【ITニュース解説】Apertus 70B: Truly Open - Swiss LLM by ETH, EPFL and CSCS

Apertus 70Bは、ETH（スイス連邦工科大学チューリッヒ校）、EPFL（スイス連邦工科大学ローザンヌ校）、CSCS（スイス国立スーパーコンピューティングセンター）というスイスの主要な研究機関が共同で開発した、オープンソースの大規模言語モデル（LLM）だ。700億個のパラメータを持つこのモデルは、その名の通り、完全にオープンな形で公開されている点が大きな特徴となっている。

LLMは、大量のテキストデータを学習することで、人間が書く文章に近い自然な文章を生成したり、質問に答えたり、テキストの翻訳や要約を行ったりすることができるAIモデルだ。GPTシリーズやLaMDAなどが代表例として挙げられるが、これらの多くは一部の機能が制限されていたり、モデルの内部構造が公開されていなかったりする。

Apertus 70Bが「Truly Open（真にオープン）」であるというのは、モデルの学習に使用されたデータセット、モデルの構造（アーキテクチャ）、学習方法、そして学習済みのモデル自体がすべて公開されていることを意味する。これにより、研究者や開発者はApertus 70Bを自由に利用、改良、再配布することができる。これは、LLMの研究開発の透明性を高め、より多くの人々がLLM技術に貢献できる環境を作る上で非常に重要なことだ。

なぜオープンソースであることが重要なのか。まず、透明性の向上につながる。モデルがどのように学習され、どのようなデータに基づいて動作するのかが明確になるため、バイアスや倫理的な問題点を特定しやすくなる。また、コミュニティによる共同開発が促進される。多くの研究者や開発者がモデルの改善に貢献することで、より高品質で汎用性の高いLLMが生まれる可能性が高まる。さらに、特定企業への依存を避けることができる。オープンソースのLLMが存在することで、一部の企業がLLM技術を独占することを防ぎ、より公平な競争環境を維持することができる。

Apertus 70Bの具体的な技術的な詳細を見てみよう。モデルサイズは700億パラメータであり、これはLLMとしては大規模な部類に入る。パラメータ数が多いほど、モデルはより複雑なパターンを学習し、より高度なタスクを実行できるようになる。学習データには、インターネット上のテキストデータや書籍、学術論文など、様々な種類のデータが含まれていると考えられる。これらのデータを組み合わせることで、Apertus 70Bは幅広い知識と高い言語理解能力を獲得している。

Apertus 70Bは、Hugging Faceというプラットフォームを通じて公開されている。Hugging Faceは、AIモデルやデータセットを共有するためのコミュニティプラットフォームであり、Apertus 70Bのモデルファイルやドキュメント、サンプルコードなどを簡単に利用することができる。システムエンジニアを目指す初心者にとっては、Hugging Faceを通じて実際にLLMに触れ、その仕組みを理解するための良い機会となるだろう。

Apertus 70BのようなオープンソースLLMの登場は、AI技術の民主化を加速させる上で非常に重要な意味を持つ。これまで一部の研究機関や企業しかアクセスできなかった高度なAI技術が、より多くの人々に利用可能になることで、様々な分野での革新が期待される。例えば、教育、医療、エンターテイメントなど、あらゆる分野でLLMを活用した新しいサービスやアプリケーションが生まれる可能性がある。

システムエンジニアを目指す場合、LLMの知識はますます重要になってくる。LLMは、自然言語処理だけでなく、ソフトウェア開発やデータ分析など、様々な分野で活用されている。Apertus 70BのようなオープンソースLLMを学ぶことで、LLMの基本的な仕組みや応用方法を理解し、将来的にLLMを活用したシステム開発に携わるための基礎を築くことができる。具体的には、LLMを使ったチャットボットの開発、テキストデータの分析、自動翻訳システムの実装など、様々なプロジェクトに挑戦することができるだろう。

Apertus 70Bは、単なるLLMの公開というだけでなく、オープンソースAIの可能性を広げる重要な一歩だと言える。システムエンジニアを目指す初心者にとっては、この機会を活かしてLLMの世界に足を踏み入れ、AI技術の未来を担う人材となることを期待したい。