【ITニュース解説】io_uring is faster than mmap

2025年09月06日に「Reddit /r/programming」が公開したITニュース「io_uring is faster than mmap」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

Linuxにおけるデータ入出力の新技術「io_uring」が、従来の「mmap」より高速に動作することが判明した。これにより、システムのデータ処理効率が向上し、パフォーマンス改善に繋がる。

出典: io_uring is faster than mmap | Reddit /r/programming公開日:

ITニュース解説

現代のソフトウェア開発において、データ処理の速度はアプリケーションの性能を大きく左右する重要な要素だ。特に、プログラムが外部のストレージ(SSDやHDDなど)やネットワークとデータをやり取りする「I/O(インプット/アウトプット)」の性能は、システム全体のボトルネックになりやすい。このI/O処理をいかに効率良く行うかは、システムエンジニアにとって常に大きな課題だ。

これまで、Linuxカーネルでは様々なI/O高速化技術が提供されてきた。その一つに「mmap(メモリマップドファイル)」がある。mmapは、ファイルの内容をプログラムが直接アクセスできるメモリ領域にマッピングする技術だ。通常、ファイルからデータを読み書きするには、プログラムが「read」や「write」といったシステムコールを使って、カーネル(OSの核となる部分)にデータ転送を依頼する必要がある。この際、データはカーネルが管理するバッファを経由し、さらにプログラムが動作する「ユーザー空間」にコピーされるため、複数のデータコピーとシステムコール呼び出しのオーバーヘッドが発生する。

しかし、mmapを利用すると、ファイルの内容がまるでプログラム自身のメモリの一部であるかのように扱える。これにより、ファイルへのアクセスはメモリ上のアドレスへの読み書きとして行われるため、read/writeシステムコールを直接呼び出す必要がなくなる。データのコピーも、カーネルからユーザー空間への明示的なコピーではなく、OSのメモリ管理機能(ページング)によって行われるため、効率が良いとされてきた。結果として、システムコール呼び出しの回数とデータコピーの回数を削減できるため、mmapは多くのI/O集中型アプリケーションで高速なファイルアクセスを実現する手法として広く利用されてきたのだ。

ところが、近年のストレージ技術の進化、特に超高速なNVMe SSDなどの登場により、mmapのような従来の高速化手法にも限界が見え始めた。より高速なI/O、より低い遅延(レイテンシ)、そしてより多くのI/O処理を同時にこなす高いスループットが求められるようになったのだ。このような背景から、Linuxカーネルは新しい非同期I/Oインターフェースとして「io_uring」を導入した。

io_uringは、従来のI/Oインターフェースが抱えていた非効率性を根本的に解決するために設計された画期的な技術だ。その最も大きな特徴は、ユーザー空間のプログラムとカーネル空間のI/Oサブシステムとの間で、I/Oリクエストと完了イベントをやり取りするための「リングバッファ」を使用することにある。このリングバッファは、プログラムとカーネルが共有するメモリ領域に存在するため、I/Oリクエストを発行したり、完了したI/Oの結果を受け取ったりする際に、毎回システムコールを呼び出す必要がなくなる。

具体的には、プログラムは実行したい複数のI/O操作をリングバッファに「キューイング(順序立てて並べる)」する。その後、一度だけシステムコールを呼び出して、キューイングされた全てのI/O操作をカーネルにまとめて処理させるのだ。これを「バッチ処理」と呼ぶ。これにより、個々のI/O操作ごとにシステムコールを呼び出すオーバーヘッドが大幅に削減される。また、I/O処理は非同期に行われるため、プログラムはI/Oの完了を待つことなく、すぐに次の処理へと進むことができる。I/Oが完了した際には、カーネルが完了イベントをリングバッファに書き込み、プログラムは必要に応じてそのイベントをチェックする。

さらに、io_uringには「ポーリングモード」という強力な機能がある。これは、カーネルがI/O処理の完了を待つのではなく、プログラムが能動的にリングバッファを監視し、完了イベントが発生していないかをチェックしに行くモードだ。これにより、I/O完了の通知を待つことによる遅延をさらに削減し、極めて低いレイテンシでのI/O処理が可能になる。このポーリングは、CPUが常時リングバッファを監視するため、CPUリソースを消費するが、非常に高速なI/Oが求められる場面で絶大な効果を発揮する。

では、「io_uring is faster than mmap」というニュースが示唆するように、なぜio_uringはmmapよりも高速になり得るのか。mmapはシステムコールを減らし、データコピーを効率化するが、依然としてOSのメモリ管理機能に依存している。ファイルアクセスはページフォルト(要求されたメモリページが主記憶にない場合に発生するイベント)を引き起こす可能性があり、その処理にはオーバーヘッドが伴う。また、mmapが提供するのは主にファイルへのメモリベースのアクセスであり、非同期性やバッチ処理といった機能は直接的には提供されない。

一方io_uringは、システムコールを極限まで減らすバッチ処理と、カーネルへの負荷をかけずにI/O完了を検知できるポーリングモードによって、I/O処理の純粋なオーバーヘッドを劇的に削減する。また、ファイルI/Oだけでなく、ネットワークI/O、タイマー、イベント通知など、多種多様な操作を非同期かつ効率的に処理できる汎用性も持ち合わせている。これにより、アプリケーションがI/O処理でブロックされる時間を最小限に抑え、CPUをより有効活用できるようになる。特に、多数の小さなI/O操作を同時に処理する場合や、ミリ秒以下のレイテンシが要求されるような厳しい環境では、io_uringの優位性が顕著になる。

io_uringは、データベースシステム、高速Webサーバー、ネットワーク機器、高性能ストレージシステムなど、極めて高いI/O性能が求められるアプリケーションにとって、現代のI/Oアーキテクチャの基盤となりつつある。システムエンジニアを目指す上では、このような新しい技術の仕組みとそれがもたらすメリットを理解し、適切に活用する能力が求められる。io_uringは、ソフトウェアの性能を次のレベルへと引き上げる可能性を秘めた、まさに注目すべき技術なのだ。

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