商用オフザシェルフ (ショウヨウオフザシェルフ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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商用オフザシェルフ (ショウヨウオフザシェルフ) の読み方

日本語表記

商用オフザシェルフ (ショウヨウオフザシェルフ)

英語表記

COTS (コッツ)

商用オフザシェルフ (ショウヨウオフザシェルフ) の意味や用語解説

「商用オフザシェルフ」とは、特定の顧客のために一から開発されたものではなく、一般的な市場向けに製造・販売されている既製のソフトウェアやハードウェア製品を指す言葉である。英語では「Commercial Off-The-Shelf」と表記され、その頭文字を取って「COTS(コッツ)」と呼ばれることも多い。システム開発の世界では、必要なシステムや機能をゼロから自社で開発する「スクラッチ開発」と対比される概念であり、既存の市販品を導入するというアプローチを意味する。 このアプローチは、企業が情報システムを導入する際の一つの選択肢として広く検討される。例えば、会計システム、人事給与システム、顧客管理システム(CRM)、企業資源計画(ERP)パッケージ、オフィススイート、データベース管理システムなどがCOTSの代表的な例だ。これらは特定の業界や企業のニーズに特化して作られたものではなく、多くの企業に共通するであろう汎用的な機能を提供することを目的としている。 商用オフザシェルフ製品を導入する最大のメリットは、導入期間の短縮とコストの削減にある。ゼロからシステムを開発する場合、要件定義、設計、プログラミング、テストといった多くの工程と時間が必要となるが、COTS製品はすでに完成しているため、これらの開発工程を省略できる。これにより、短期間でのシステム稼働が可能となり、ビジネスのスピードアップに貢献する。また、開発にかかる人件費やリソースが不要となるため、一般的には初期投資やシステム全体の総保有コスト(TCO:Total Cost of Ownership)を抑えられる傾向がある。 品質と信頼性の高さもCOTS製品の重要な利点だ。多くのユーザーによって利用され、市場での実績が豊富にある製品は、様々な環境で試され、繰り返し改善されているため、潜在的なバグが少なく、安定稼働が期待できる。また、製品ベンダーによる継続的なサポートや、活発なユーザーコミュニティが存在することも多い。これにより、トラブル発生時の解決策を見つけやすかったり、最新の機能アップデートやセキュリティパッチが定期的に提供されたりするため、システムの運用維持が比較的容易になる。製品によっては、複数の機能が統合されている場合も多く、個別のシステムを連携させる手間を省けることもある。 一方で、商用オフザシェルフ製品の導入にはいくつかのデメリットや課題も存在する。最も顕著なのが、自社の独自の業務プロセスや特定の要件に完全に合致しない可能性がある点である。COTS製品は汎用性を重視して作られているため、特定の企業にとっての「かゆいところに手が届かない」機能不足が生じることがある。この不足を補うためにカスタマイズを試みる場合もあるが、既製品であるためカスタマイズには限界があり、またカスタマイズの度合いが高くなると、導入期間やコストが増加し、COTS製品のメリットが薄れてしまう可能性もある。さらに、製品ベンダーが提供するアップデートやバージョンアップとの互換性問題が発生するリスクもある。 特定のベンダーの製品に依存することによって生じる「ベンダーロックイン」も考慮すべき点だ。一度COTS製品を導入すると、その製品のデータ形式や機能、運用方法に深く依存することになり、将来的に別の製品への乗り換えが困難になることがある。また、ライセンス費用や年間保守費用が継続的に発生するため、長期的に見るとコストがかさむケースもある。 セキュリティ面では、広く使われている製品であるがゆえに、脆弱性が発見された場合、多くのシステムが攻撃の標的となるリスクがある。そのため、ベンダーからのセキュリティパッチの適用や、適切なセキュリティ対策の継続が不可欠となる。また、多くの機能が搭載されているがゆえに、自社にとって不要な機能が多く、システムの全体が複雑化したり、ユーザーが操作を習得するまでの学習コストが増大したりする可能性もある。 商用オフザシェルフ製品を導入する際には、これらのメリットとデメリットを慎重に比較検討する必要がある。自社の業務要件とCOTS製品の機能との「フィット&ギャップ分析」を徹底し、カスタマイズの必要性とその許容範囲を明確にすることが重要だ。また、ベンダーの信頼性、サポート体制、製品のロードマップ(将来的な開発計画)なども評価項目に入れるべきである。COTS製品は、ゼロからの開発と比較して、手軽に高度なシステムを導入できる強力な選択肢だが、その特性を十分に理解した上で、自社のビジネス戦略に合致する最適な判断が求められる。

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