アーラン(アーラン)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
アーラン(アーラン)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
アーラン (アーラン)
英語表記
Erlang (エルラング)
用語解説
アーランは、通信工学、特に電話網の設計やトラヒック理論において用いられる、呼量(こりょう)を表す単位である。デンマークの数学者アグナー・アーランの名前に由来する。具体的には、ある一定時間内に通信回線や交換機などの設備が、平均してどの程度使用されているかを示す指標として機能する。例えば、1アーランとは、1本の回線が観測時間中に完全にふさがっている状態、つまり100%使用されている状態を指す。システムエンジニア、特に通信インフラやコールセンターシステムの設計に携わる者にとって、アーランは非常に重要な概念である。なぜなら、提供するサービスの品質と、そのために必要な設備投資のバランスを定量的に評価するための基礎となるからだ。適切な回線数やオペレーター数を算出するために、アーランを用いた計算は不可欠とされる。
アーランの概念をより深く理解するためには、その計算方法と関連する理論を知る必要がある。1アーランは、1つの通信チャネル(回線)が1時間にわたって継続的に使用された場合のトラヒック量に相当する。これは、30分の通話が2回、あるいは15分の通話が4回行われた場合も同様に1アーランとなる。つまり、呼量(アーラン)は「呼の発生回数(呼数)」と「1呼あたりの平均保留時間(通話時間)」の積を、観測時間で割ることで算出される。この計算により、特定の時間帯における回線全体の平均的な占有率を数値化できる。
このアーランという単位を用いてシステムの設計を行う際に、中心的な役割を果たすのが「アーランB式」と「アーランC式」である。これらは待ち行列理論に基づく計算式であり、それぞれ異なる状況をモデル化している。
まず、アーランB式は、回線が全て使用中(ビジー状態)の場合に、後からかかってきた呼が接続できずに失われる(ブロックされる)システムを想定している。このようなシステムは「即時式」と呼ばれ、古典的な電話網がその代表例である。アーランB式を用いることで、特定の呼量(Aアーラン)が予測されるシステムにおいて、N本の回線を用意したときに、呼がブロックされる確率、すなわち「呼損率(こそんりつ)」を計算することができる。システム設計者は、目標とするサービス品質、例えば「呼損率を1%未満に抑える」といった要件を満たすために、最低限何本の回線が必要になるかを、この式を使って決定する。これにより、過剰な設備投資を避けつつ、利用者が「つながらない」と感じる機会を最小限に抑えることが可能となる。
一方、アーランC式は、回線が全て使用中の場合に、後から来た呼が失われるのではなく、空きが出るまで待たされるシステムを想定している。これは「待時式」と呼ばれ、コールセンターの問い合わせ窓口が典型的なモデルである。オペレーターが全員応対中の場合、顧客は待たされることになる。アーランC式は、特定の呼量とオペレーター(サーバー)数に対して、呼が待たされる確率や平均待ち時間を算出するために用いられる。コールセンターの設計者は、この式を利用して、「顧客の平均待ち時間を30秒以内にする」といったサービスレベルアグリーメント(SLA)を達成するために必要なオペレーター数を決定する。アーランB式が「あふれた呼をどうするか」という観点で損失を計算するのに対し、アーランC式は「待たせることによるサービス品質の低下」を評価する点で異なっている。
アーランの概念とその計算式は、電話網の設計という古典的な領域から発展してきたが、その応用範囲は現代のITシステム全般に及んでいる。例えば、Webサーバーが同時に処理できるセッション数、ネットワーク機器が処理できるパケット量、データベースサーバーの同時接続数といった、有限なリソースのサイジングに応用される。また、クラウドコンピューティングにおける仮想マシンのリソース割り当てや、ストリーミングサービスの帯域確保など、ユーザーの要求が不規則に発生する多くのシステムにおいて、リソースを効率的に配分し、安定したサービスを提供するための理論的基盤となっている。システムエンジニアを目指す者は、このアーランという概念を理解することで、単に機器を接続するだけでなく、利用者の数や利用状況を予測し、コストとパフォーマンスのバランスを考慮した、より高度なシステム設計を行う能力を身につけることができる。