【ITニュース解説】Processing Piano Tutorial Videos in the Browser
2025年09月04日に「Hacker News」が公開したITニュース「Processing Piano Tutorial Videos in the Browser」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
Webブラウザ上でピアノのチュートリアル動画を解析・処理する技術を紹介する記事。特別なソフトウェアなしで動画を読み込み、学習を支援するシステムの開発事例を通して、ブラウザの持つ能力とWeb技術で実現できる可能性を示す。手軽にインタラクティブな学習体験を提供できる点が特徴。
ITニュース解説
このプロジェクトは、ピアノのチュートリアル動画をWebブラウザ上で解析し、動画内で演奏されている音符の情報をMIDIファイルとして抽出するという、先進的な取り組みについて解説している。システムエンジニアを目指す初心者にとって、Web技術、動画処理、機械学習という複数の分野がどのように連携し、実用的なアプリケーションとして実現されているかを理解するための良い学習材料となるだろう。
このプロジェクトの主な目的は、YouTubeなどのプラットフォームにアップロードされているピアノのチュートリアル動画から、どの鍵盤がいつ押されたかという情報を自動的に抽出し、それを標準的な音楽ファイル形式であるMIDIファイルに変換することにある。通常の動画は視覚情報と音声情報を含むが、MIDIファイルは音の高さ、長さ、強さといった演奏データそのものをデジタル情報として記録する。これにより、抽出された演奏データを楽譜作成ソフトウェアで表示したり、MIDIシーケンサーで再生したり、さらに練習のためにテンポを調整したりすることが可能になる。
このプロジェクトの特に重要な特徴は、これら一連の複雑な処理をすべてユーザーのWebブラウザ内で完結させている点だ。通常、動画の解析や機械学習モデルの実行には、高い処理能力を持つサーバーが必要だと考えられがちだが、ブラウザ内で処理を行うことにはいくつかの大きな利点がある。第一に、ユーザーのプライバシーが保護される。動画ファイルが外部のサーバーにアップロードされることがないため、個人情報や機密性の高い情報を含む可能性のある動画でも安心して利用できる。第二に、プロジェクトの運営側は大量の動画処理を行うための高価なサーバーを維持する必要がなく、その結果としてユーザーは無料でサービスを利用できる可能性が高まる。第三に、ネットワークの遅延を最小限に抑え、処理結果を素早く得られる。動画データをサーバーにアップロードして処理し、結果をダウンロードするという往復の通信が不要になるため、全体的な処理時間が大幅に短縮される。
では、具体的にブラウザ内でどのように動画が処理され、MIDIファイルが生成されるのかを段階的に見ていこう。このプロジェクトは、動画の読み込みとフレーム抽出、鍵盤の検出、鍵盤の押下判定、そしてMIDIファイルの生成という主要なステップを経て進行する。
最初のステップは、ユーザーが指定した動画の読み込みと個々のフレームの抽出だ。Webブラウザで動画を直接処理するために、「ffmpeg.wasm」という技術が利用されている。ffmpeg.wasmは、動画や音声の変換、編集、ストリーミングなどに広く使われる強力なツールであるFFMPEGを、WebAssemblyという技術を用いてブラウザ上で実行できるようにしたものだ。WebAssemblyは、C++やRustといった言語で書かれたプログラムをWebブラウザで高速に実行するための新しいバイナリ形式である。このffmpeg.wasmを使用することで、動画から一定の間隔で静止画(フレーム)を抽出し、後続の処理のためにそのフレームデータを取得することが可能になる。
次に、抽出された静止画の中からピアノの鍵盤を検出するステップに移る。ここで重要な役割を果たすのが、YOLOv8という物体検出のための機械学習モデルだ。YOLO (You Only Look Once) は、画像や動画の中から特定の物体がどこに、何であるかを高速に識別する技術で、自動運転や監視システムなどでも利用されている。このプロジェクトでは、YOLOv8を事前にピアノの白鍵と黒鍵を正確に識別できるように学習させている。これにより、動画の各フレームからピアノの鍵盤の位置と種類(白鍵か黒鍵か)を正確に特定することが可能になる。この機械学習モデルもまた、WebAssemblyの技術などを利用してブラウザ上で実行されているため、サーバーへの通信なしにリアルタイムに近い速度で物体検出が行える。
鍵盤が検出されたら、いよいよ鍵盤の押下を判定するステップだ。これは、検出された各鍵盤の領域において、時間の経過とともに色がどのように変化するかを追跡することで実現される。具体的には、鍵盤が押されると色が変化する(影ができたり、鍵盤が沈むことによって表面の色が変わったりする)という物理的な現象を利用する。このプロジェクトでは、各フレームで鍵盤領域の平均色や明るさを比較し、一定の変化が検出された場合にその鍵盤が押されたと判断する。この検出ロジックは、誤検出を減らすためにさまざまな工夫が凝らされているはずだ。例えば、単なる明るさの変化だけでなく、鍵盤のわずかな移動や形状の変化なども考慮に入れることで、より正確な押下検出を目指す。
最後に、これらの押下イベントのデータからMIDIファイルを生成する。どの鍵盤が、いつ、どれくらいの長さ押されたかという情報が集まると、それをMIDIノートイベントとして変換できる。MIDIノートイベントは、ノートオン(鍵盤が押された)、ノートオフ(鍵盤が離された)という基本的な情報と、その間の時間、そしてどの音(MIDIノート番号)が鳴らされているか、どれくらいの速さ(ベロシティ)で押されたかといった情報で構成される。これらのイベントを時系列に沿って並べ、最終的に標準的なMIDIファイル形式で出力する。
このような複雑で処理負荷の高いタスクをブラウザで実行する際、ユーザーインターフェース(UI)がフリーズしてしまうという問題が起きがちだ。これは、JavaScriptの実行が基本的に単一のスレッドで行われるため、重い計算が実行されている間はUIの描画が停止してしまうためである。この問題を解決するために、このプロジェクトではWeb Workersという技術が活用されている。Web Workersは、JavaScriptのメインスレッドとは別に、バックグラウンドでスクリプトを実行できるようにする機能だ。これにより、動画のエンコードや機械学習モデルの推論といった時間のかかる処理をWeb Workerに任せることで、メインスレッドはUIの更新やユーザーからの入力処理に専念でき、結果としてスムーズで快適なユーザー体験が提供される。
まとめると、このプロジェクトは、WebAssembly、Web Workers、機械学習といった最新のWeb技術を組み合わせることで、これまでサーバーサイドでしか実現が困難だと考えられていた高度な動画解析処理をWebブラウザ上で実現している。これは、システムエンジニアを目指す初心者にとって、フロントエンド技術の可能性を広げ、ユーザー体験を根本から向上させるための具体的なアプローチを示す非常に良い例となるだろう。これらの技術を学ぶことは、皆さんが将来的にWebアプリケーションの可能性をさらに広げる革新的なサービスを開発する力を身につける上で、大いに役立つはずだ。