gcc(ジーシーシー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

gcc(ジーシーシー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

ジーシーシー (ジーシーシー)

英語表記

gcc (ジーシーシー)

用語解説

gccは、GNU Compiler Collectionの略称であり、C言語やC++言語をはじめとする多様なプログラミング言語のソースコードを、コンピュータが直接実行できるプログラム(実行ファイル)に変換するコンパイラ群である。コンパイラとは、人間が記述した高級言語のプログラムを、コンピュータが理解可能な機械語に翻訳するソフトウェアのことだ。特にLinuxやUNIX系のオペレーティングシステムにおいて、gccは事実上の標準コンパイラとして広く利用されており、システムエンジニアを目指す上でその機能と使い方を理解することは基礎知識となる。当初はC言語専用として開発されたが、現在ではC++、Objective-C、Fortran、Ada、Goなど、多くの言語に対応している。gccはオープンソースプロジェクトであり、無償で利用でき、ソースコードも公開されている。このオープンな性質が、Linuxカーネルをはじめとする膨大な数のオープンソースソフトウェアの開発を支え、現代のソフトウェア産業において不可欠なツールとしての地位を確立している。

gccがソースコードを実行ファイルに変換するプロセスは、通常、四つの段階を経て行われる。第一に「プリプロセス(前処理)」である。これは、ヘッダーファイルの読み込みやマクロの展開といった、コンパイル前の準備処理だ。第二に「コンパイル(狭義)」である。プリプロセス後のソースコードが、ターゲットとするCPUのアセンブリ言語のコードに変換される。この段階で文法や構造が解析され、エラーが検出される場合がある。第三に「アセンブル」である。アセンブリ言語のコードが、機械語の命令列に変換され、「オブジェクトファイル」(.oなどの拡張子を持つ中間ファイル)として出力される。オブジェクトファイルは単独で実行できない中間ファイルだ。第四に「リンク」である。最後に、生成された一つまたは複数のオブジェクトファイルと、プログラムが利用する外部のライブラリが結合され、最終的な「実行ファイル」が生成される。このリンクの段階で、各ファイル間の参照関係が解決され、プログラム全体として機能するようになる。

gccの基本的な使い方は、コマンドラインからgcc [ソースファイル名] -o [実行ファイル名]の形式で実行することだ。例えば、sample.cからmyprogという実行ファイルを生成するには、gcc sample.c -o myprogと入力する。-oオプションは生成される実行ファイル名を指定するもので、省略するとデフォルトでa.outが生成される。

複数のソースファイルで構成されるプログラムの場合、gcc main.c func.c -o myprogramのように一度に指定することも可能だが、大規模プロジェクトでは、各ソースファイルを個別にオブジェクトファイルにコンパイルし、最後にそれらをまとめてリンクする方法が効率的だ。これは、gcc -c main.cgcc -c func.cのように-cオプションでオブジェクトファイルを生成し、その後gcc main.o func.o -o myprogramのようにリンクすることで実現できる。この方法の利点は、一部のファイルに変更があった場合、そのファイルだけを再コンパイルすればよいため、全体のビルド時間を短縮できる点にある。

プログラム開発を効率化し、品質を向上させるためのオプションも多数提供されている。-Wallオプションは、コンパイル時に可能な限り多くの警告メッセージを表示させ、潜在的なバグの発見やコードの改善に役立つため、常に使用することが推奨される。また、生成される実行ファイルの性能を最適化するための-Oオプション(例: -O2, -O3)も重要だ。これにより、実行速度の向上やファイルサイズの削減が期待できる。外部ライブラリを使用する際には、-Lオプションでライブラリの検索パスを指定し、-lオプションでリンクしたいライブラリの名前を指定する。

gccは、開発環境とは異なるCPUアーキテクチャやOS向けの実行ファイルを生成する「クロスコンパイル」機能も持っており、組み込みシステム開発などで活用されている。フリーソフトウェア運動の中核をなすプロジェクトの一つとして、gccは今日のソフトウェア開発環境において不可欠な基盤技術であり続けている。システムエンジニアとして、gccの基本的な動作原理とコマンド操作を習得することは、効率的な開発作業を行う上で極めて重要なスキルだ。

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