第1四分位数 (ダイイチシブンスウ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
第1四分位数 (ダイイチシブンスウ) の読み方
日本語表記
第一四分位数 (ダイイチシブンイスウ)
英語表記
first quartile (ファーストクォータイル)
第1四分位数 (ダイイチシブンスウ) の意味や用語解説
第1四分位数とは、統計学で用いられる指標の一つであり、収集したデータを大きさの順に並べた際に、小さい方から数えて全体の25%に位置する値のことである。英語では「First Quartile」と呼ばれ、しばしば「Q1」という記号で表される。この指標は、データの分布を理解する上で非常に重要であり、特にシステムエンジニアリングの分野において、システムのパフォーマンス評価やデータ分析など、多岐にわたる場面で活用される。データセット全体の傾向を把握する際、平均値がよく用いられるが、平均値は一部の極端に大きい、または小さい値である外れ値によって大きく変動してしまう弱点を持つ。一方で、第1四分位数はデータを順序に基づいて分割するため、外れ値の影響を受けにくく、より安定した基準でデータの下位グループの傾向を把握することが可能である。データを4等分する点を四分位数と呼び、小さい方から第1四分位数(25%点)、第2四分位数(50%点)、第3四分位数(75%点)と続く。このうち、第2四分位数はデータ全体の中央に位置する値であり、一般的に中央値として知られているものと同一である。第1四分位数は、この中央値よりも小さい値のグループである下位半分の、さらにその中央値と考えることができる。つまり、データ全体の少なくとも75%がこの値以上であり、25%がこの値以下であることを示している。 第1四分位数の具体的な求め方について説明する。まず、分析対象となる全てのデータを昇順、つまり小さいものから大きいものへと順番に並べ替える必要がある。この並べ替えが完了したら、次にデータセット全体の中央値、すなわち第2四分位数を特定する。中央値の求め方は、データの個数が奇数か偶数かによって異なる。データ数が奇数の場合は、中央に位置する一つの値がそのまま中央値となる。データ数が偶数の場合は、中央に位置する二つの値の平均値が中央値となる。中央値が特定できたら、データセットを中央値を境にして、それより小さい値からなる「下位グループ」と、それより大きい値からなる「上位グループ」の二つに分割する。第1四分位数は、この「下位グループ」の中央値を計算することで求められる。例えば、9個のデータ「3, 8, 11, 15, 19, 22, 25, 28, 30」があった場合を考える。データ数が奇数なので、中央値(第2四分位数)は5番目の値である「19」となる。この中央値「19」を除いた下位グループは「3, 8, 11, 15」の4つである。この下位グループの中央値が第1四分位数となる。データ数が偶数なので、中央に位置する二つの値「8」と「11」の平均値を計算し、「(8 + 11) / 2 = 9.5」が第1四分位数となる。次に、10個のデータ「10, 21, 24, 35, 40, 52, 60, 68, 77, 85」があった場合を考える。データ数が偶数なので、中央値(第2四分位数)は中央の二つ、5番目の「40」と6番目の「52」の平均値である「(40 + 52) / 2 = 46」となる。この場合、下位グループは「10, 21, 24, 35, 40」の5つとなる。この下位グループの中央値が第1四分位数であり、データ数が奇数なので中央に位置する3番目の値「24」が第1四分位数となる。なお、中央値を下位グループや上位グループに含めるか否かについては、統計学の定義によって複数の流儀が存在するが、ここで示した方法は広く用いられている計算方法の一つである。 システムエンジニアの業務において第1四分位数がどのように活用されるか、具体的な例を挙げて解説する。最も代表的な活用場面は、システムのパフォーマンスモニタリングである。例えば、Webアプリケーションのサーバーレスポンスタイムを継続的に計測しているとする。このとき、単に平均レスポンスタイムを監視するだけでは、全体のごく一部で発生している極端に遅いレスポンスが平均値を引き上げてしまい、大多数のユーザーが快適な速度で利用できているにもかかわらず、システム全体が遅いと誤った判断を下してしまう可能性がある。ここで四分位数を用いると、より実態に即した分析が可能となる。第1四分位数、中央値(第2四分位数)、第3四分位数を確認することで、レスポンスタイムのばらつきや分布の形状を把握できる。例えば、第1四分位数が非常に小さい値であれば、少なくとも25%の高速なリクエストは非常に素早く処理されていることがわかる。逆に、中央値は低いものの第3四分位数や最大値が極端に大きい場合、一部の特定の処理や条件下で性能劣化が発生している可能性を示唆する。このように、第1四分位数はパフォーマンスの「最低保証ライン」に近い指標として機能し、「少なくとも75%のリクエストはこの値よりも速く処理されている」という具体的なサービス品質の基準として解釈できる。また、この考え方はSLA(Service Level Agreement)の策定や評価にも応用される。SLAでは、応答時間の95パーセンタイル値や99パーセンタイル値といった指標がよく用いられるが、四分位数も同様に、サービスの安定性を多角的に評価するための重要な情報を提供する。さらに、第1四分位数は、データの可視化手法である「箱ひげ図」を作成する際の構成要素でもある。箱ひげ図は、最小値、第1四分位数、中央値、第3四分位数、最大値を用いてデータの分布を視覚的に表現するグラフである。箱ひげ図の「箱」の下辺が第1四分位数を示しており、異なるシステムや機能改修の前後で箱ひげ図を比較することで、パフォーマンス分布の変化を一目で理解することができる。例えば、改修後に箱全体が下方に移動し、第1四分位数の値が小さくなっていれば、全体的なパフォーマンスが改善されたと判断できる。このように、第1四分位数は単なる一点の数値ではなく、データ全体の分布を理解し、システムの健全性を評価するための重要な手がかりとなるのである。