X.400 (エックスよんひゃく) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
X.400 (エックスよんひゃく) の読み方
日本語表記
エックスよんひゃく (エックスヨンヒャク)
英語表記
X.400 (エックスよんひゃく)
X.400 (エックスよんひゃく) の意味や用語解説
X.400は、国際電信電話諮問委員会(CCITT、現在のITU-T)によって1984年に標準化された、電子メールシステムに関する一連の勧告である。これは、異なる組織やネットワーク間で電子メールを交換するための共通のフレームワークを提供することを目的としていた。当時のインターネットメール(SMTP)とは異なるアプローチを採用し、より複雑で厳格な構造を持っていた。 X.400の概要として、まず重要なのはそのアーキテクチャだ。X.400システムは、複数の「メッセージ転送エージェント(MTA)」と呼ばれるサーバーで構成される。MTAは、メッセージを中継し、宛先MTAに配送する役割を担う。エンドユーザーは、「ユーザーエージェント(UA)」と呼ばれるクライアントソフトウェアを使用してメッセージを作成、送信、受信する。UAはMTAと通信し、メッセージの送受信を行う。X.400ネットワーク全体は、「メッセージ転送システム(MTS)」と呼ばれる。 X.400の大きな特徴の一つは、「メッセージ転送プロトコル(P1)」と「メッセージ内容プロトコル(P2)」という二つの主要なプロトコルを使用している点である。P1はMTA間のメッセージ転送を制御し、P2はメッセージの構造や内容を定義する。P2は、さらに「インターパーソナルメッセージ(IPM)」というメッセージ形式を定義し、これは、電子メールのヘッダーや本文、添付ファイルなどを包含する。 X.400のアドレス体系も特徴的である。「オリジン・デスティネーション(O/R)アドレス」と呼ばれる階層的な構造を持ち、組織、国、個人などの情報を組み合わせて一意に宛先を特定する。このアドレス体系は、SMTPのアドレスよりも複雑だが、より厳格な管理を可能にする。 X.400は、セキュリティ機能も組み込まれていた。認証、暗号化、デジタル署名などをサポートし、メッセージの機密性、完全性、認証性を確保することができた。 しかし、X.400は、その複雑さから、インターネットメール(SMTP)ほど普及しなかった。SMTPは、よりシンプルで柔軟な設計であり、インターネットの急速な成長とともに広く採用された。X.400は、主に政府機関や大企業など、セキュリティや信頼性を重視する環境で使用されることが多かった。 詳細について説明する。X.400のアーキテクチャは、SMTPと比較して非常に堅牢かつ複雑である。MTAは、メッセージを確実に配送するために、様々なルーティングアルゴリズムやエラー処理機構を備えている。MTAは、メッセージが宛先に到達するまで、複数のMTAを経由して転送されることがある。この過程で、メッセージは必要に応じて変換されたり、リレーされたりする。 P1プロトコルは、MTA間の通信を制御するために、一連のコマンドと応答を定義している。P1は、メッセージの送信、受信、転送、エラー通知などを処理する。P2プロトコルは、メッセージの内容を定義するために、一連のフィールドと構造を規定している。P2は、メッセージのヘッダー、本文、添付ファイル、およびその他の属性を定義する。IPMは、P2プロトコルで定義されたメッセージ形式の一つであり、電子メールとして一般的に使用される。 O/Rアドレスは、X.400ネットワーク内で一意に宛先を特定するために使用される。O/Rアドレスは、国コード、管理ドメイン名、プライベートドメイン名、およびユーザー識別子などの要素で構成される。これらの要素は、階層的に組み合わされて、宛先を正確に特定する。O/Rアドレスは、SMTPのアドレスよりも長く、複雑だが、より詳細な情報を含んでいる。 X.400のセキュリティ機能は、メッセージの保護に不可欠である。認証機能は、メッセージの送信者の身元を確認するために使用される。暗号化機能は、メッセージの内容を保護するために使用される。デジタル署名機能は、メッセージの完全性を保証するために使用される。これらのセキュリティ機能は、X.400ネットワークを介して送信されるメッセージのセキュリティを向上させる。 SMTPの台頭により、X.400は徐々に衰退していった。SMTPは、よりシンプルで実装が容易であり、インターネットの普及とともに広く採用された。しかし、X.400は、電子メールシステムの設計に大きな影響を与え、その概念の一部は、現在の電子メールシステムにも受け継がれている。例えば、メッセージの構造やセキュリティ機能などは、X.400の影響を受けていると言える。X.400の経験は、電子メールシステムの標準化における重要な教訓となり、その後の標準化活動に貢献した。