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HD DVD(エイチディーディーヴイディー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

HD DVD(エイチディーディーヴイディー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

エイチディーディーヴイディー (エイチディーディーヴィーディー)

英語表記

HD DVD (エイチディーディーヴイディー)

用語解説

HD DVDは、DVD(Digital Versatile Disc)の後継となるべく開発された、青紫色レーザーを使用する高密度光ディスク規格である。正式名称はHigh Definition Digital Versatile Discといい、主にハイビジョン映像の記録・再生を目的としていた。2000年代中盤、同じく次世代DVD規格を目指したBlu-ray Disc(ブルーレイディスク)との間で激しい規格争いを繰り広げたが、最終的に市場競争に敗れ、普及することなくその役目を終えた。しかし、高精細映像時代における大容量ストレージ技術の発展を促した重要な規格として位置づけられている。

HD DVDが開発された背景には、2000年代初頭からのデジタル放送の普及に伴う映像のハイビジョン化がある。従来の標準画質(SD画質)に比べ、ハイビジョン画質(HD画質)は解像度が格段に高く、それに伴いデータ量も飛躍的に増大した。当時主流であったDVDは、片面1層で4.7GB、2層でも8.5GBの記憶容量しかなく、長時間のハイビジョン映像を画質を損なわずに収録するには容量が不足していた。この課題を解決するため、より大容量のデータを記録できる新しい光ディスク規格が必要とされ、HD DVDとBlu-ray Discが次世代規格として登場したのである。

技術的には、HD DVDはDVDの技術を基礎として発展させた点が特徴である。記録密度の向上には、より波長の短いレーザー光を使用することが不可欠であった。DVDが波長650nmの赤色レーザーを使用していたのに対し、HD DVDはBlu-ray Discと同じく、より波長の短い405nmの青紫色レーザーを採用した。レーザーの波長が短いほど、ディスク上の記録ピットをより小さく、高密度に配置できるため、記憶容量を大幅に増やすことが可能になった。また、レンズの開口数(NA)もDVDの0.6から0.65へと向上させ、レーザー光をより細く絞り込むことで、さらなる高密度化を実現した。

ディスクの物理構造においては、DVDとの類似性が際立っていた。HD DVDは、厚さ0.6mmのポリカーボネート製ディスクを2枚貼り合わせるという、DVDと全く同じ構造を採用した。この構造は、既存のDVD製造ラインを大幅な改修なしに転用できるという大きな利点をもたらし、ディスクの製造コストを低く抑えることが期待された。これは、記録層が表面からわずか0.1mmの位置にあるBlu-ray Discが、傷や汚れから記録層を保護するために当初から専用の製造ラインと高度なハードコート技術を必要とした点とは対照的であった。HD DVDの記憶容量は、片面1層で15GB、片面2層で30GBであり、DVDの約3倍から6倍の容量を実現した。再生専用のHD DVD-ROM、一度だけ書き込み可能なHD DVD-R、繰り返し書き換えが可能なHD DVD-RWといったバリエーションも規格化されていた。

2005年頃から本格化したHD DVDとBlu-ray Discの規格争いは、「次世代DVD戦争」と呼ばれ、家電メーカーだけでなく、ハリウッドの映画スタジオやIT企業をも巻き込む大規模なものとなった。HD DVD陣営は、東芝とNECが中心となり、マイクロソフト、ユニバーサル・ピクチャーズ、パラマウント・ピクチャーズなどが支持を表明した。製造コストの低さと、DVDとの下位互換性を実現しやすい点を強みとしてアピールした。一方、Blu-ray Disc陣営は、ソニー、パナソニック、シャープが主導し、20世紀フォックス、ウォルト・ディズニー・カンパニーなどが支持した。Blu-rayの最大の武器は、片面1層で25GB、2層で50GBという、HD DVDを上回る記憶容量であった。

この競争の行方を決定づけたのは、コンテンツと再生環境の普及であった。コンテンツ面では、どちらの規格がより多くの映画タイトルを確保できるかが鍵を握った。当初、映画スタジオの支持は両陣営に分かれていたが、2008年1月、これまで両規格を支持してきたワーナー・ブラザースがBlu-ray単独支持へと転換したことが決定的な転機となった。これにより、Blu-ray陣営がコンテンツ供給において圧倒的優位に立った。再生環境の面では、家庭用ゲーム機の戦略が大きく影響した。ソニー・コンピュータエンタテインメント(当時)が発売したPlayStation 3は、標準でBlu-ray Discドライブを搭載しており、ゲーム機としてだけでなく、安価なBlu-ray再生機としても機能し、ハードウェアの普及を強力に後押しした。対するマイクロソフトのXbox 360は、HD DVDドライブを外付けのオプション機器として販売するに留まり、普及の起爆剤とはなり得なかった。

これらの要因が重なり、市場の趨勢は急速にBlu-rayへと傾いた。そして2008年2月19日、HD DVD陣営を主導してきた東芝がHD DVD関連事業からの全面的な撤退を表明し、約3年間にわたる規格争いはBlu-ray Discの勝利で終結した。HD DVDは市場から姿を消すことになったが、次世代メディアを巡る技術開発競争は、光ディスク技術全体の進化に貢献し、消費者がより高品質な映像コンテンツを享受する時代の到来を早める一因となった。システムエンジニアを目指す者にとって、この規格争いの歴史は、技術的な優位性だけでなく、業界標準を確立するためのエコシステム形成、アライアンス戦略、コンテンツホルダーとの連携がいかに重要であるかを示す貴重な事例となっている。

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