【ITニュース解説】Can a tiny server running FastAPI/SQLite survive the hug of death?
2025年09月09日に「Reddit /r/programming」が公開したITニュース「Can a tiny server running FastAPI/SQLite survive the hug of death?」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
小規模サーバー上のFastAPI/SQLiteアプリでアクセス急増を想定した負荷テストを実施。読み込みは100RPSに耐え、書き込みはWALモード有効化で対応。検索もSQLite FTS5の導入で高負荷に耐えた。軽量な構成でも適切な設定で高トラフィックに対応できることが示された。
ITニュース解説
Webアプリケーションを開発する上で、パフォーマンスは極めて重要な要素である。特に、個人や小規模なチームで開発・運用されるアプリケーションでは、限られたサーバーリソースの中でどれだけのアクセスに耐えられるかが、サービスの安定性を左右する大きな課題となる。ここでは、Pythonの高速なWebフレームワークであるFastAPIと、軽量なファイルベースのデータベースであるSQLiteを組み合わせた小規模なシステムが、突発的なアクセス増加にどこまで耐えられるかを検証した一つの事例について解説する。この検証は、SNSなどで話題になった際に発生する「アクセス殺到」、いわゆる「Hug of Death」と呼ばれる現象を想定したものである。
検証の対象となったのは、普段は1日に300人程度の訪問者がある、個人運営のLinuxサーバー上のアプリケーションだ。このアプリケーションが、もし何かのきっかけで注目を集め、アクセスが急増した場合でもサービスを提供し続けられるかを確認するため、意図的に高い負荷をかける「負荷テスト」が実施された。使用されている技術スタタックは、APIサーバーを構築するためのFastAPIと、データベース管理システムとしてのSQLiteである。FastAPIは、その名の通り高速な動作を特徴とするPythonのフレームワークであり、現代的なWeb開発で人気が高まっている。一方、SQLiteはサーバープロセスを必要とせず、単一のファイルとしてデータベースを管理できるため、手軽に導入できる利点がある。しかし、その手軽さゆえに、高負荷な状況下での性能については懸念されることも少なくない。この負荷テストは、そうした懸念を払拭し、軽量な構成の実用的な限界を探る試みといえる。
最初のテストは、データベースからデータを読み出すだけの「読み込み処理」について行われた。これは、Webサイトのページ表示など、最も基本的な操作に相当する。テストの結果、このシステムは1秒間に100回のリクエスト(100 RPS)をエラーなく処理できた。これは、小規模なサーバー構成としては非常に優れた性能であり、FastAPIとSQLiteの組み合わせが、読み込み処理が中心となるようなアプリケーションにおいては、高いポテンシャルを持っていることを示している。静的なコンテンツの配信や、更新頻度の低いデータの表示であれば、この構成でも十分なパフォーマンスを発揮できることがわかる。
次に、データベースに新しいデータを保存したり、既存のデータを更新したりする「書き込み処理」のテストが行われた。読み込み処理とは異なり、書き込み処理はデータベースファイルそのものを変更するため、より複雑な制御が必要となる。当初、この書き込みテストでは問題が発生した。これは、SQLiteのデフォルトの動作モードに起因する。デフォルトでは、書き込み処理が発生するとデータベースファイル全体がロック(排他制御)され、その処理が終わるまで他の読み書き処理が待たされるため、同時に多数のアクセスが発生すると性能が著しく低下してしまう。この問題を解決するために導入されたのが、SQLiteの「WAL(Write-Ahead Logging)モード」である。WALモードを有効にすると、データベースファイルへの変更は直接行われず、まず「WALファイル」と呼ばれる別のログファイルに追記される。実際のデータベースファイルへの反映は、後でまとめて行われる仕組みだ。これにより、書き込み処理中も読み込み処理をブロックすることがなくなるため、複数の処理を同時に効率よく捌けるようになる。この「並行処理性能」の向上によって、書き込みを伴う高負荷な状況でもシステムは安定して動作するようになった。この結果は、データベースの動作モードという設定一つで、システムの性能が大きく変わることを示す好例である。
最後に、データベース内のデータから特定のキーワードを探し出す「検索処理」のテストが行われた。これは、アプリケーションの中でも特に負荷が高くなりやすい機能の一つだ。案の定、単純な検索機能を実装した状態では、負荷をかけるとシステムが応答しなくなり、テストは失敗に終わった。これは、データベース内の全データを一つずつ調べていくような非効率な検索方法が原因と考えられる。データ量が増えるほど、この方式では処理時間が指数関数的に増加し、サーバーリソースを使い果たしてしまう。この課題を解決するために採用されたのが、SQLiteの拡張機能である「FTS5(Full-Text Search 5)」だ。FTS5は、大量のテキストデータから高速に検索を行うための「全文検索エンジン」である。この機能は、あらかじめ文章を単語単位に分解し、どの単語がどの文書に含まれているかを記録した索引(インデックス)を作成しておく。検索時には、この索引を利用することで、データベース全体をスキャンすることなく、目的の単語を含むデータを瞬時に見つけ出すことができる。FTS5へ切り替えた結果、検索処理のパフォーマンスは劇的に改善され、高負荷な状況でも問題なく機能するようになった。
この一連の検証から、FastAPIとSQLiteという軽量な技術スタックであっても、適切な設定とチューニングを施すことで、予期せぬアクセス増加にも十分耐えうる堅牢なシステムを構築できることが明らかになった。重要なのは、単に技術を組み合わせるだけでなく、それぞれの特性を深く理解し、アプリケーションのどこが性能上のボトルネックになりうるかを予測し、対策を講じることである。書き込み処理におけるWALモードの有効化や、検索処理におけるFTS5のような専用エンジンの導入は、その具体的な実践例だ。この事例は、特にリソースが限られる小規模な開発において、賢明な技術選択と適切な最適化がいかに重要であるかを示しており、システムエンジニアを目指す者にとって示唆に富む内容といえるだろう。