カーディナリティ(カーディナリティ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
カーディナリティ(カーディナリティ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
カーディナリティ (カーディナリティ)
英語表記
Cardinality (カーディナリティ)
用語解説
カーディナリティとは、リレーショナルデータベースにおける重要な概念の一つで、特定の列(カラム)に含まれるデータの「多様性」または「一意性」の度合いを示す指標である。簡単に言えば、その列にどれだけの種類の異なる値が存在するか、という情報を提供する。例えば、ある列のデータがほとんど同じ値ばかりで構成されている場合、その列のカーディナリティは低いと言える。反対に、ほとんどの行で異なる値を持っている場合、その列のカーディナリティは高いと言う。この概念は、データベースの設計、特にインデックスの最適化やクエリのパフォーマンスに大きな影響を与えるため、システムエンジニアが理解しておくべき基本的な要素である。
カーディナリティは、列内のユニークな値の数と、その列を含むテーブル全体の行数との関係で評価される。具体的に、高いカーディナリティの例としては、ユーザーID、メールアドレス、電話番号、タイムスタンプなどが挙げられる。これらのデータは通常、ほとんどの行で異なる値を持つため、ユニークな値の数が多く、結果としてカーディナリティが高くなる。一方、低いカーディナリティの例としては、性別(男性、女性)、真偽値(TRUE/FALSE)、特定のステータスコード(例: 処理中、完了、エラー)などが挙げられる。これらのデータは、取りうる値の種類が少なく、多くの行で同じ値が繰り返される傾向があるため、カーディナリティが低くなる。
カーディナリティの理解は、データベースのパフォーマンスを最適化する上で極めて重要である。特に、インデックス(索引)の設計において中心的な役割を果たす。インデックスは、テーブル内の特定の列に適用することで、データの検索速度を向上させる仕組みである。
高いカーディナリティを持つ列にインデックスを適用すると、検索効率が大幅に向上しやすい。例えば、数百万件のユーザーデータの中から特定のユーザーIDを持つユーザーを検索する場合、ユーザーID列にインデックスが設定されていれば、データベースシステムはインデックスを辿ることで目的の行を非常に高速に見つけ出すことができる。これは、インデックスが提供する「ユニークな値」への素早いポインタのおかげである。もしカーディナリティの高い列にインデックスがなければ、データベースはすべての行を一つずつ調べていく必要があり(全表走査)、これは非常に時間のかかる操作となる。
逆に、低いカーディナリティを持つ列にインデックスを適用しても、その効果は限定的であるか、場合によってはパフォーマンスを低下させることもある。例えば、「性別」という列にインデックスを設定したとする。もし「性別='男性'」という条件で検索を行う場合、データベースはインデックスを辿って「男性」に該当する行を見つける。しかし、性別が「男性」のデータがテーブル全体の半数を占めるような場合、インデックスを辿るコストと、テーブル全体を走査してデータを取得するコストの差がほとんどなく、むしろインデックスの管理や読み込みにかかるオーバーヘッドのために、インデックスを使わない方が速いという状況も発生しうる。インデックスは、データの絞り込み効果が高い場合に真価を発揮するため、種類が少ないデータに対しては効果が薄いのだ。ただし、低いカーディナリティの列でも、その値がWHERE句で頻繁に利用され、かつその値に該当する行がテーブル全体のごく一部である場合(例えば、数百種類のステータスコードのうち、特定の「未処理」ステータスがごくわずかである場合)、インデックスが有効となるケースも存在する。
また、カーディナリティはデータベースのクエリ最適化にも影響を与える。データベース管理システム(DBMS)のオプティマイザは、クエリが実行される前に、そのクエリを最も効率的に実行するための計画(実行計画)を立案する。この際、オプティマイザは各列のカーディナリティに関する統計情報を参照する。どのインデックスを使用すべきか、または全表走査を選択すべきか、テーブルの結合順序はどうすべきか、といった判断にカーディナリティの情報が活用されるのである。正確なカーディナリティ情報があることで、オプティマイザはより適切な実行計画を選択し、結果としてクエリの実行速度を向上させることができる。
データの整合性もカーディナリティと密接に関わる。例えば、主キー(Primary Key)はテーブル内の各行を一意に識別するための列であり、その値は必ずユニークである必要がある。これは、主キー列のカーディナリティが常に最大であることを意味する。ユニーク制約(Unique Constraint)を設定する列も同様に、そのカーディナリティは高くなる。このように、データベースがデータの重複を許さず、一意性を保証する設計では、カーディナリティが高いことが前提となる。
システム設計者は、テーブル設計の段階で各列のデータ特性を考慮し、カーディナリティを予測することが求められる。その予測に基づいて、適切なインデックス戦略を策定することが、将来的なシステムのパフォーマンスを左右する。闇雲にインデックスを多用することは、データの挿入・更新・削除処理のオーバーヘッドを増やし、ストレージを消費するため望ましくない。カーディナリティを考慮し、真に検索性能の向上に寄与する箇所にのみインデックスを適用することが重要である。
最終的に、カーディナリティは単なる統計情報ではなく、データベースの効率的な運用とパフォーマンス管理の基礎となる概念である。この理解なくして、最適なデータベース設計やパフォーマンスチューニングは実現できないと言える。