【ITニュース解説】Draw and get judged by an AI
2025年09月07日に「Dev.to」が公開したITニュース「Draw and get judged by an AI」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
AIが描いた絵を理解し評価するマルチプレイお絵かきゲーム「Artbitrator」が公開された。GPT-4 Visionを活用し、単なるパターン認識ではなく絵の内容を判断するのが特徴だ。リアルタイム音声チャットや即時勝敗判定も備え、Next.jsとPythonで構築され、WebRTCで同期する。AIとリアルタイム通信技術の応用例として注目される。
ITニュース解説
Artbitratorは、AI(人工知能)がプレイヤーの描いた絵を評価する、新しいタイプのマルチプレイヤーお絵かきゲームだ。このゲームは、昔ながらのお絵かきゲームの楽しさに、最新のAI技術を組み合わせたものと言える。プレイヤーは与えられたテーマに沿って絵を描き、その絵の出来栄えをAIが判断し、勝者を決定する。
このゲームの最も注目すべき点は、AIの評価能力にある。一般的なお絵かきゲームのAIが単なるパターンマッチング、つまり事前に登録された似たような画像を認識するだけであるのに対し、ArtbitratorではGPT-4 Visionという高度なAIモデルを採用している。このAIは、人間が絵を見るように、描かれている内容を本当に「理解」できる能力を持っている。例えば、プレイヤーが宇宙船を描き始めたが、途中で猫に描き直したような場合でも、AIはその描画の過程と最終的な変化を認識し、「宇宙船から猫へ?まさに銀河を旅するような変化だね!」といった、ユーモアを交えたコメントを返すことができる。これは、AIが単に完成した絵を判別するだけでなく、描画の意図や進行状況まで考慮に入れていることを示している。
ゲーム体験は非常にリアルタイムでインタラクティブだ。最大12人のプレイヤーが同時に同じ部屋で絵を描き、お互いの進行状況を見ながら楽しむことができる。ゲームには音声チャット機能も搭載されており、友達と話しながら協力したり、相手の絵に笑ったりと、コミュニケーションを取りながらプレイすることが可能だ。AIは絵の完成を毎秒監視しており、誰かがテーマに合った絵を完成させた瞬間、即座に勝利が宣言される。これにより、プレイヤーは達成感や競争の興奮をリアルタイムで味わうことができる。
ゲームの進行もスムーズに設計されている。ラウンドが終わると10秒間の休憩が設けられ、その後すぐに次のラウンドが自動的に始まる。AIは、与えられたお題とプレイヤーの描画内容の両方を考慮して、絵の進行に合わせて状況に応じたコメントをリアルタイムで提供する。これにより、プレイヤーはAIとの対話のような感覚でゲームを進められる。また、ゲームの難易度も段階的に変化する。最初は簡単なテーマから始まり、徐々に難易度の高いお題が出題されるため、初心者から熟練者まで誰もが楽しめるようになっている。全部で66種類以上のお題が用意されており、飽きずに長く遊べる工夫も凝らされている。
ゲームのパフォーマンス面でも工夫が見られる。AIが過去に分析した1000以上の描画データをキャッシュとして保存することで、無駄な分析を減らし、システムの応答速度を向上させている。これにより、多くのプレイヤーが同時にプレイしても、AIの判定が遅れることなくスムーズにゲームが進行する。
Artbitratorは、プレイヤーが気軽に始められるようにも配慮されている。友達とすぐにプレイできるクイックマッチング機能や、プライベートな部屋を作成する機能がある。自分のプレイ記録や成果を確認できるプレイヤー統計、XPシステム、そして世界中のプレイヤーと競い合えるリーダーボードも用意されている。さらに、スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスでも快適に動作するよう設計されており、場所を選ばずにプレイできる。初めてのプレイヤーでも、アカウント登録なしでゲストとしてすぐにゲームを試すことができ、もし最初のゲームに勝利すれば、その時に初めて登録を促されるという、ユニークなシステムも採用している。無料アカウントでも、無制限にゲームをプレイでき、統計やリーダーボード機能を利用できるため、気軽に楽しむことができる。
このゲームの技術的な側面を見ると、現代のWebアプリケーション開発の最先端が詰まっていることがわかる。ユーザーが直接操作する画面やインタフェースであるフロントエンドは、「TypeScript」というプログラミング言語と「Next.js」というフレームワークを使って開発されている。これらは、高速で応答性の高いWebサイトやアプリケーションを構築するための強力なツールだ。一方、AIの処理やゲームのロジック、データベースの管理といった裏側の処理を行うバックエンドは、「Python」で構築されている。PythonはAIやデータ分析の分野で非常に広く使われている言語だ。そして、ゲームの中核であるAIの視覚的な理解能力は、「GPT-4 Vision API」を利用して実現されている。APIとは、異なるソフトウェア同士が情報をやり取りするための窓口のようなもので、このAPIを通じてArtbitratorはOpenAIの高性能なAIモデルを活用している。また、プレイヤー間のリアルタイムな描画の同期や音声チャット機能は、「WebRTC」という技術によって支えられている。WebRTCは、Webブラウザ間で直接リアルタイムな音声や映像の通信を可能にする技術で、これにより遅延の少ないスムーズなマルチプレイヤー体験が提供されている。
開発者は、このArtbitratorが単なるゲームとしてだけでなく、ビジネスとしても可能性があるのか、より幅広い層に受け入れられるのか、といった点についてユーザーからのフィードバックを求めている。また、このプロジェクトに協力してくれる開発者の募集も行っている。プレイヤーがこのゲームを継続的に友達とプレイしたくなるような要素は何だろうか、という問いかけは、ユーザー体験をさらに向上させたいという開発者の強い思いを示している。Artbitratorは、AI技術がエンターテイメントとどのように融合し、私たちに新しい遊び方を提供できるかを示す良い例と言えるだろう。