アンチウイルスソフト(アンチウイルスソフト)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

アンチウイルスソフト(アンチウイルスソフト)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

アンチウイルスソフト (アンチウイルスソフト)

英語表記

Antivirus software (アンチウイルスソフトウェア)

用語解説

アンチウイルスソフトとは、コンピュータやスマートフォン、サーバーといったデジタルデバイスを、ウイルス、ワーム、トロイの木馬、スパイウェア、ランサムウェアなどの悪意のあるソフトウェアの総称であるマルウェアから保護するためのソフトウェアである。その主な役割は、マルウェアのデバイスへの侵入を検知・阻止すること、そして既に侵入してしまったマルウェアを隔離・駆除・削除することで、システムや保存されているデータの安全性を確保することにある。インターネットの普及とともにサイバー攻撃は多様化し、その手口も巧妙になっているため、個人ユーザーから企業組織に至るまで、デジタルデバイスを利用する全ての人にとってアンチウイルスソフトは不可欠なセキュリティ対策ツールとして位置づけられる。

アンチウイルスソフトは、多岐にわたるマルウェアの種類に対応するため、複数の高度な検出技術を組み合わせて防御を行う。マルウェアには、他のプログラムに寄生し自己増殖する「ウイルス」、単独で自己増殖しネットワークを介して拡散する「ワーム」、有用なプログラムに見せかけて潜入し情報窃取や不正操作を行う「トロイの木馬」、ユーザーの情報を無断で収集する「スパイウェア」、ファイルを暗号化して身代金を要求する「ランサムウェア」などがある。これらの脅威に対し、アンチウイルスソフトはそれぞれの特性に応じた対策を講じる。

主な検出方式として、パターンマッチング、ヒューリスティック分析、ビヘイビア分析、そしてクラウドベース分析が存在する。 パターンマッチングは、最も基本的な検出方式であり、シグネチャベースとも呼ばれる。アンチウイルスソフトには、既知のマルウェアのプログラムコードの一部や特徴的なデータパターン(シグネチャ)が登録された「定義ファイル」が搭載されている。ソフトはこの定義ファイルを参照し、デバイス内のファイルをスキャンして、シグネチャと一致する部分があるかを照合することで、既知のマルウェアを特定する。この方式は精度が高いが、定義ファイルに登録されていない新しいマルウェアには対応できないため、定義ファイルを常に最新の状態に更新することが極めて重要となる。

ヒューリスティック分析は、未知のマルウェアを検出するために用いられる方式である。これは、ファイルの構造や内部の命令列を解析し、既知のマルウェアと類似する特徴や、マルウェアが実行しがちな疑わしい動作パターンを検出する。例えば、実行ファイルの特定のセクションが暗号化されていたり、通常では見られないようなシステムへの特別な要求が含まれていたりする場合に、マルウェアである可能性が高いと判断する。パターンマッチングでは検出できない新しいマルウェアや、わずかに改変された亜種にも対応できる利点があるが、誤検知のリスクも伴う。

ビヘイビア分析は、プログラムが実行された際の挙動を監視することで、悪意のある動作を検知する方式である。これは、アンチウイルスソフトのリアルタイム保護機能の根幹をなす技術の一つである。例えば、ファイルが勝手に暗号化されたり、重要なシステムファイルが変更されたり、不審なネットワーク通信が開始されたりするなどの挙動を監視し、それらがマルウェア特有の振る舞いであると判断した場合に警告を発し、そのプログラムの動作を停止させる。この方式は、パターンマッチングでは検出できないゼロデイ攻撃(まだ定義ファイルが存在しない新規の攻撃)に対しても有効性がある。一部のアンチウイルスソフトは、疑わしいプログラムを隔離された仮想環境(サンドボックス)で実行し、その挙動を安全に分析する機能も持つ。

クラウドベース分析は、デバイス上で発見された不審なファイルをアンチウイルスベンダーのクラウドサーバーに送信し、大量のデータや人工知能(AI)、機械学習技術を用いて分析する方式である。これにより、個々のデバイスの処理能力に依存せず、世界中のユーザーから収集された広範な脅威インテリジェンスを活用し、より迅速かつ高度な分析が可能となる。新たなマルウェアの拡散を早期に検知し、短時間で定義ファイルに反映させたり、リアルタイムで防御を提供したりすることができるため、最新の脅威への対応力が向上する。

アンチウイルスソフトが提供する主な機能は多岐にわたる。リアルタイムスキャンは、ファイルのダウンロード、開封、コピーなど、あらゆるアクセス時に自動的にスキャンを行い、脅威の侵入を常時監視する機能である。オンデマンドスキャンは、ユーザーが指定したタイミングでシステム全体や特定のフォルダを手動でスキャンする機能である。ウェブ保護やURLフィルタリングは、フィッシングサイトやマルウェアを配布する悪意のあるウェブサイトへのアクセスをブロックし、ウェブ閲覧時の安全性を高める。メールスキャンは、送受信されるメールの添付ファイルや本文中のリンクを検査し、マルウェア感染やフィッシング詐欺のリスクを低減する。アンチウイルスソフトは、検出したマルウェアをシステムから隔離したり、無害化(駆除)したり、完全に削除したりする機能を提供する。駆除が困難な場合は、マルウェアがシステムに影響を与えないよう隔離領域に移動させ、安全を確保する。さらに、総合的なセキュリティソフトの場合、パーソナルファイアウォール機能や、OSやアプリケーションの脆弱性をスキャンし、セキュリティパッチの適用を促す脆弱性対策機能なども含まれる場合がある。

しかし、アンチウイルスソフトは万能ではない。常に進化し続けるサイバー攻撃に対し、100%の防御を保証することはできないため、アンチウイルスソフトだけに頼るのではなく、ユーザー自身もセキュリティ意識を高めることが重要である。具体的には、使用しているOSやアプリケーションソフトウェアを常に最新の状態に保ち、既知の脆弱性を解消する。不審なメールの添付ファイルやリンクは安易に開かない。信頼できないウェブサイトからのファイルのダウンロードは避ける。複雑で推測されにくいパスワードを設定し、使い回さない。また、二段階認証を積極的に利用するなど、多層的なセキュリティ対策を講じることが不可欠である。アンチウイルスソフトは強力なツールだが、それはあくまでセキュリティ対策の一環であり、ユーザー自身の適切な行動と組み合わせることで、初めてその真価を発揮し、安全なデジタル環境を維持できるのである。

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