【ITニュース解説】Debugging Rustler on Illumos
2025年09月02日に「Hacker News」が公開したITニュース「Debugging Rustler on Illumos」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
Erlang VM上で動作するRustで記述されたネイティブ拡張機能「Rustler」のデバッグ方法を解説。Illumos環境におけるGDBとLLDBを使ったデバッグ手順、シンボル解決の問題、コアダンプの生成と分析について説明する。RustとErlangの連携部分のトラブルシューティングに役立つ情報を提供。
ITニュース解説
この記事は、Erlangの拡張機能をRustで記述するためのライブラリであるRustlerを、Illumosというオペレーティングシステム上でデバッグする方法について解説している。Rustlerを使うことで、Erlangの持つ並行処理能力と、Rustの持つ安全性とパフォーマンスを組み合わせることができる。しかし、Rustlerで書かれたコードに問題が発生した場合、それをIllumos上で効率的にデバッグするには、いくつかの特別な手順が必要になる。
まず、基本的な背景として、ErlangはBEAMと呼ばれる仮想マシン上で動作する。Rustlerは、Rustで書かれたコードをコンパイルし、それをBEAM上で動作するネイティブなライブラリとしてロードする。このとき、RustのコードはErlangのプロセスとは別のプロセス空間で実行されるため、通常のErlangのデバッガだけではRust側の問題を直接追跡することが難しい。
記事では、この問題を解決するために、gdbというデバッガを使用する方法を紹介している。gdbは、CやC++などのネイティブコードをデバッグするための強力なツールであり、Rustでも利用できる。しかし、Rustlerで書かれたコードをgdbでデバッグするには、いくつか注意すべき点がある。
特に重要なのは、Rustのコードがどのようにコンパイルされ、BEAMにロードされるかを理解することだ。Rustlerは、Rustのコードをダイナミックリンクライブラリ(.soファイルなど)としてコンパイルする。このライブラリは、Erlangのプロセスが起動した後に、erlang:load_nif/2関数などを使ってロードされる。
したがって、gdbでデバッグを開始するタイミングは、このライブラリがロードされた後でなければならない。記事では、このタイミングを正確に把握するために、Erlangのコードにブレークポイントを設定し、ライブラリがロードされた直後にgdbをアタッチする方法を示している。
具体的には、以下の手順が考えられる。
- Erlangのコードで、Rustlerのライブラリをロードする部分に、
erlang:halt/1などの関数を一時的に追加して、プログラムを停止させる。 - プログラムを実行し、停止した時点で、gdbをBEAMのプロセスにアタッチする。BEAMのプロセスIDは、
erlang:ports/0などの関数で確認できる。 - gdbの中で、Rustlerのライブラリのソースコードに対してブレークポイントを設定する。
- プログラムを再開し、ブレークポイントに到達したら、gdbを使って変数の値を確認したり、ステップ実行したりすることで、問題の原因を特定する。
また、記事では、Illumos上でgdbを使用する際の注意点についても触れている。Illumosは、Solarisから派生したオペレーティングシステムであり、Linuxとは異なるアーキテクチャを持っている部分がある。そのため、gdbの設定や使い方に、Linuxとは異なる点があるかもしれない。たとえば、シンボルファイルの場所や、共有ライブラリのロード方法などが異なる場合がある。
さらに、Rustの最適化機能がデバッグを困難にする場合もある。Rustコンパイラは、パフォーマンスを向上させるために、コードを大幅に最適化することがある。その結果、デバッグ時に表示されるコードと、実際に実行されているコードが異なる場合がある。このような場合は、最適化を無効にしてコンパイルすることで、デバッグしやすくなることがある。Rustでは、cargo build --releaseの代わりにcargo buildコマンドを使用することで、最適化を抑制できる。
加えて、Rustのエラーメッセージを理解することも重要だ。Rustコンパイラは、非常に詳細なエラーメッセージを表示することで知られている。これらのエラーメッセージを注意深く読むことで、コンパイルエラーだけでなく、潜在的なバグの原因を特定できる場合がある。特に、borrow checkerと呼ばれる機能が生成するエラーメッセージは、Rustのメモリ安全性を理解する上で非常に重要だ。
最後に、記事では触れられていないが、Rustのデバッグには、println!マクロを使ってログを出力する方法も有効だ。println!マクロは、Rustの標準出力に文字列を出力する。このマクロを使うことで、プログラムの実行中に変数の値を確認したり、特定のコードが実行されたかどうかを確認したりすることができる。ただし、println!マクロは、パフォーマンスに影響を与える可能性があるため、デバッグが終わったら削除することを推奨する。
このように、Rustlerで書かれたコードをIllumos上でデバッグするには、Erlang、Rust、gdb、そしてIllumosの知識が必要となる。しかし、これらのツールを使いこなすことで、Erlangの柔軟性とRustの安全性を最大限に活用したシステムを開発することができる。