LPDDR2(エルピーディーディーアールツー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

LPDDR2(エルピーディーディーアールツー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

エルピーディーディーアールツー (エルピーディーディーアールツー)

英語表記

LPDDR2 (エルピーディーディーアーツー)

用語解説

LPDDR2は、主にスマートフォンやタブレット、薄型ノートパソコンなどのモバイル機器向けに設計されたメモリ規格の一種である。正式名称は「Low Power Double Data Rate 2 SDRAM」であり、その名の通り、低消費電力(Low Power)を最大の特徴とする。この規格は、電子デバイス技術の標準化団体であるJEDECによって定められた。LPDDR2は、デスクトップPCなどで広く利用されたDDR2 SDRAMをベースに、バッテリー駆動が前提となるモバイル機器の要求に応えるため、徹底した省電力化が図られている。モバイル機器の性能向上とバッテリー持続時間の延長という、相反する要求を両立させる上で重要な役割を果たした技術である。

LPDDR2の技術的な詳細を理解するためには、まずその低消費電力化の仕組みを知る必要がある。最も直接的な方法は動作電圧の低減である。一般的なDDR2 SDRAMが1.8Vの電圧で動作するのに対し、LPDDR2は1.2Vという低い電圧で動作する。消費電力は電圧の二乗に比例するため、このわずかな電圧差が全体の消費電力削減に大きく貢献する。さらに、LPDDR2にはモバイル機器特有の使用状況を想定した、高度な省電力機能が複数搭載されている。その一つが「ディープ・パワーダウン・モード」である。これは、メモリがアクティブに使用されていない待機状態において、データ保持に必要な最低限の電力を除き、ほとんどの内部回路への電力供給を遮断する機能である。これにより、スリープ時の消費電力を劇的に削減し、機器の待機時間を延ばすことが可能となる。また、「パーシャル・アレイ・セルフ・リフレッシュ(PASR)」という機能も重要である。DRAMは記憶内容を保持するために定期的なリフレッシュ動作が必要だが、PASRはメモリ全体ではなく、データが格納されている部分のみを選択的にリフレッシュする。これにより、不要なリフレッシュ動作をなくし、消費電力を抑えることができる。加えて、「温度補償セルフ・リフレッシュ(TCSR)」は、メモリチップの温度に応じてリフレッシュの頻度を動的に調整する機能である。一般的に、温度が低いほどデータ保持時間は長くなるため、低温時にはリフレッシュ間隔を長くすることで、さらなる省電力化を実現する。

性能面においては、LPDDR2はDDR2のアーキテクチャを継承している。「Double Data Rate」の名の通り、クロック信号の立ち上がりと立ち下がりの両方のタイミングでデータを転送することにより、クロック周波数の2倍のデータ転送レートを実現する。例えば、クロック周波数が400MHzの場合、800MT/s(毎秒8億回のデータ転送)の速度でデータをやり取りできる。また、内部のデータバスから外部のI/Oピンへ一度に転送するデータ量を増やす「プリフェッチ」という技術も採用されており、LPDDR2ではDDR2と同じ4nプリフェッチアーキテクチャが用いられている。これは、一度のメモリアクセスで4ビット分のデータをまとめて読み出すことを意味し、データ転送の効率を高めている。

LPDDR2は、前世代のLPDDRや、ベースとなったDDR2と比較して明確な進化を遂げている。初代LPDDRがDDR1をベースにしていたのに対し、LPDDR2はDDR2をベースとすることで、より高い動作クロックとデータ転送速度を実現した。また、前述の通り、動作電圧の引き下げや多彩な省電力機能の追加により、消費電力を大幅に削減している。一方で、後継規格であるLPDDR3は、LPDDR2をさらに発展させたものである。LPDDR3ではプリフェッチが8nへと倍増し、同じクロック周波数でもより高いデータ転送速度を達成しているほか、さらなる低消費電力化技術が導入された。このように、LPDDR2はメモリ技術の進化の過程において、モバイル機器の高性能化と低消費電力化を両立させるための重要な橋渡し役を担った規格である。現在では、より高性能なLPDDR4やLPDDR5が主流となっているが、LPDDR2で確立された低消費電力技術の基本思想は、後継の規格にも引き継がれている。システムエンジニアを目指す上で、このようなメモリ規格の変遷と、それぞれの技術的特徴を理解することは、ハードウェアの性能や制約を考慮したシステム設計を行うための基礎知識として非常に重要である。

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