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【ITニュース解説】How Ruby executes JIT code

2025年09月10日に「Hacker News」が公開したITニュース「How Ruby executes JIT code」について初心者にもわかりやすく解説しています。

作成日: 更新日:

ITニュース概要

Rubyがコードを高速に実行するJIT(Just-In-Time)コードの仕組みを解説。プログラムを動かす裏側で、JITコードがどのように処理され、Rubyの性能向上に貢献しているか、その詳細なメカニズムを説明する。

出典: How Ruby executes JIT code | Hacker News公開日:

ITニュース解説

Rubyは、私たちが書いたプログラムコードを直接コンピュータが理解できる機械語に変換して実行するのではなく、通常は「インタプリタ」と呼ばれる仕組みを通じてコードを実行する。インタプリタは、プログラムを逐次的に読み込み、それを「バイトコード」という中間形式に変換した後、「仮想マシン(VM)」がそのバイトコードを解釈して実行するという流れが一般的だ。この方式は柔軟性が高く、異なる環境でも同じコードが動作するという利点がある一方で、コンピュータが直接実行できる機械語に比べて処理に時間がかかる場合がある。

そこで、プログラムの実行速度を向上させるために採用されている技術の一つが「Just-In-Time(JIT)コンパイル」である。JITコンパイルとは、プログラムの実行中に、頻繁に利用される部分のコードをリアルタイムで機械語に変換し、実行する仕組みを指す。文字通り、「ちょうどその時」にコンパイルを行うことで、インタプリタがバイトコードを解釈するオーバーヘッドを削減し、高速な実行を可能にするのだ。

Rubyは、バージョン2.6からMJIT(Modular Just-In-Time compiler)と呼ばれるJITコンパイラを導入し、この高速化の恩恵を受けることができるようになった。MJITは、Rubyのプログラムが実行される過程で、仮想マシンが実行するバイトコードの中から、特に頻繁に実行される部分、いわゆる「ホットスポット」を識別する。これは、ループ処理の本体や、何度も繰り返し呼び出されるメソッドなどが該当することが多い。

MJITの具体的な実行プロセスを見ていこう。Rubyの仮想マシンはプログラムを実行中に、特定のバイトコードが一定回数以上実行されたり、特定の条件を満たしたりした場合に、そのバイトコードをJITコンパイルの対象としてマークする。そして、MJITコンパイラは、このマークされたバイトコードを受け取り、それをC言語のソースコードへと変換する。このC言語コードは、元のRubyのバイトコードが持つロジックを忠実に再現するように記述される。

次に、MJITはシステムにインストールされている標準的なCコンパイラ(例えばGCCやClangなど)を呼び出し、生成されたC言語コードを実際の機械語へとコンパイルする。このコンパイル処理は、プログラムの実行中にバックグラウンドで行われるため、ユーザーは意識することなく高速化の恩恵を受けられる。コンパイルが完了すると、生成された機械語のコードはメモリ上に動的にロードされ、仮想マシンが管理する領域に配置される。

以降、仮想マシンがJITコンパイルされたコードのホットスポットに到達した際、元のバイトコードを解釈して実行するのではなく、メモリ上にロードされた機械語のコードを直接呼び出して実行する。これにより、バイトコードの解釈というステップがスキップされ、CPUが直接理解できる命令で処理が進むため、実行速度が大幅に向上する。特に、長時間の実行が予想されるアプリケーションや、データ処理などで繰り返し同じロジックが実行されるような場面で、JITの効果は顕著に現れる。

JITコンパイラは、単にバイトコードを機械語に変換するだけでなく、より効率的な機械語を生成するための最適化も行う。例えば、特定の変数の型が常に同じであることが判明した場合、その型に特化した高速な処理を生成するといった、実行時ならではの情報を活用した最適化が可能になる。しかし、JITコンパイル自体には時間とCPUリソースを要するため、全てのコードをコンパイルするわけではない。プログラムの起動時にはまだJITコンパイルが行われていないため、初期起動がわずかに遅くなることもある。また、コンパイルされた機械語をメモリ上に保持するため、全体のメモリ使用量が増加するという側面もある。

さらに、JITコンパイルされたコードは、元のRubyプログラムの状態と常に整合性を保つ必要がある。もしプログラムの実行中に、JITコンパイル時に仮定されていた条件(例えば変数の型など)が変化した場合、コンパイル済みコードが無効化され、再びインタプリタによるバイトコードの実行に戻るか、あるいは再コンパイルされるといったメカニズムが働く。これにより、JITコンパイルによる速度向上と、Rubyの持つ動的な特性との両立が図られているのだ。

このように、RubyのJITコンパイルは、プログラムの実行中に頻繁に実行される部分をリアルタイムで機械語に変換し、それによってインタプリタのオーバーヘッドを削減し、全体のパフォーマンスを向上させる仕組みである。システムエンジニアにとって、この技術はアプリケーションの応答性向上やリソース効率化に貢献する重要な要素であり、その内部メカニズムを理解することは、より高性能なシステムを構築するための第一歩となるだろう。

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