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【ITニュース解説】Show HN: A PSX/DOS style 3D game written in Rust with a custom software renderer

2025年09月17日に「Hacker News」が公開したITニュース「Show HN: A PSX/DOS style 3D game written in Rust with a custom software renderer」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

Rust言語で、PS1やDOS時代のレトロな雰囲気を持つ3Dゲームが開発された。画像を生成する独自のソフトウェアレンダラーを実装し、PCで動作する。

ITニュース解説

今回のニュースは、「Rustというプログラミング言語で、PlayStation 1(PSX)やMS-DOS時代のパソコンゲームのような雰囲気を持つ3Dゲームが、カスタムのソフトウェアレンダラーを使って作られた」という内容だ。このゲームは「A Scavenging Trip」というタイトルで、個人開発者によって制作され、Hacker Newsという技術コミュニティで発表された。システムエンジニアを目指す皆さんにとって、このプロジェクトは技術的な深さと学習の機会に満ちているため、詳しく見ていこう。

まず、「PSX/DOSスタイル」とは何か。これは、今から20年以上前のゲーム機やパソコンのグラフィック表現を意図的に再現したスタイルのことだ。具体的には、3Dモデルのポリゴン数が少なく、テクスチャ(物体の表面に貼る画像)の解像度が低い、色数が限られている、といった特徴がある。これにより、どこか懐かしく、しかし独特の雰囲気を持つグラフィックが生まれる。現在のゲームが写真のようにリアルなグラフィックを目指す中で、あえて古いスタイルを選ぶのは、そのレトロな美学を追求したり、限られたリソースで開発したりする面白さがあるからだ。このゲームも、不気味な廃墟を探索するような雰囲気を、このレトロなグラフィックで見事に表現している。

次に、このゲームが「Rust」というプログラミング言語で書かれている点に注目しよう。Rustは、近年注目度が高まっているシステムプログラミング言語だ。システムプログラミング言語とは、オペレーティングシステムや組み込みシステム、ゲームエンジンなど、コンピュータの基本的な部分を制御するソフトウェアの開発に使われる言語を指す。Rustの大きな特徴は、メモリ安全性を保証しながらも、C++のような高いパフォーマンスを発揮できることだ。メモリ安全性とは、プログラムがコンピュータのメモリを誤って操作し、バグやセキュリティ上の脆弱性を引き起こすことを防ぐ仕組みを指す。また、Rustは並行処理(複数の処理を同時に実行すること)の記述にも優れており、最新のマルチコアCPUの性能を最大限に引き出すことができる。このような特性から、Rustは高性能が求められるゲーム開発においても有力な選択肢となりつつあるのだ。

そして、このゲームの最も技術的に興味深い点は、「カスタムソフトウェアレンダラー」を使用していることだろう。一般的な3Dゲームは、GPU(Graphics Processing Unit、グラフィックボードの中にある計算装置)という専用のハードウェアを使ってグラフィックを描画している。GPUは3Dグラフィックの計算に特化しているため、非常に高速にリアルタイム描画が可能だ。しかし、このゲームではあえてGPUを使わず、CPU(中央演算処理装置)がすべてのグラフィック計算を行う「ソフトウェアレンダラー」を自作している。

ソフトウェアレンダラーがどのようにして3Dグラフィックを描画するのか、基本的な仕組みを説明しよう。コンピュータの中で3Dの物体は、まず三角形の集合体である「ポリゴン」で表現される。これらのポリゴンは、それぞれが空間上の位置情報を持っている。次に、カメラの位置から見たときにどのポリゴンが画面に表示されるかを計算し、見えないポリゴンを排除する「カリング」という処理が行われる。その後、画面に表示されるポリゴンに対して、その表面の色や模様を決定する「テクスチャマッピング」が行われる。

ここからがソフトウェアレンダラーの核心的な部分だが、CPUはこれらのポリゴンを、画面上のどのピクセル(点)にどんな色で描画すべきかを一つ一つ計算していく。この過程を「ラスタライズ」と呼ぶ。例えば、三角形のポリゴンが画面上のどこに表示されるかを計算し、その三角形の中にあるすべてのピクセルに対して、色、テクスチャの色、光の当たり具合などを考慮して最終的な色を決定する。また、複数の物体が重なり合う場合、どちらが手前にあるかを判断するために「深度バッファ」という情報を使う。深度バッファは、各ピクセルがどのくらいの深さにあるかを記録するもので、これにより奥にある物体が手前の物体に隠れるように描画される。ソフトウェアレンダラーでは、これらの計算をすべてCPUが行うため、非常に多くの計算が必要となる。

なぜ、あえて手間のかかるソフトウェアレンダラーを自作するのか。まず、グラフィック描画の仕組みを根本から理解し、制御したいという技術的な探求心がある。GPUに処理を任せるのではなく、自らの手でピクセル一つ一つの色を決定するプロセスを実装することで、3Dグラフィックの基礎を深く学ぶことができる。また、PSX/DOSのようなレトロなグラフィックを正確に再現するためには、現在のGPUの機能を使うよりも、意図的に古い時代の描画方法を模倣できるソフトウェアレンダラーの方が都合が良い場合もある。例えば、PSX時代のゲームでよく見られた、ポリゴンが小刻みに震えるような描画の不正確さも、ソフトウェアレンダラーでなら意図的に再現できるのだ。

もちろん、CPUだけで複雑な3Dグラフィックを描画するにはパフォーマンスが課題となる。このゲームの作者は、Rustの得意な「並行処理」を活用することで、この問題を解決しようとしている。CPUには複数のコア(処理を行う部分)があるが、レンダリング処理を複数のコアに分散させることで、計算を高速化しているのだ。例えば、画面をいくつかの領域に分割し、それぞれの領域の描画を異なるCPUコアに担当させることで、全体の処理時間を短縮できる。これはシステムエンジニアが大規模なデータを扱う際や、リアルタイム性が求められるシステムを構築する際にも活用する、重要な技術だ。

この「A Scavenging Trip」というプロジェクトは、システムエンジニアを目指す皆さんにとって多くの示唆を与えてくれる。まず、最先端の技術だけでなく、その基礎となる低レベルな技術への深い理解が、新しいものを生み出す上でいかに重要かを示している。また、高性能で安全なシステムを構築するためにRustのような新しい言語を学ぶ価値、そして、複雑な問題を解決するために並行処理のような技術をどのように応用するかを具体的に見せてくれる。自分で一から何かを作り上げる経験は、既存のツールを使うだけでは得られない深い洞察と、問題解決能力を養ってくれるだろう。このゲームは、単なるエンターテイメントだけでなく、技術的な好奇心と学習意欲を刺激する、優れた教材でもあるのだ。

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