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【ITニュース解説】出光興産、「SAP S/4HANA」へ移行せずECC 6.0を延命--リミニストリートの第三者保守選択

2025年09月08日に「ZDNet Japan」が公開したITニュース「出光興産、「SAP S/4HANA」へ移行せずECC 6.0を延命--リミニストリートの第三者保守選択」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

出光興産は、基幹システム「SAP ECC 6.0」を最新版へ移行せず、第三者保守サービスを利用して使い続けることを選択。これによりコストを最適化し、競争力強化のためのDX(デジタルトランスフォーメーション)に投資を集中させる。

ITニュース解説

企業の経営活動を支える重要なITシステムに「ERP(Enterprise Resource Planning)」がある。これは、会計、販売、生産、人事といった企業の基幹となる業務データを一元管理し、経営資源の最適化を図るための統合システムだ。このERPの分野で世界的に高いシェアを誇るのが、ドイツのSAP社が開発するソフトウェアである。日本の多くの大企業も、このSAP社のERPを導入し、日々の事業運営を行っている。

現在、多くの企業で利用されているSAP社のERP製品は「SAP ECC 6.0」と呼ばれるバージョンだ。このECC 6.0は長年にわたり安定して稼働し、多くの企業のビジネスを支えてきた実績がある。しかし、このECC 6.0を利用する企業は、現在大きな決断を迫られている。それは、SAP社がECC 6.0の標準保守サポートを2027年に終了すると発表したからだ。これはIT業界で「2027年問題」と呼ばれている。標準保守サポートが終了すると、システムに新たな問題が発生しても修正プログラムが提供されなくなったり、法改正に対応する更新が行われなくなったりするため、企業は事業継続に深刻なリスクを抱えることになる。

この問題に対するSAP社が示す解決策は、後継製品である「SAP S/4HANA」への移行だ。S/4HANAは、最新のインメモリデータベース技術を活用し、ECC 6.0よりも高速なデータ処理や高度な分析機能を備えている。そのため、多くの企業は2027年の期限に向けて、S/4HANAへの移行プロジェクトを計画、または実行している。しかし、この移行は単なるソフトウェアのバージョンアップとは異なり、非常に大規模なプロジェクトとなる。システムの基盤から刷新する必要があるため、多額の投資、長い期間、そして多くの専門的な人材が必要となる。企業にとっては、経営資源に大きな負担を強いる一大事業なのだ。

こうした状況の中、出光興産は一般的な「S/4HANAへ移行する」という道ではなく、「現行のECC 6.0を継続利用する」という選択をした。これが今回のニュースの大きなポイントである。では、サポートが終了するシステムをどうやって安全に使い続けるのか。その鍵となるのが、リミニストリート社が提供する「第三者保守」というサービスだ。

第三者保守とは、ソフトウェアを開発したベンダー(この場合はSAP社)ではなく、第三者の専門企業が提供する保守サポートサービスのことだ。出光興産は、SAP社の標準保守の代わりにリミニストリート社と契約することで、2027年以降もECC 6.0に対するサポートを受け続けられるようにした。これにより、システムに問題が発生した際の対応や、法改正への対応などを継続的に受けることができ、現行システムを安定して稼働させることが可能になる。

出光興産がこの選択をした背景には、明確な経営戦略がある。S/4HANAへの移行には莫大なコストと社内リソースが費やされるが、その投資が必ずしもすぐに企業の競争力強化に直結するとは限らない。出光興産のECC 6.0は、現在の業務要件を十分に満たし安定稼働している。そこで同社は、巨額の費用をかけて基幹システムを刷新するよりも、その経営資源を、より直接的に事業の成長や優位性につながるデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に振り向けることを選んだのだ。第三者保守を活用すれば、一般的にベンダーの標準保守よりもコストを削減できるため、創出された予算や人材を、新しいデジタル技術の活用や新規事業の開発といった、より戦略的なIT投資に集中させることができる。

この出光興産の決断は、SAPを利用する他の多くの企業にとっても重要な意味を持つ。これまでは「2027年までにS/4HANAへ移行しなければならない」という考えが主流だったが、必ずしもベンダーが定めたロードマップに従うだけが唯一の道ではないことを示す事例となったからだ。自社のビジネスの現状と将来の戦略を慎重に分析し、現行システムがまだ十分に価値を提供しているのであれば、それを維持しつつ、浮いたリソースをより付加価値の高い領域に投資するという、主体的で合理的なIT戦略が存在することを示した。システムはあくまでビジネスの目的を達成するための手段であり、その手段の選択は、企業の個別の事情や戦略に基づいて最適化されるべきだという考え方だ。この動きは、企業がIT投資のあり方を見直すきっかけとなる可能性がある。

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