxがより安全で便利な仮想化ツールとして発展していくことを示している。