ソートマージ結合 (ソートマージケツゴウ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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ソートマージ結合 (ソートマージケツゴウ) の読み方

日本語表記

ソートマージ結合 (ソートマージケツゴウ)

英語表記

Sort Merge Join (ソートマージジョイン)

ソートマージ結合 (ソートマージケツゴウ) の意味や用語解説

ソートマージ結合は、データベースシステムが複数のテーブルから関連するデータを効率的に結合するためのアルゴリズムの一つである。これは、特に結合対象となるデータ量が非常に大きい場合に優れた性能を発揮することが多く、データウェアハウスや大規模な分析クエリなどで頻繁に利用される。この結合方式は、その名の通り「ソート(並べ替え)」と「マージ(結合)」という二つの主要なステップを経てデータ結合を実現する。システムエンジニアを目指す上で、データベースの性能を理解し、適切な結合方法を選択する能力は非常に重要であり、ソートマージ結合はその基礎知識の一つとなる。 詳細を説明する。データベースにおけるテーブル結合とは、共通の列(結合キー)を持つ二つ以上のテーブルを組み合わせて、一つの意味のある結果セットを作成する処理を指す。例えば、顧客情報が格納されたテーブルと、その顧客の注文履歴が格納されたテーブルがある場合、顧客IDを結合キーとして二つのテーブルを結合することで、「どの顧客が何を注文したか」という情報を一つの結果として得ることができる。結合処理には、ソートマージ結合の他に、ネステッドループ結合やハッシュ結合といった手法が存在し、データベース管理システム(DBMS)は実行されるクエリの特性(データ量、インデックスの有無、結合条件など)に応じて最適な結合方式を自動的に選択する。 ソートマージ結合は、以下の二つのステップで処理が進む。 第一のステップは「ソート」である。結合対象となる二つのテーブル(仮にテーブルAとテーブルBとする)を、それぞれ個別に結合キーとなる列の値に基づいて昇順または降順に並べ替える。例えば、テーブルAが顧客テーブルで「顧客ID」を結合キーとし、テーブルBが注文テーブルで「顧客ID」を結合キーとする場合、両方のテーブルの全レコードを「顧客ID」でソートする。このソート処理は、物理的にテーブルのレコードの並び順を変更するものではなく、内部的にソートされた状態のデータストリームを生成する。もし結合キーとなる列に、既にソートされた状態のインデックス(例えばB-treeインデックス)が存在する場合、DBMSはそのインデックスを利用してソート処理をスキップし、最初からソートされた順序でデータを効率的に読み出すことが可能である。これにより、ソートにかかるCPU時間やディスクI/Oのコストを大幅に削減できるため、ソートマージ結合の効率が飛躍的に向上する。 第二のステップは「マージ」である。ソートが完了した二つのテーブル(またはソートされたデータストリーム)は、それぞれの先頭から結合キーを比較しながら順次処理されていく。具体的には、テーブルAの現在のレコードとテーブルBの現在のレコードの結合キーを比較する。 もし両者の結合キーが一致する場合、それらのレコードを結合して結果セットに追加する。その後、テーブルAとテーブルBの両方のポインタ(次に読み込むレコードを指す位置)を一つ進める。 もしテーブルAの結合キーがテーブルBの結合キーより小さい場合、テーブルAの現在のレコードには対応する結合キーのレコードがテーブルBにはまだ存在しないか、または既に処理されたと判断し、テーブルAのポインタのみを一つ進める。 逆に、テーブルBの結合キーがテーブルAの結合キーより小さい場合も同様に、テーブルBのポインタのみを一つ進める。 このプロセスを、どちらかのテーブルのすべてのレコードが処理されるまで繰り返す。この線形走査(一度の通過)で両方のソート済みデータストリームを処理できるため、非常に効率的である。特に等結合(INNER JOIN)では、一致するレコードのみを結果に含める。外部結合(LEFT JOIN, RIGHT JOIN, FULL OUTER JOIN)の場合も同様の手順で進むが、一致しない結合キーを持つレコードについても、NULL値で補完するなどして結果セットに含めるよう処理が拡張される。 ソートマージ結合の最大の利点は、大量のデータを扱う際に高い性能を発揮する点にある。特に結合キーに適切なインデックスが存在せず、ネステッドループ結合が非効率になるようなケースや、結合結果がさらにソートされる必要がある場合に有効である。一度ソートしてしまえば、その後は一度の線形走査で結合が完了するため、ディスクアクセス回数が少なくなる傾向がある。また、結合結果が自然と結合キーでソートされた状態になるため、もしその後の処理でORDER BY句が指定されている場合、そのソート処理を省略できることも大きなメリットとなる。 一方で、デメリットも存在する。ソート処理自体に高いCPUリソースとメモリが必要となることである。結合対象のデータ量が膨大で、メモリ上に全てを保持できない場合、一時ディスク領域(テンポラリファイル)を利用してソートを行う必要が生じる。このディスクI/Oが発生すると、ソート処理にかかる時間が大幅に増加し、全体の結合性能が劣化する可能性がある。また、ソートマージ結合は主に等結合(結合条件が`=`の場合)に最適化されたアルゴリズムであり、範囲結合(`>`や`<`などの比較演算子を用いる結合)や非等結合には適用できない。これらの結合には別のアルゴリズムが採用されることが多い。 ソートマージ結合が特に効果を発揮するのは、データウェアハウスにおける大量データの結合や、日次・月次のバッチ処理で大規模なテーブル間の結合を行う場合などである。結合対象のテーブルが既に結合キーでソートされている、または適切なインデックスが存在し、そのインデックスが結合キーでソートされている状態であれば、ソートのコストをほとんどかけずに高速な結合が実現できる。データベースエンジニアは、これらの特性を理解し、データ量やインデックスの状況、クエリの要件に応じてソートマージ結合が最適な選択肢となるかどうかを判断することが求められる。

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