ギガビットスイッチ (ギガビットスイッチ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

ギガビットスイッチ (ギガビットスイッチ) の読み方

日本語表記

ギガビットスイッチ (ギガビットスイッチ)

英語表記

Gigabit switch (ギガビットスイッチ)

ギガビットスイッチ (ギガビットスイッチ) の意味や用語解説

ギガビットスイッチは、現代のローカルエリアネットワーク（LAN）を構成する上で中心的な役割を担うネットワーク機器である。複数のコンピュータ、サーバー、プリンターなどのネットワーク対応機器をLANケーブルで接続し、それらの機器間で相互にデータ通信を行うための中継装置として機能する。その名称が示す通り、最大で1Gbps（ギガビット毎秒）の通信速度に対応している点が大きな特徴である。これは1秒間に1ギガビットのデータを転送できる能力を意味し、大容量のファイル転送や高画質なストリーミング配信など、高速なデータ通信が求められる業務環境において標準的な性能となっている。ギガビットスイッチの最も重要な機能は、単にデータを中継するだけでなく、宛先を判断して特定の相手にのみデータを送り届ける「スイッチング」にある。これにより、ネットワーク全体の通信効率を大幅に向上させ、不要なトラフィックの発生を抑制することができる。 ギガビットスイッチの動作原理を理解するためには、OSI参照モデルにおける第2層（データリンク層）の役割を知る必要がある。スイッチは、接続された各機器が持つ固有の物理アドレスであるMACアドレスを識別して動作する。スイッチの電源が投入されると、各ポートに接続された機器からデータ（フレーム）が送信されるたびに、その送信元MACアドレスと受信したポート番号の対応関係を学習し、内部に「MACアドレステーブル」として記録していく。以降、ある宛先MACアドレスを持つフレームを受信すると、スイッチはMACアドレステーブルを参照し、その宛先機器が接続されている特定のポートにのみフレームを転送する。このインテリジェントなデータ転送方式により、かつて利用されていたリピータハブのように、受信したデータを全てのポートに無差別に転送することはない。その結果、通信の衝突（コリジョン）が発生する範囲を各ポートに限定することができ、ネットワーク全体のパフォーマンス低下を防ぐ。また、スイッチは基本的にデータの送信と受信を同時に行える「全二重通信」に対応しており、理論上の通信帯域を最大限に活用できる点も、送信か受信のどちらか一方しか行えない「半二重通信」が基本であったハブとの大きな違いである。 ギガビットスイッチは、その機能や管理能力によっていくつかの種類に分類される。まず、動作するネットワーク階層に基づき、「レイヤ2スイッチ」と「レイヤ3スイッチ」に大別される。レイヤ2スイッチは前述の通りMACアドレスに基づいてスイッチングを行う最も一般的なタイプであり、同一のネットワークセグメント内での高速な通信を実現する。一方、レイヤ3スイッチは、レイヤ2の機能に加えて、第3層（ネットワーク層）のIPアドレスに基づいたルーティング機能も備えている。これにより、異なるネットワークセグメント間の通信も可能となり、ルーターのようにネットワーク間の交通整理を行うことができる。大規模なネットワークにおいて、基幹部分で高速なルーティング処理を行うために導入されることが多い。 さらに、管理機能の有無によって「ノンインテリジェントスイッチ（アンマネージドスイッチ）」と「インテリジェントスイッチ（マネージドスイッチ）」に分けられる。ノンインテリジェントスイッチは、設定機能を持たず、電源を接続するだけで利用できる手軽さが特徴である。小規模なオフィスや家庭など、単純にネットワーク接続を拡張したい場合に適している。対してインテリジェントスイッチは、Webブラウザやコマンドラインインターフェースを通じてネットワーク管理者が詳細な設定を行える高機能なスイッチである。代表的な機能として、物理的な接続に捉われずに仮想的なネットワークグループを作成し、セキュリティ向上やトラフィック管理を容易にする「VLAN」、音声や映像など特定の通信を優先的に処理し、通信品質を安定させる「QoS」、ネットワークの監視や障害解析のために特定のポートの通信を別のポートへ複製する「ポートミラーリング」などがある。これらの高度な機能は、企業などの複雑で高い信頼性が求められるネットワーク環境において不可欠である。 その他、実用的な機能として「PoE（Power over Ethernet）」に対応したギガビットスイッチも広く利用されている。これは、LANケーブルを通じてデータ通信と同時に電力を供給する技術であり、無線LANアクセスポイントやIPカメラ、IP電話機など、電源コンセントの確保が難しい場所に設置する機器への給電を容易にする。システムエンジニアは、構築するネットワークの規模、要求される通信速度、セキュリティポリシー、将来の拡張性などを総合的に評価し、これらの多様な種類の中から最適なギガビットスイッチを選定する能力が求められる。