【ITニュース解説】My Code Works… But I Don’t Know Why
2025年09月06日に「Dev.to」が公開したITニュース「My Code Works… But I Don’t Know Why」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
長時間デバッグしても直らなかったエラーが、原因不明のまま突然解決することがある。一行コードを消しただけで動くなど、些細な変更がきっかけになることも。このような現象は、多くの開発者が経験するプログラミング特有の課題の一つだ。
ITニュース解説
ソフトウェア開発の過程において、多くのエンジニアが一度は経験する不可解な現象がある。それは、何時間も原因究明に費やしたエラーが、ある瞬間、思いがけないきっかけで突然解消され、プログラムが正常に動作し始めるというものだ。解決した安堵感と同時に、「一体なぜ動いたのだろうか」という疑問が残り、その原因を論理的に説明できない状況に陥ることがある。これは初心者に限らず、経験豊富な開発者にとっても決して珍しいことではない。
このような「原因不明のまま問題が解決する」現象には、いくつかの技術的な背景が考えられる。最も一般的な原因の一つが「キャッシュ」の問題である。Webブラウザや開発ツール、サーバーなどは、処理速度を向上させるために、一度読み込んだコードやデータを一時的に保存している。この古いキャッシュが残り続けていると、ソースコードを正しく修正したにもかかわらず、その変更が反映されずにエラーが出続けることがある。そして、PCの再起動や、些細な設定変更によるツールの再ビルドなど、何らかの操作がきっかけでキャッシュが強制的に更新され、最新の状態が読み込まれることで、突然問題が解決したように見えるのである。次に、プログラムを実行する「環境」そのものに問題が潜んでいるケースも多い。使用しているライブラリのバージョンが古かったり、設定ファイルに誤りがあったりすると、コード自体は完璧でも正常に動作しない。開発環境を再設定したり、関連するツールを再インストールしたりすることで、環境が正常な状態に戻り、結果的にコードが動き出すことがある。
また、現代のプログラミングで頻繁に利用される「非同期処理」も、予測不能な挙動の一因となり得る。複数の処理が同時に並行して進む非同期処理では、それぞれの処理が完了するタイミングが常に一定とは限らない。このわずかなタイミングのズレが、ある時はエラーを引き起こし、またある時は偶然にも問題なく処理を通過させてしまうことがある。デバッグのために追加したログ出力のコード一行が、処理の実行タイミングを微妙に変化させ、結果としてエラーが表面化しなくなるということも起こり得る。もちろん、最も根本的でありながら見落としがちなのが、人間自身の「認知的な見落とし」である。長時間にわたって同じコードを見続けていると、注意力が散漫になり、単純なスペルミスや記号の入力ミスといったごく基本的な誤りに気づかなくなることがある。一度休憩を取ったり、別の作業に切り替えたりした後に改めてコードを見直すことで、それまで見えなかった単純なミスを発見し、修正することで問題が解決する。しかし、長時間悩んだ後では、そのたった一行の修正がなぜ全体を正常化させたのか、その因果関係をすぐには理解できないこともある。
このような「なぜか動いた」という経験をした際、それを単なる幸運として済ませてしまうのは、エンジニアとしての貴重な成長機会を逃すことになる。最も重要なのは、動いたから終わりにするのではなく、その原因を可能な限り突き止めることである。まずは、その解決策が本当に正しかったのかを検証するため、「再現性の確認」を行うべきだ。変更した箇所を元に戻し、エラーが再び発生するかどうかを試す。エラーが再発すれば、その変更点こそが問題の核心であったことが証明される。Gitのようなバージョン管理システムを利用していれば、問題が解決する直前の変更履歴を比較することで、原因究明の大きな手がかりが得られる。この原因を特定するプロセスを通じて、キャッシュの仕組みや実行環境の依存関係、非同期処理の挙動など、プログラムが動く裏側の仕組みに対する理解が深まる。エラーと向き合い、仮説を立て、検証するという論理的なデバッグの姿勢を身につけることが、エンジニアとしての問題解決能力を向上させる上で不可欠である。
結論として、「原因不明でコードが動く」という経験は、ソフトウェア開発の複雑さを示す一つの側面であり、すべての開発者が通る道である。この現象に直面したとき、そこで思考を止めずに、背後にある技術的な理由を粘り強く探求する姿勢を持つことが、システムエンジニアとして成長するための鍵となる。一つ一つの不可解な出来事を学びの機会と捉え、その根本原因を解明していく努力こそが、より堅牢で信頼性の高いシステムを構築するための確かな技術力につながるのである。