Webエンジニア向けプログラミング解説動画をYouTubeで配信中!
▶ チャンネル登録はこちら

【ITニュース解説】Why I’ll Never Trust a Graph Database Again (And the Painful Lesson That Got Me Here)

2025年09月11日に「Medium」が公開したITニュース「Why I’ll Never Trust a Graph Database Again (And the Painful Lesson That Got Me Here)」について初心者にもわかりやすく解説しています。

作成日: 更新日:

ITニュース概要

グラフデータベースをプロジェクトに導入した筆者は、期待外れの結果と深刻な問題に直面し、二度と信頼しないと決意した。安易な技術選定はプロジェクトに痛い教訓をもたらすため、その特性を深く理解し慎重に選ぶべきだ。

ITニュース解説

システムエンジニアを目指す初心者が、データベース技術の選定がいかに重要で複雑な課題であるかを理解できるよう、具体的な事例を通して解説する。あるエンジニアがグラフデータベースに大きな期待を寄せたものの、結果的に大きな挫折を経験し、リレーショナルデータベースへと回帰したという痛い教訓がそこにはある。

まず、データベースには様々な種類があることを知っておく必要がある。最も一般的なのが「リレーショナルデータベース」で、データをテーブルという形で整理し、テーブル間を関連付けて管理する。例えば、ユーザー情報テーブルと商品情報テーブルがあり、ユーザーが購入した商品を表すテーブルで両者を関連付けるといった具合だ。一方、「グラフデータベース」は、データそのもの(ノードや頂点と呼ばれる)と、それらのデータ間の関係性(エッジや辺と呼ばれる)を直接的に表現・格納することに特化したデータベースである。ソーシャルネットワークにおける友達関係や、商品の推薦システムなど、複雑な関係性を扱う場面で力を発揮すると言われている。

今回の事例では、ある大規模なソーシャルグラフの構築プロジェクトで、このグラフデータベース、具体的にはNeo4jという製品が採用されようとした。そのプロジェクトは数億ものノードと数十億ものエッジを扱うという、非常に大きな規模だった。エンジニアたちは、ユーザー間の多岐にわたる複雑な関係を表現するのにグラフデータベースが最適だと考え、その導入に大きな期待を抱いていたのだ。

しかし、プロジェクトが進むにつれて、次々と予期せぬ問題に直面することになる。最大の課題は「パフォーマンス」だった。グラフデータベースは関係性をたどるクエリに強いとされているが、この大規模なデータセットでは、データの読み込みに膨大な時間がかかり、特に特定のノードから複数段階にわたる複雑な関係をたどるクエリの実行速度が著しく低下した。例えば、「友達の友達の友達が誰か」を探すようなクエリが期待通りに高速に動作しなかったのだ。これは、インデックスの管理がリレーショナルデータベースに比べて複雑で、最適化が困難だったことも一因だった。クエリの実行計画を適切に調整することも難しく、エンジニアたちは期待していた性能をなかなか引き出せなかった。

さらに、「スケーラビリティ」と「運用コスト」も大きな問題となった。データ量が増えるにつれて、データベースの処理能力を向上させるために、より多くのサーバーリソース(メモリやCPUなど)が必要となり、結果的に高額なインフラコストがかさんでいった。グラフデータベースの運用には専門的な知識が必要とされ、運用チームの負担も増大した。これらの課題は、当初見込んでいたよりも遥かに高いコストと労力を要求することになったのである。

開発チームは行き詰まり、最終的にグラフデータベースの採用を断念し、実績のある「リレーショナルデータベース」であるPostgreSQLへの移行を決断した。システムエンジニアの初心者には疑問に思えるかもしれないが、リレーショナルデータベースでもグラフ構造を扱うことは可能だ。例えば、「隣接リストモデル」と呼ばれる手法がある。これは、ノードを一つのテーブルに、そしてノード間の関係性(エッジ)を別のテーブルに格納する方法だ。エッジテーブルには、どのノードからどのノードへの関係かを示すIDを記録する。PostgreSQLのような現代のリレーショナルデータベースは、このようなグラフ構造を効率的にたどるための「再帰クエリ」という強力な機能を持っている。

結果として、PostgreSQLへの移行は驚くべき成功を収めた。期待していたパフォーマンスは向上し、運用コストも大幅に削減されたのだ。この経験から得られた教訓は非常に大きい。

まず、特定の技術が「流行っている」とか「特定の課題解決に特化している」という理由だけで、それが万能な解決策であると盲信してはいけないということ。技術選定は、プロジェクトの規模、データの特性、将来的な拡張性、運用体制、チームのスキルセットなど、多角的な視点から慎重に行う必要がある。今回のケースでは、グラフデータベースの特定の利点に目が向きすぎ、大規模な環境での現実的な制約や複雑性が十分に考慮されていなかったと言える。

次に、シンプルな解決策や既存の成熟した技術の価値を再認識することの重要性だ。リレーショナルデータベースは長年にわたる開発と最適化の歴史を持ち、非常に堅牢で高性能なシステムへと進化している。グラフ構造を扱うという一見グラフデータベースが最適に見える課題でも、リレーショナルデータベースの柔軟性と成熟した機能によって、より効率的かつコスト効果の高い解決策が提供される場合があることを示した。

この痛い教訓は、システムエンジニアを目指す初心者に、技術選定の奥深さと難しさ、そして常に冷静かつ現実的な視点を持つことの重要性を教えてくれるだろう。特定のツールやデータベースが持つ特徴だけでなく、それらが実際のシステムでどのように振る舞い、どのようなコストをもたらすのかを深く理解する視点が、優れたエンジニアになるためには不可欠だ。