【ITニュース解説】なぜLambdaから直接他のLambdaを呼び出すのはアンチパターンなのか
2025年09月11日に「Qiita」が公開したITニュース「なぜLambdaから直接他のLambdaを呼び出すのはアンチパターンなのか」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
Lambda関数から他のLambda関数を直接呼び出すのは、一般的に「アンチパターン」とされる。この記事では、なぜ直接呼び出しが推奨されないのか、その具体的な理由と、適切な解決策について解説している。
ITニュース解説
システム開発の世界では、効率的でスケーラブルなシステムを構築することが常に求められている。近年特に注目されている技術の一つに「サーバーレスアーキテクチャ」があり、その中心的なサービスとしてAWS Lambdaが存在する。Lambdaは、プログラムコードをイベントに応じて実行するサービスであり、開発者はサーバーの管理を意識せずにアプリケーションを構築できる。これにより、インフラの運用から解放され、ビジネスロジックの実装に集中できるため、開発スピードの向上やコスト削減に大きく貢献する。
Lambda関数は非常に便利なツールだが、その利用方法によっては思わぬ落とし穴がある。「あるLambda関数の中から直接、別のLambda関数を呼び出す(インボークする)」という方法が、一般的に「アンチパターン」とされている。アンチパターンとは、一見良さそうに見えても、実際には長期的に見て問題を引き起こす可能性が高い、避けるべき設計や実装のパターンを指す。では、なぜこのような直接呼び出しがアンチパターンとされるのか、その理由を具体的に見ていこう。
まず、直接呼び出しは、呼び出し元と呼び出し先のLambda関数が強く結びついてしまう「密結合」の状態を生み出す。これにより、呼び出し先の関数に変更を加えると、呼び出し元の関数も影響を受ける可能性が高まる。結果として、システム全体の変更が困難になり、メンテナンス性が著しく低下する。
次に、複数のLambda関数が互いに呼び出し合うような構造になると、処理の流れが複雑になり、システムの全体像を把握しにくくなるという問題がある。どこで処理が始まり、どのLambdaを経由して、最終的に何が行われるのかを追跡することが難しくなり、デバッグやトラブルシューティングの際に多大な労力が必要となる。このような状態は「スパゲッティコード」ならぬ「スパゲッティLambda」とも呼ばれることがある。
Lambdaの課金は実行時間とメモリ量に基づいて行われる。直接呼び出しの場合、呼び出し元のLambda関数は、呼び出し先のLambda関数の処理が完了するまで待機することになる。この待機時間も呼び出し元の実行時間として計上され、結果的に無駄なコストが発生する可能性がある。また、エラーが発生した場合のリトライロジックも複雑になり、意図しないリトライが繰り返されることでコストが膨らむこともある。
多段でLambda関数を呼び出す場合、途中のどこかでエラーが発生すると、そのエラーを適切にハンドリングし、呼び出し元に伝える仕組みが必要になる。しかし、直接呼び出しでは、エラー処理のロジックが各Lambda関数に分散してしまい、一貫性のあるエラー処理やリトライメカニズムを実装するのが非常に難しい。結果として、部分的なエラーがシステム全体に波及し、データの一貫性が損なわれるリスクも高まる。
呼び出し先のLambdaが完了するまで呼び出し元が待つということは、全体の処理時間が長くなることを意味する。特に、複数のLambdaを順番に呼び出す必要がある場合、それぞれの起動時間や処理時間が累積され、ユーザー体験を損なうほどの遅延が発生する可能性もある。さらに、Lambdaはそれぞれが独立してスケールする特性を持つが、直接呼び出しによって密結合になると、あるLambdaの負荷が他のLambdaに影響を与え、全体のスケーラビリティが阻害される可能性も出てくる。
これらの問題を解決するために、AWSが提供する別のサービスを活用することが推奨されている。主な解決策として、Amazon SQSとAWS Step Functionsがある。
Amazon SQS(Simple Queue Service)は、メッセージキューイングサービスである。これは、処理すべきタスクを一時的に保存しておく「キュー(待ち行列)」を提供する。あるLambda関数が他のLambda関数に処理を依頼したい場合、直接呼び出す代わりに、処理内容をメッセージとしてSQSのキューに送信する。そして、別のLambda関数がそのキューからメッセージを読み取り、処理を実行する。 この方式の最大のメリットは「非同期処理」と「疎結合」の実現だ。呼び出し元のLambda関数はメッセージをキューに送信したらすぐに自身の処理を終了できるため、待機コストが発生しない。また、呼び出し元のLambdaは、呼び出し先のLambdaがどのような処理をするかを意識する必要がなく、ただメッセージをキューに送るだけで良いため、互いの結合度が大幅に低減される。エラー発生時も、メッセージはキューに残るため、リトライが容易になる。SQSには、処理できなかったメッセージを保管する「デッドレターキュー(DLQ)」の機能も備わっており、堅牢なエラーハンドリングを実現できる。これにより、システム全体の安定性が向上し、スケーラビリティも高まる。
AWS Step Functionsは、複数のAWSサービス(Lambda関数を含む)を組み合わせた複雑なワークフローを、視覚的に定義・実行・追跡できるオーケストレーションサービスである。これは、複数のLambda関数が連携して一つのビジネスプロセスを完成させるような場合に特に強力なツールとなる。 Step Functionsでは、状態遷移図(ステートマシン)を用いてワークフローを定義する。例えば、「Lambda Aを実行し、成功したらLambda Bを実行、失敗したらLambda Cを実行し、その後Lambda Dを実行する」といった複雑なロジックを容易に設計できる。 このサービスを利用することで、Lambda関数の直接呼び出しが抱えていた問題の多くが解決される。まず、ワークフローが視覚的に表現されるため、処理の流れが明確になり、複雑性が大幅に低減される。エラーハンドリングやリトライのロジックもStep Functions自体が提供するため、各Lambda関数にそのロジックを記述する必要がなくなり、コードが簡潔になる。また、Step Functionsは各Lambda関数の状態を管理し、適切なタイミングで次の処理へ進めるため、全体のパフォーマンスや信頼性も向上する。密結合の問題も、Step Functionsが仲介役となることで解消される。
Lambda関数はサーバーレスアーキテクチャの強力なツールだが、その使い方を誤ると、かえってシステムの複雑性やコストを増大させてしまう危険性がある。特に、あるLambda関数から別のLambda関数を直接呼び出すことは、結合度の高さ、複雑性の増加、コスト、エラーハンドリングの困難さといった多くの問題を引き起こすアンチパターンである。これを避けるためには、Amazon SQSによる非同期処理や、AWS Step Functionsによるワークフロー管理といった、AWSが提供する専用サービスを適切に利用することが重要だ。これらのサービスを活用することで、システムは疎結合になり、開発・運用が容易で、コスト効率も高く、そして何よりも安定したスケーラブルなものになる。システムエンジニアを目指す上では、単に技術を使うだけでなく、その技術が持つ特性を理解し、より良い設計原則に基づいてシステムを構築する視点が非常に重要であることを忘れてはならない。