IFS関数(アイエフエスかんすう)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
IFS関数(アイエフエスかんすう)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
IFS関数 (アイエフエスかんすう)
英語表記
IFS (アイエフエス)
用語解説
IFS関数は、表計算ソフトにおいて複数の条件分岐を処理するために使用される論理関数である。この関数の主な目的は、指定された複数の条件を順番に評価し、最初に真(TRUE)と判定された条件に対応する値を返すことにある。従来、複雑な条件分岐はIF関数を何重にも入れ子(ネスト)にして記述する必要があったが、これにより数式が長大かつ複雑になり、可読性の低下や修正の困難さを招くという課題があった。IFS関数は、このIF関数のネスト構造を解消し、複数の条件とそれに対応する結果をフラットな構造で記述できるようにすることで、数式の可読性とメンテナンス性を大幅に向上させるために導入された。例えば、学生の成績を点数に応じて「優」「良」「可」「不可」と評価する場合や、売上金額によって顧客ランクを「ゴールド」「シルバー」「ブロンズ」と判定する場合など、複数の段階的な条件に基づいて結果を決定するような業務で極めて有効に機能する。
IFS関数の基本的な構文は IFS(論理式1, 値が真の場合1, [論理式2, 値が真の場合2], ...) という形式で構成される。引数は「論理式」と「値が真の場合」が必ずペアになっており、このペアを必要に応じて最大127個まで指定することが可能である。最初の引数である「論理式1」は、TRUE(真)またはFALSE(偽)を返す評価式である。例えば、「セルA1の値が90以上である」ことを示す A1>=90 といった式がこれにあたる。次の引数「値が真の場合1」は、「論理式1」がTRUEと評価された場合に、この関数が返す値や文字列、あるいは別の数式を指定する。IFS関数は、引数として指定されたペアを左から右へと順番に評価していく。まず「論理式1」を評価し、もしこれがTRUEであれば、「値が真の場合1」を関数の結果として返し、その時点で処理を終了する。それ以降に続く「論理式2」以降の評価は一切行われない。もし「論理式1」がFALSEであった場合は、次に「論理式2」の評価に移り、これがTRUEであれば「値が真の場合2」を返して処理を終了する。このプロセスを、いずれかの論理式がTRUEになるか、あるいはすべての論理式を評価し終えるまで繰り返す。この「最初にTRUEとなった条件で処理が終了する」という動作特性は、IFS関数を正しく使用する上で非常に重要なポイントとなる。したがって、条件を設定する際には、その評価順序を十分に考慮する必要がある。例えば、範囲を指定する条件(90点以上、80点以上、70点以上など)を記述する場合、より限定的で厳しい条件から順に記述しないと、意図した通りの結果が得られない可能性がある。
IFS関数の最大の利点は、IF関数をネストさせた場合と比較すると明確になる。例えば、セルA1の点数に応じて評価を決定する処理をIF関数で記述すると IF(A1>=90, "A", IF(A1>=80, "B", IF(A1>=70, "C", "D"))) のようになる。条件が増えるほど IF(...) の入れ子が深くなり、対応するカッコの数も増えるため、数式の構造が把握しにくくなる。一方、同じ処理をIFS関数で記述すると IFS(A1>=90, "A", A1>=80, "B", A1>=70, "C") のように、各条件と結果のペアが並列に並ぶため、非常に直感的で理解しやすい。しかし、この数式では、70点未満の場合にどの条件にも一致せず、結果としてエラー値「#N/A」が返されるという問題が生じる。IF関数のネストでは最後の引数に「偽の場合の値」を指定することで、どの条件にも当てはまらない場合のデフォルト値を設定できたが、IFS関数にはそれに相当する引数が存在しない。この問題を解決し、「その他すべての場合」という条件を擬似的に作り出すためには、最後の論理式として常にTRUEと評価される値、すなわちキーワード TRUE そのものを指定するテクニックが用いられる。具体的には IFS(A1>=90, "A", A1>=80, "B", A1>=70, "C", TRUE, "D") のように記述する。この場合、A1が90以上、80以上、70以上のいずれの条件にも一致しない時、最後の TRUE が評価される。この論理式は常に真であるため、対応する値「D」が返されることになり、実質的にIF関数の「偽の場合」と同じ役割を果たすことができる。
IFS関数を使用する際にはいくつかの注意点が存在する。第一に、この関数は比較的新しいバージョンの表計算ソフトで導入された機能であるため、互換性に注意が必要である。具体的には、Microsoft ExcelではExcel 2019以降およびMicrosoft 365のサブスクリプション版で利用できるが、Excel 2016以前のバージョンではサポートされていない。Googleスプレッドシートでは標準で利用可能である。したがって、古いバージョンのExcelを使用している環境とファイルを共有する可能性がある場合は、IFS関数の使用を避け、従来通りのIF関数のネストで記述する必要がある。第二に、前述の通り、どの論理式もTRUEと評価されず、かつ TRUE を用いたデフォルト値の設定がない場合、関数は「#N/A」エラーを返す。これは意図しないエラーの原因となりうるため、条件設定は網羅的に行うか、必ずデフォルト値を設定することが推奨される。システム開発の現場では、データの整合性や予期せぬエラーの防止が重要視されるため、こうした関数の特性を正確に理解し、適切に使用する能力が求められる。