【ITニュース解説】Test Frontend Changes with Browser (Using Chromium Overrides)
2025年09月09日に「Dev.to」が公開したITニュース「Test Frontend Changes with Browser (Using Chromium Overrides)」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
Chromeなどの開発者ツールにある「Overrides」機能を使えば、APIの応答をローカルで自由に変更できる。バックエンドの修正を待たずに、エラー発生時など様々なパターンの画面表示をフロントエンドだけで手軽にテスト可能だ。
ITニュース解説
Webアプリケーションは、ユーザーが直接操作する画面部分である「フロントエンド」と、データの処理や保存を行う裏側の仕組みである「バックエンド」が連携して動作している。フロントエンドはバックエンドに対して「このデータが欲しい」という要求(リクエスト)を送り、バックエンドはそれに応じたデータ(レスポンス)を返す。この一連の通信をAPIと呼ぶ。システム開発の現場では、フロントエンドとバックエンドを別のチームが分担して開発することが多い。この分業体制は効率的だが、時としてフロントエンド開発の進行を妨げる要因にもなり得る。例えば、フロントエンド開発者が特定の条件下での画面表示をテストしたい場合を考える。具体的には、APIからエラーが返された時にエラーメッセージが正しく表示されるか、あるいは、まだバックエンドで実装されていない新機能のデータを受け取った場合に画面がどう変化するかを確認したいといったケースだ。従来、このようなテストを行うには、バックエンドチームに依頼して一時的にAPIの応答内容を変更してもらうか、あるいはフロントエンド開発者自身が「モックサーバー」と呼ばれるテスト用の偽のサーバーを構築する必要があった。しかし、前者は他チームとの調整に時間がかかり、後者は準備に手間がかかるため、どちらも開発の速度を低下させる原因となっていた。
この問題を解決する強力な機能が、Google ChromeやMicrosoft EdgeといったChromiumベースのブラウザに標準で搭載されている「開発者ツール」の中に存在する。それが「ネットワークオーバーライド(Network Overrides)」機能だ。この機能を使うと、バックエンドのサーバーに一切変更を加えることなく、フロントエンド開発者の手元にあるブラウザだけで、サーバーからのAPIレスポンスを自由自在に書き換えることができる。つまり、ブラウザが受け取ったサーバーからの応答を、あらかじめ用意しておいた別の内容に「上書き」することで、あたかもサーバーがそのデータを返してきたかのようにフロントエンドのアプリケーションを動作させられるのだ。これにより、バックエンドチームの作業を待つ必要がなくなり、フロントエンド開発者は自身のタイミングで様々なパターンのテストを迅速に行うことが可能になる。
ネットワークオーバーライド機能の利用は非常に簡単だ。まず、Webページ上で右クリックし「検証」を選択するか、F12キーを押して開発者ツールを開く。次に、上部にあるタブの中から「Sources」パネルを選択する。パネルの左側にあるメニューから「Overrides」タブを見つけ、クリックする。初めて使用する際には、上書きしたレスポンスを保存するためのローカルフォルダを指定するよう求められるので、任意の空のフォルダを選択し、ブラウザからのアクセスを許可する。これで準備は完了だ。次に、書き換えたいAPIレスポンスを取得する。開発者ツールの「Network」パネルに切り替え、ページを再読み込みすると、そのページが表示されるまでに行われた全ての通信が一覧で表示される。その中から、内容を変更したいAPIリクエストを探し出し、右クリックして「Save for overrides」を選択する。この操作により、そのリクエストに対するサーバーからの実際のレスポンス内容が、先ほど指定したローカルフォルダ内にファイルとして自動的に保存される。あとは、保存されたファイルをテキストエディタなどで開き、内容を好きなように編集するだけだ。例えば、機能の有効化を制御する "featureEnabled": false というJSONデータを "featureEnabled": true に書き換える。編集を保存した後、Webページを再度読み込むと、アプリケーションはサーバーからの本来の応答ではなく、ローカルに保存・編集したファイルの内容をレスポンスとして受け取る。これにより、バックエンドのコードを一切触ることなく、新機能が有効になった場合の画面表示を即座に確認できる。テストが終われば、「Overrides」パネルの上部にある「Enable Local Overrides」のチェックを外すだけで、いつでも通常の通信状態に戻すことができる。
この機能の応用範囲は広い。例えば、エラー発生時の動作テストも簡単に行える。APIが正常にデータを返した場合、通信の状態を示すステータスコードは通常「200 OK」となる。これを意図的にサーバーエラーを示す「500 Internal Server Error」などに変更したい場合、まずローカルに保存したレスポンスファイルの中身を { "error": "Internal Server Error" } のようなエラーメッセージに書き換える。さらに、レスポンスヘッダー情報も編集し、ステータスコードを200から500に変更すれば、アプリケーションにサーバーエラーが発生した状況を擬似的に作り出し、エラーハンドリングが正しく機能するかを検証できる。また、サーバーからの応答が極端に遅い、あるいは返ってこない「タイムアウト」の状況をテストすることも可能だ。「Network」パネルで対象のリクエストを右クリックし、「Block request URL」を選択すると、そのリクエストはサーバーに届かなくなり、フロントエンドは応答を待ち続ける状態になる。これを利用して、データ取得中に表示するローディングアニメーションや、一定時間応答がない場合に再試行する処理が正しく動作するかなどを確認できる。
このように、ネットワークオーバーライド機能は、フロントエンド開発者がバックエンドの制約から解放され、自律的かつ効率的に開発とテストを進めるための強力な武器となる。これまでバックエンドチームとの調整やモックサーバーの構築に費やしていた時間を大幅に削減し、開発プロセス全体のスピードアップに貢献する。システムエンジニアを目指す初心者にとっても、API通信の裏側でどのようなデータがやり取りされているのかを具体的に視覚化し、その内容を自分で操作してアプリケーションの挙動の変化を直接確認できるため、Webアプリケーションの仕組みを深く理解するための絶好の学習ツールとなるだろう。