【ITニュース解説】Why Programming Is Only 10% of Software Engineering

ソフトウェアエンジニアリングにおいてプログラミングが占める割合は、記事のタイトルが示すように、わずか10%に過ぎないという主張は、システムエンジニアを目指す初心者にとって非常に重要な視点を提供する。多くの初心者は、コードを書くこと、つまりプログラミングそのものがソフトウェア開発の全てだと考えがちだが、実際には、その背後にあるより広範な「エンジニアリング」の側面が、プロジェクトの成功を大きく左右する。

プログラミングは、コンピューターに指示を与えるための言語を操る技術だ。これは、要求された機能を実装するための重要な手段であることは間違いない。しかし、実際にソフトウェアを開発し、運用していく過程では、コードを書く以外の様々な作業が発生する。

例えば、要件定義がある。これは、顧客やユーザーがソフトウェアに何を求めているのかを明確に定義するプロセスだ。どのような機能が必要なのか、どのような問題を解決したいのか、どのような制約があるのかなどを詳細に洗い出す必要がある。この段階が曖昧だと、開発の途中で仕様変更が頻発し、プロジェクトの遅延や失敗につながる可能性が高まる。システムエンジニアは、顧客との対話を通じて、潜在的なニーズを掘り起こし、それを具体的な要件として文書化する能力が求められる。

次に、設計がある。要件定義で明確になった内容を基に、ソフトウェア全体の構造や各コンポーネントの役割、データの流れなどを設計する。この設計段階で、システムのパフォーマンス、拡張性、保守性などが考慮される。例えば、大規模なシステムであれば、負荷分散や冗長化の設計が必要になるし、将来的な機能追加を見越した柔軟な設計も重要になる。設計が不十分だと、後々システムの修正が困難になり、運用コストが増大する。

そして、テストも非常に重要な工程だ。作成したコードが仕様通りに動作するか、バグがないかなどを検証する。単体テスト、結合テスト、システムテストなど、様々な種類のテストを段階的に実施することで、品質の高いソフトウェアを開発することができる。テストを疎かにすると、リリース後に重大な問題が発生し、ユーザーからの信頼を失うことになる。

さらに、デプロイメントも重要な作業だ。開発したソフトウェアを実際に運用環境に配置し、ユーザーが利用できるようにする。この過程では、サーバーの構築、ネットワークの設定、データベースの移行など、様々な作業が必要になる。デプロイメントがスムーズに行われないと、システムの停止時間が発生し、ビジネスに影響を与える可能性がある。

また、保守・運用もソフトウェア開発の重要な一部だ。リリース後も、システムの監視、バグ修正、パフォーマンス改善など、継続的な作業が必要になる。システムエンジニアは、運用状況を分析し、問題が発生した際には迅速に対応する能力が求められる。

これらの作業は、プログラミングスキルだけでは対応できない。プロジェクト全体を俯瞰する視点、コミュニケーション能力、問題解決能力、そして何よりも、ソフトウェアを「作る」というよりも「創り上げる」というエンジニアリングの意識が重要になる。

記事が参照しているように、過去の事例（数十億ドルの損失を出した取引システムの誤作動や航空事故など）は、単なるコーディングミスだけでなく、設計の不備やテストの不足など、エンジニアリングの欠如が原因であることが多い。これらの事例は、ソフトウェアエンジニアリングが単なるプログラミングの集合体ではなく、リスクを管理し、信頼性の高いシステムを構築するための総合的な学問であることを示している。

システムエンジニアを目指す初心者は、プログラミングスキルを磨くことはもちろん重要だが、それと同時に、要件定義、設計、テスト、デプロイメント、保守・運用といった、ソフトウェア開発のライフサイクル全体を理解し、それぞれの工程でどのような役割を果たすのかを学ぶ必要がある。そして、常に「なぜそれが必要なのか」「どのようにすればより良いシステムになるのか」という視点を持ち続けることが、優秀なシステムエンジニアへの第一歩となるだろう。プログラミングはあくまで手段であり、目的は「動くソフトウェア」ではなく「価値のあるソフトウェア」を創造することだと理解する必要がある。