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【ITニュース解説】How Drosera Could’ve Changed the Biggest Hacks in DeFi

2025年09月08日に「Medium」が公開したITニュース「How Drosera Could’ve Changed the Biggest Hacks in DeFi」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

新技術「Drosera」は、DeFi(分散型金融)のハッキング対策を変える。これはブロックチェーン上の攻撃をリアルタイムで検知し、資金を保護する緊急停止機能を提供する。従来の監査では防げなかった攻撃にも即時対応し、被害を最小限に抑える。

ITニュース解説

ブロックチェーン技術を基盤とした金融サービスであるDeFi(分散型金融)の世界では、巨額の資金がハッキングによって失われる事件が後を絶たない。DeFiサービスは、スマートコントラクトと呼ばれる、あらかじめ定められたルールに従って契約を自動的に実行するプログラムによって成り立っている。このスマートコントラクトに脆弱性、つまりプログラムの設計上の欠陥やバグが存在すると、攻撃者はそこを突いて不正に資金を抜き取ってしまう。こうした被害を防ぐため、これまでも様々なセキュリティ対策が講じられてきたが、攻撃手法もまた巧妙化し続けているのが現状である。このような背景の中、ハッキングの被害をリアルタイムで検知し、その拡大を食い止めることを目的とした新しいセキュリティプロトコル「Drosera」が注目されている。

従来のDeFiにおけるセキュリティ対策は、主に二つのアプローチに大別される。一つは、サービス公開前に専門家がスマートコントラクトのコードを精査し、脆弱性がないかを確認する「監査」である。もう一つは、サービス公開後に、外部のセキュリティ研究者やハッカーに脆弱性を見つけてもらい、報告に対して報奨金を支払う「バグバウンティプログラム」だ。これらは非常に重要な対策であるが、限界も存在する。監査はあくまで特定の時点でのチェックであり、将来発見される未知の脆弱性には対応できない。また、バグバウンティは善意の報告者に依存しており、悪意のある攻撃者が先に脆弱性を見つけてしまえば攻撃を防ぐことはできない。つまり、これらの対策は攻撃が発生する「前」か「後」のものであり、攻撃が発生している「最中」にリアルタイムで対応する仕組みが欠けていた。

Droseraは、この「攻撃の最中」に介入するという、これまでになかったアプローチを提供する分散型のインシデント対応プロトコルである。その中核をなすのが「トラップ」と呼ばれる仕組みだ。トラップとは、スマートコントラクト内に仕掛けられるセキュリティロジックであり、攻撃が疑われる異常な動作を検知するための警報装置のようなものである。これらのトラップは、Droseraに参加するホワイトハットハッカー、すなわち善意のセキュリティ専門家たちによって開発・設置される。彼らは過去のハッキング事例や潜在的な攻撃パターンを分析し、それを検知するためのトラップを設計する。

もし攻撃者がスマートコントラクトの脆弱性を突こうとすると、このトラップが作動する。トラップが作動すると、あらかじめ定められた緊急対応措置が自動的に実行される。例えば、プロトコルの機能を一時的に停止させる、特定のウォレットからの資金移動をブロックする、被害を最小限に抑えるために資産を安全な場所に退避させるといった対応が可能だ。重要なのは、この一連のプロセスが中央集権的な管理者なしに、分散化されたネットワークによって実行される点である。これにより、迅速かつ透明性の高いインシデント対応が実現される。

過去に発生した大規模なハッキング事件を振り返ると、Droseraがもたらす価値はより明確になる。例えば、2023年3月に発生したEuler Financeのハッキング事件では、特定の関数の設計上の欠陥が悪用され、約2億ドルもの資産が流出した。もしDroseraが導入されていれば、この異常な関数呼び出しのパターンを検知するトラップを仕掛けることができたはずだ。トラップが作動すれば、プロトコルは即座に停止され、全資産が失われる前に攻撃を食い止めることができた可能性が高い。

また、同年7月のCurve Financeの事件は、スマートコントラクトを記述するために使われるプログラミング言語自体のバグが原因だった。この種の脆弱性は、個別のプロジェクトの監査だけでは見抜くことが極めて困難である。Droseraであれば、特定のバージョンの言語で書かれたコントラクトを監視し、予期せぬ資金流出が発生した際に即座に対応するトラップを設置することが可能だった。

さらに、同年11月のKyberSwapの事件は、非常に複雑な計算ロジックの盲点を突いた高度な攻撃だった。このような巧妙な攻撃に対しても、Droseraのトラップは有効性を発揮し得る。プロトコルの内部状態における僅かな矛盾や、想定外の数値変動を監視することで、攻撃の初期段階で異常を検知し、自動的な緊急対応によって被害の拡大を防げたかもしれない。

Droseraは、ハッキングを完全に防ぐ魔法の解決策ではない。しかし、攻撃は起こり得るものという現実的な前提に立ち、被害が発生した際にそれをいかに最小限に食い止めるかという「被害軽減」に焦点を当てている。これは、従来の「予防」中心のセキュリティ対策を補完し、DeFiエコシステム全体をより強固にするための重要な一歩と言える。システムエンジニアを目指す者にとって、完璧な防御システムを構築することの難しさと、インシデント発生後の迅速な検知と対応の重要性を理解する上で、Droseraの思想と仕組みは非常に示唆に富む事例である。

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