【ITニュース解説】Why I Rewrote a Java Service in Go (And What Went Wrong)
2025年09月09日に「Medium」が公開したITニュース「Why I Rewrote a Java Service in Go (And What Went Wrong)」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
あるエンジニアが本番環境で稼働中のJava製サービスをGo言語で書き直す挑戦をした。しかし、計画通りにはいかず予期せぬ問題に直面。言語の書き換えに伴うリスクと、そこから得られる教訓を解説する実体験レポートだ。(115文字)
ITニュース解説
現在稼働しているシステムのプログラミング言語を、まったく別の言語で書き直すという決断は、技術的な挑戦であると同時に大きなリスクを伴う。ある開発者が、実際に運用されていたJava製のサービスをGo言語で書き換えるプロジェクトに挑み、その過程で直面した問題と得られた教訓を公開した。この事例は、システム開発における技術選定の難しさと、大規模な改修プロジェクトを進める上での注意点を具体的に示している。
このプロジェクトのきっかけとなったのは、元々Javaで開発されたメッセージングサービスの運用課題であった。このサービスは、非常に多くのユーザーからの同時接続を処理する役割を担っていたが、Javaの実行環境が消費するメモリ量が大きいという特性から、サーバーの運用コストが高くなる傾向にあった。特に、アプリケーションをコンテナという隔離された環境で動かす現代的な開発スタイルでは、メモリ消費量の多さはインスタンス数を増やす際の直接的なコスト増につながり、無視できない問題となっていた。そこで代替案として浮上したのがGo言語である。Goは、Javaと比較してメモリ使用量が少なく、軽量な並行処理機能「ゴルーチン」を持つため、多数の同時接続をより少ないリソースで効率的に捌けると期待された。さらに、Goで開発されたプログラムは、依存関係を含んだ単一の実行ファイルとして出力されるため、デプロイがシンプルになり、コンテナイメージも小さく保てるというメリットがあった。これらの技術的な利点から、Go言語への書き換えは、運用コストの削減とパフォーマンス向上を実現するための合理的な選択肢に見えた。
しかし、この書き換えプロジェクトは当初の想定通りには進まなかった。まず直面したのは、開発にかかる工数の見積もりの甘さである。既存のロジックを新しい言語に移植する作業は、単なるコードの翻訳では終わらない。新しいテストコードの作成、デプロイ手順の再構築、監視システムの設定変更など、プログラム本体以外にも膨大な付随作業が発生し、計画は大幅に遅延した。また、JavaとGoの言語仕様や文化の違いも大きな壁となった。例えば、Javaでは「例外処理」という仕組みでエラーに対応するのが一般的だが、Goではエラーを関数の戻り値として扱い、呼び出し側で都度チェックするという作法が主流である。この違いにチームが慣れるまでには時間が必要で、開発効率の低下を招いた。さらに、Javaの広大で成熟したエコシステムも、書き換えの難易度を上げる一因となった。Javaには「Spring Framework」をはじめとする、長年の実績を持つ安定したライブラリが豊富に存在する。一方でGoのエコシステムは急速に成長しているものの、Javaで利用していた特定の機能を持つライブラリが見つからなかったり、代替ライブラリの成熟度が低かったりする場面に遭遇した。これにより、一部の機能を自前で開発する必要が生じ、さらなる工数の増加につながった。
技術的な問題も発生した。Goは高性能であるという評判があるが、必ずしも全ての状況でJavaを上回るわけではない。特に、Javaの実行環境であるJVM(Java仮想マシン)は、長年の改良によって高度な最適化機能が備わっている。プログラムを長時間実行し続けるサーバーアプリケーションの場合、JVMが実行中にコードを分析し、パフォーマンスを自動で改善していくため、単純にGoで書き換えただけでは、期待したほどの性能向上が得られないどころか、特定の条件下では逆に性能が低下する可能性すらあった。チームは、こうした言語ごとの性能特性の違いを事前に深く理解していなかったため、予期せぬパフォーマンス問題の調査と解決に時間を費やすことになった。
この挑戦的なプロジェクトから得られた最も重要な教訓は、稼働中のシステムを一度に全て書き換える「ビッグバン・リライト」というアプローチの危険性である。この方法は、もし失敗した場合の影響が非常に大きく、プロジェクト全体を頓挫させるリスクをはらんでいる。より安全な代替案として、既存システムの一部分の機能を新しいシステムに少しずつ置き換えていく「ストラングラー・パターン」のような段階的な移行戦略が推奨される。また、新しい技術を採用する際は、その魅力的なメリットだけでなく、チームのスキルセット、学習コスト、エコシステムの成熟度といったデメリットやリスクも総合的に評価する必要がある。そして、「なぜ書き換えるのか」という目的を明確にし、「メモリ使用量を50%削減する」といった具体的な数値目標を設定した上で、本格的な開発に着手する前に小規模なプロトタイプで技術的な検証を行うことの重要性が示された。この事例は、単なる技術的な失敗談ではなく、将来システム開発に携わる全てのエンジニアにとって、技術選定やプロジェクト管理における貴重な指針となるだろう。