帯域制御 (タイイキセイギョ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
帯域制御 (タイイキセイギョ) の読み方
日本語表記
帯域制御 (タイイキセイギョ)
英語表記
Bandwidth Control (バンドウィズコントロール)
帯域制御 (タイイキセイギョ) の意味や用語解説
ネットワークにおいてデータが流れる通信路の容量を「帯域」と呼ぶ。この帯域の利用方法を管理し、最適化する技術が「帯域制御」である。ネットワークは複数のコンピュータやデバイスが共有する資源であり、多くのユーザーやアプリケーションが同時に通信を行うと、帯域が不足し、通信速度の低下や遅延が発生する可能性がある。帯域制御は、このような混雑を未然に防ぎ、あるいは混雑が発生した際に特定の通信が円滑に行われるよう調整することを目的とする。 具体的には、インターネット回線や企業内ネットワークなど、限られた通信資源を有効活用するために導入される。例えば、大量のファイルをダウンロードする通信と、安定した通話品質が求められる音声通話(VoIP)が同時に発生した場合、帯域制御がなければ、ファイルダウンロードが帯域の大部分を占有し、音声通話の品質が著しく低下する可能性がある。帯域制御を適用することで、重要な通信には優先的に帯域を割り当て、そうでない通信には利用可能な帯域の上限を設けるといった調整が可能になる。これにより、ネットワーク全体の安定稼働と、利用するアプリケーションやサービスごとの品質維持が図られる。帯域制御は、ルーターやスイッチといったネットワーク機器の機能として実装されることが多く、設定によって特定の通信プロトコル、アプリケーション、送信元・宛先IPアドレスなどに基づいて動作を調整する。 次に帯域制御の詳細について解説する。 帯域制御は、単一の技術ではなく、いくつかの異なる方式を組み合わせて実現されることが一般的である。主な制御方式としては、シェーピング、ポリシング、優先制御、帯域保証、帯域制限が挙げられる。 シェーピングは、設定された上限帯域を超えてバースト的に発生した通信を一時的にバッファリングし、平滑化して送信する方式である。これにより、急激なトラフィックの増加がネットワークに与える負荷を軽減し、安定したデータ転送を促す。例えば、大量のデータを短時間で送信しようとするアプリケーションがあったとしても、シェーピングにより設定された送信レートを超えないようにデータが送り出されるため、他の通信への影響を抑えることができる。シェーピングは、主に送信側で適用され、ネットワークに送出するデータ量を制御することで、下流のネットワーク機器の混雑を防ぐ効果がある。 一方、ポリシングは、設定された上限帯域を超過した通信を、その場で破棄したり、優先度を下げて転送したりする方式である。シェーピングと異なり、超過分の通信を一時的に貯めておくことはしないため、ネットワークの混雑を即座に緩和する効果がある。ただし、データが破棄されることで再送が発生し、結果的に通信遅延につながる可能性もある。これは、サービスレベル契約(SLA)などで規定された帯域を強制的に守らせる場合や、悪意のある大量通信をシャットアウトする目的などで利用される。 優先制御は、異なる種類の通信に対して優先度を設け、優先度の高い通信を先に処理し、優先度の低い通信を後回しにする方式である。リアルタイム性が求められる音声通信(VoIP)やビデオ会議、企業内の基幹業務システムが利用する通信などに高い優先度を設定することで、それらの通信品質を保証することが可能になる。優先制御は、キューイング(キューに並べ替える)の概念に基づき、データパケットがネットワーク機器を通過する際に、その優先度に応じて処理順序を決定する。これにより、遅延やパケットロスに敏感な通信の品質を向上させることができる。 帯域保証は、特定の通信に対して最低限の帯域を確保する方式である。これは、特定のアプリケーションやユーザーに対して、ネットワークが混雑している状況下でも、常に一定以上の通信速度が維持されることを保証したい場合に有効である。例えば、重要なサーバーへのアクセスや、特定の部署が利用する業務アプリケーションに対して、必要な通信速度を確保する目的で用いられる。これは、企業がサービスプロバイダーから専用回線を借りる際に、その回線で保証される最低帯域を定義する際などにも用いられる考え方である。 帯域制限は、特定の通信が利用できる帯域の上限を設定する方式である。これは、P2Pファイル共有や動画ストリーミング、個人のWeb閲覧など、大量の帯域を消費する可能性があるが、ビジネス上重要度が低い通信に対して適用されることが多い。これにより、これらの通信がネットワーク帯域を独占してしまうことを防ぎ、他の重要な通信に影響が出ないようにする。公平なネットワーク利用を促し、一部のユーザーやアプリケーションが帯域を食いつぶしてしまう「帯域食い」を防ぐ役割がある。 帯域制御は、ルーターやスイッチ、ファイアウォールといった一般的なネットワーク機器の機能として提供されるほか、専用の帯域制御アプライアンス製品も存在する。これらの機器では、送信元・宛先IPアドレス、ポート番号、プロトコル、アプリケーションの種類(例:HTTP, FTP, P2P)、通信の方向(上り/下り)、さらには特定の時間帯といった様々な条件に基づいて、きめ細やかな制御設定が可能である。 帯域制御の導入は、ネットワークの安定稼働、ユーザーエクスペリエンスの向上、そしてネットワークインフラへの過剰な投資を抑制するといった多岐にわたるメリットをもたらす。しかし、適切な設計と運用が不可欠である。過度に厳格な帯域制御は、かえってネットワーク全体のパフォーマンスを低下させたり、一部のサービスが利用できなくなったりする可能性があるため、ネットワークの利用状況を正確に把握し、必要な場所に必要な制御を適用することが重要である。これにより、限られたネットワーク資源を最大限に活用し、ビジネス要件とユーザーニーズの両方を満たす、堅牢で効率的なネットワーク環境を構築できる。