制御パステスト (セイギョパステスト) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
制御パステスト (セイギョパステスト) の読み方
日本語表記
制御パステスト (セイギョパステスト)
英語表記
Control Path Testing (コントロールパス テスティング)
制御パステスト (セイギョパステスト) の意味や用語解説
制御パステストは、ソフトウェアテストの技法の一つであり、プログラムの内部構造に着目してテストを行うホワイトボックステストに分類される。このテストの主な目的は、プログラム内に存在する処理の流れ、すなわち「制御パス」を網羅的に検証することにある。制御パスとは、プログラムの実行開始から終了まで、あるいは特定の機能の入口から出口までの一連の処理経路を指す。例えば、条件分岐(if文など)が存在する場合、条件が真の場合と偽の場合とでプログラムは異なる経路をたどる。このような経路の組み合わせをすべて洗い出し、それぞれが意図通りに動作することを確認するのが制御パステストの基本的な考え方である。単純に個々の命令や分岐を個別にテストするだけでは発見が難しい、特定の処理順序や経路の組み合わせによってのみ発生する論理的な誤りや矛盾といった、より複雑な不具合を発見することを目指す。そのため、高い信頼性や安全性が求められるシステムや、複雑な条件分岐を持つプログラムの品質を確保する上で非常に重要なテスト手法とされている。 制御パステストを体系的かつ効率的に実施するためには、まずプログラムの制御構造を可視化する必要がある。この目的で用いられるのが「制御フローグラフ」である。制御フローグラフは、プログラムの処理の流れを図で表現したもので、連続した処理のまとまりを「ノード(節点)」、処理から次の処理への移行、つまり制御の流れを「エッジ(辺)」で表す。ソースコードに書かれた複雑な分岐や合流、ループといった構造が、このグラフによって視覚的に把握しやすくなる。テスト設計の第一歩として、この制御フローグラフを作成し、プログラムの開始ノードから終了ノードに至るすべての実行可能な経路を特定する作業が行われる。 しかし、プログラムの規模が大きくなると、考えられるパスの数は膨大になり、すべてのパスをテストすることは現実的ではなくなる。そこで、テストすべき独立したパスの数を定量的に見積もるための指標として「サイクロマティック複雑度(McCabe's Cyclomatic Complexity)」が用いられる。これは、制御フローグラフの構造から算出される値であり、プログラムの構造的な複雑さを示す。具体的には、グラフのエッジ数をE、ノード数をNとした場合に「E - N + 2」という計算式で求められる。また、より直感的な方法として、プログラム内の判定条件の数に1を加えることでも算出できる。このサイクロマティック複雑度の値が、そのプログラムの論理を網羅するために最低限テストすべき独立したパスの数を示すため、テストケースの数を計画したり、テストの抜け漏れを防いだりするための客観的な基準となる。 テスト対象とするパスを特定した後は、それぞれのパスを実際に通過させるための具体的なテストケースを設計する。これには、各分岐点で意図した経路を通るように、プログラムの入力値や前提となる内部状態を詳細に決定する作業が含まれる。これにより、特定の経路でしか実行されない処理ブロックや、特定の順序で処理が実行された場合にのみ発生するバグを検出することが可能となる。 制御パステストは、他のホワイトボックステストの網羅基準と比較することで、その有効性がより明確になる。例えば、「命令網羅(ステートメントカバレッジ)」はすべての実行可能な命令を最低1回は実行することを目指す最も基本的な基準である。また、「分岐網羅(ブランチカバレッジ)」は、すべての分岐において真と偽の両方の結果を最低1回は経験することを目指すもので、命令網羅より強力な基準である。しかし、これらの基準を100%達成したとしても、処理の組み合わせに起因する不具合を見逃す可能性がある。制御パステストは、これらの個々の要素だけでなく、それらが連なった一連の「経路」を網羅するため、より高い品質保証レベルを提供するテスト手法と言える。 このテスト手法の最大の利点は、その網羅性の高さにある。プログラムのロジックを体系的に検証することで、設計段階では想定していなかったような隠れた不具合を発見できる可能性が高まる。その一方で、大きな欠点も存在する。プログラムが複雑になり、分岐やループが増えるほど、パスの数が指数関数的に増加する「組み合わせ爆発」という問題に直面する。すべてのパスをテストするための工数が非現実的なレベルに達してしまうのである。特にループ構造を含む場合、理論上は無限のパスが存在し得るため、ループの実行回数を0回、1回、代表的な回数などに限定してテストするといった工夫が不可欠となる。したがって、実際のプロジェクトでは、すべてのパスのテストを機械的に目指すのではなく、サイクロマティック複雑度を参考にしつつ、システムの重要度や不具合発生のリスクが高いと想定されるクリティカルなパスに絞って重点的にテストを実施することが一般的である。