タイムスロット (タイムスロット) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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タイムスロット (タイムスロット) の読み方

日本語表記

時間区間 (ジカンクカン)

英語表記

time slot (タイムスロット)

タイムスロット (タイムスロット) の意味や用語解説

タイムスロットとは、時間分割多重アクセス (TDMA) やタイムシェアリングシステムなど、複数の利用者やプロセスが共有リソース(通信回線やCPUなど)を効率的かつ公平に利用できるように、利用可能な時間を一定の長さに区切った最小単位の期間を指す言葉である。これは、限られた資源を複数の主体が時間軸上で順番に利用する権利を持つように設計された、時間的な区画である。各主体は割り当てられたタイムスロット内でのみリソースを使用する権利が与えられ、他の主体はその間待機するか、別のタイムスロットを利用する。 この概念は特に通信分野において、時間分割多重アクセス(TDMA: Time Division Multiple Access)という技術の中核を成す。TDMAは、一つの周波数帯域を複数のユーザーで共有する際に、時間を細かく区切り、それぞれのユーザーに異なる時間帯(タイムスロット)を割り当てることで、あたかも同時に通信が行われているかのように見せる方式である。これにより、異なるユーザーからの通信データが衝突することなく、同じ周波数上で効率的に伝送される。例えば、第2世代移動通信システムであるGSM(Global System for Mobile Communications)では、1つの無線チャネルが8つのタイムスロットに分割され、各ユーザーに割り当てられるのが一般的な例である。 各タイムスロットは単にデータ送信の機会を提供するだけでなく、その内部にも特定の構造を持つ。一般的には、実際にユーザーが送信するデータ(ペイロード)部分の他に、データの先頭に付加される同期情報や制御情報、そして他のタイムスロットとの干渉を防ぐための短い無通信区間であるガードタイムなどから構成される。ガードタイムは、異なるタイムスロットを使用する送信機と受信機の間のわずかなタイミングのずれや電波の伝搬遅延を吸収し、データが混ざり合ってしまうことを防ぐ重要な役割を果たす。これらのタイムスロットは集まって「フレーム」を形成し、さらに複数のフレームが集まって「スーパーフレーム」を形成するといった階層構造を持つことが多く、これにより複雑な通信制御や同期が可能となる。 コンピュータのオペレーティングシステム(OS)におけるCPUスケジューリングの文脈では、タイムスロットは一般的に「タイムスライス」と呼ばれることが多い。これは、マルチタスク処理を実現するために用いられる概念である。OSは、複数のプログラム(プロセス)が同時に実行されているように見せるため、CPUの使用権を各プロセスに一定時間ずつ(タイムスライス単位で)割り当てる。あるプロセスのタイムスライスが終了すると、OSはCPUを別のプロセスに切り替え、そのプロセスにCPUの使用権を与える。このCPUの高速な切り替えをコンテキストスイッチと呼び、これによりユーザーは複数のアプリケーションが同時にスムーズに動作しているかのように感じる。タイムスライスの長さは、システムの応答性とCPU利用効率に直接影響を与える。短すぎると頻繁なコンテキストスイッチによるオーバーヘッドが増加し、CPUが無駄に消費される可能性があり、長すぎるとユーザーの操作に対するシステム応答性が悪化し、アプリケーションが停止しているかのように感じられる場合がある。 さらに広義には、ネットワークにおけるデータ転送プロトコルでもタイムスロットの概念が応用されることがある。例えば、初期の無線LANプロトコルや衛星通信システムなどで使用されたスロットALOHAという方式では、時間を離散的なタイムスロットに区切り、各通信ステーションは割り当てられた、あるいはランダムに選択したタイムスロットでのみデータの送信を試みる。これにより、データの衝突(コリジョン)の確率を低減させ、回線利用効率の向上を図る。ただし、厳密な同期を必要とするTDMAとは異なり、スロットALOHAでは衝突が発生する可能性は依然として残るため、衝突検知や再送の仕組みと組み合わせて利用される。 タイムスロット方式の大きなメリットは、限られたリソースを複数のユーザーやプロセス間で公平に分配できる点にある。また、時間的に分離して利用することで、物理的なデータの衝突を回避でき、制御が比較的シンプルになる。しかし、課題も存在する。固定長のタイムスロットを割り当てる場合、送信するデータ量が少ないユーザーにとっては割り当てられたスロットの後半部分が無駄になり、帯域の利用効率が低下する可能性がある。逆に、大量のデータを送信したいユーザーにとっては、短いタイムスロットしか与えられない場合、複数のスロットを待つか、何度も送信を行う必要が生じ、データ伝送に遅延が発生する原因となることもある。また、タイムスロットの正確な割り当てと利用のためには、すべてのデバイス間で厳密な時間の同期が必要となる点も重要な考慮事項である。 「タイムスロット」と関連する用語に「タイムスライス」があるが、両者は概念的に類似しつつも、主に使われる文脈が異なる。前述の通り、「タイムスライス」はOSのCPUスケジューリングにおけるCPUの割り当て時間単位を指すことが多く、コンピュータ内部の処理に限定される傾向がある。一方、「タイムスロット」はTDMAのような通信プロトコルやネットワークにおけるデータ伝送方式など、より広範な領域における時間単位の区切りとして用いられる。両者を混同しないよう注意が必要である。また、「フレーム」や「周期」といった用語も時間に関する概念だが、これらはタイムスロットを複数集めた上位の概念、あるいは一定の間隔を指す言葉であり、タイムスロットはそれらを構成する最小単位の時間区画として位置づけられる。

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