【ITニュース解説】イオンペット、JBCCの運用支援サービスで全国約200店舗のセキュリティ運用体制を強化
2025年09月10日に「ZDNet Japan」が公開したITニュース「イオンペット、JBCCの運用支援サービスで全国約200店舗のセキュリティ運用体制を強化」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
イオングループのペット専門店イオンペットは、全国約200店舗のPCセキュリティを強化。PCの不審な動きを検知して対応する「EDR」という仕組みの運用を専門家に委託するサービスを導入し、全店舗の安全なIT環境を構築した。
ITニュース解説
イオングループのペット専門企業であるイオンペットは、全国に約200店舗を展開している。多くの企業と同様に、同社もまた巧妙化するサイバー攻撃の脅威に直面していた。特に、店舗数が多く、それぞれの拠点で働く従業員のITスキルにばらつきがあるという状況は、セキュリティ管理を難しくする一因であった。さらに、全社のITシステムを管理する本部の担当者は限られており、セキュリティ対策に多くのリソースを割くことが困難な状況にあった。このような課題を解決するため、イオンペットはJBCCが提供する運用支援サービス「マネージドサービス for EDR Plus」を導入し、全店舗の業務端末におけるセキュリティ体制を大幅に強化した。この事例は、現代企業が抱えるセキュリティ課題と、その効果的な解決策を理解する上で重要な示唆を与えてくれる。
まず、今回の対策の核となる技術が「EDR(Endpoint Detection and Response)」である。システムエンジニアを目指す上で、このEDRは非常に重要な概念だ。従来、コンピュータウイルス対策の主流はアンチウイルスソフトであった。これは、既知のウイルスの特徴を記録したパターンファイルと照合し、一致するものを検知して駆除するという仕組みである。いわば、指名手配犯のリストを持って建物の入口を見張る警備員のような役割だ。しかし、サイバー攻撃の手法は日々進化しており、まだ世に知られていない未知のウイルスや、ソフトウェアの脆弱性を突く「ゼロデイ攻撃」、ウイルス対策ソフトに検知されにくい「ファイルレス攻撃」など、従来のアンチウイルスソフトだけでは防ぎきれない脅威が増加している。
そこで登場したのがEDRだ。EDRは「侵入されること」を前提とした対策であり、PCやサーバーといった「エンドポイント(端末)」の内部での挙動を常に監視する。例えば、プログラムが不審な通信を開始したり、通常ではありえないファイル操作を行ったりといった怪しい動きを検知する。これは、建物への侵入を許してしまった後、監視カメラで内部の不審者の動きを捉え、即座に対応する警備システムに例えることができる。EDRは脅威を検知(Detection)するだけでなく、その脅威を端末ごとネットワークから隔離したり、原因となったプロセスを停止させたりといった対応(Response)まで行うことができるのが大きな特徴である。これにより、万が一マルウェアに感染しても、被害が拡大する前に対処することが可能となる。
しかし、EDRを導入すれば全ての問題が解決するわけではない。EDRは非常に高性能な監視システムであるため、日々大量のアラート(警告)を発する。その中には、本当に危険な攻撃もあれば、問題のない正常な動作を誤って検知したものも含まれる。この膨大なアラートの中から、真の脅威を正確に見つけ出し、適切に対処するためには、サイバーセキュリティに関する高度な専門知識と分析スキル、そして24時間365日体制での監視が不可欠となる。イオンペットのように、限られた人数のIT担当者でこれを運用するのは現実的ではない。専門家を自社で雇用し、監視体制を構築するには莫大なコストと時間がかかる。
ここで重要になるのが、JBCCが提供する「マネージドサービス」である。これは、EDRの導入から日々の運用、監視、インシデント発生時の対応までを、セキュリティの専門家が代行してくれるサービスだ。イオンペットが導入した「マネージドサービス for EDR Plus」では、セキュリティ専門のアナリストが24時間365日体制でEDRのアラートを監視してくれる。そして、重大な脅威が検知された際には、迅速に分析を行い、遠隔操作で脅威の封じ込めや端末の隔離といった初動対応まで実施する。これにより、イオンペットのIT担当者は、深夜や休日でもアラートに追われることなく、専門家に運用を任せることができるようになった。これは、少ない人数で広範囲のITインフラを管理しなければならない企業にとって、非常に価値のあるソリューションである。専門家の知見を活用することで、自社で高度なセキュリティ人材を抱えることなく、高水準のセキュリティ体制を維持できるのだ。
この取り組みの結果、イオンペットは全国約200店舗のセキュリティレベルを均一に引き上げ、本部IT担当者の運用負荷を大幅に削減することに成功した。店舗ごとのITリテラシーの差に悩まされることなく、全社的に一貫した堅牢なセキュリティ基盤を構築できたのである。この事例は、単に新しい技術を導入するだけでなく、その運用をいかに効率的かつ効果的に行うかという視点が、現代の企業セキュリティにおいて極めて重要であることを示している。システムエンジニアは、技術そのものだけでなく、それを活用して顧客のビジネス課題を解決するためのサービスや運用形態についても深く理解しておく必要があるのだ。