【ITニュース解説】twitter / the-algorithm
2025年09月12日に「GitHub Trending」が公開したITニュース「twitter / the-algorithm」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
X(旧Twitter)が、おすすめタイムラインに表示される投稿を決めるアルゴリズムのソースコードを公開。これにより、投稿がどのようにユーザーへ推奨されるかの具体的な仕組みが明らかになった。エンジニアにとって貴重な学習機会となる。
ITニュース解説
ソーシャルメディアプラットフォームX(旧Twitter)は、ユーザーのタイムラインに表示される「おすすめ」ツイートを選び出すためのアルゴリズムのソースコードを公開した。このコードは、世界最大級のソーシャルメディアがどのようにして各ユーザーにパーソナライズされた情報を提供しているのか、その内部構造を理解するための貴重な資料である。システムエンジニアを目指す者にとって、これは大規模な推薦システムが実際にどのように構築され、運用されているかを学ぶ絶好の機会となる。
公開されたアルゴリズムは、単一の巨大なプログラムではなく、複数のサービスやモデルが連携して動作する複雑なシステムである。その主な役割は、膨大な数のツイートの中から、各ユーザーが最も関心を持つ可能性が高いと予測されるものを抽出し、適切な順序でタイムラインに表示することだ。このプロセスは、大きく分けて三つの主要な段階で構成されている。それは「候補ツイートの収集」「機械学習によるランキング」「ヒューリスティックとフィルタリングによる最終調整」である。
第一の段階は、タイムラインに表示する可能性のあるツイートの候補を大規模に集める「候補ツイートの収集」である。Xは、数十億存在するツイートの中から、まず約1500件の候補を絞り込む。この候補は、主に二つの源泉から収集される。一つは、ユーザーがフォローしているアカウントからのツイートで、「In-Network」ソースと呼ばれる。もう一つは、ユーザーがフォローしていないアカウントからのツイートで、「Out-of-Network」ソースと呼ばれる。後者のツイートは、ユーザーと似た興味を持つ他のユーザーが高く評価したツイートや、ユーザーが過去にやり取りしたツイートと関連性の高いトピックのツイートなど、様々な方法で発見される。この段階では、ユーザー間の関係性や興味の類似性を高速に計算するため、GraphJetのようなグラフ構造を扱う特殊な技術が利用されている。こうして、ユーザーがすでに知っている情報と、新たな発見につながる情報のバランスを取りながら、多様な候補ツイート群が形成される。
第二の段階は、収集された約1500件の候補ツイートを、ユーザーの関心度に応じて順序付けする「ランキング」である。ここが推薦システムの中核であり、高度な機械学習モデルが中心的な役割を果たす。このモデルは、過去のユーザーの膨大な行動データを学習している。例えば、ユーザーがどのようなツイートに「いいね」やリツイートをしたか、どのツイートに返信したか、特定のツイートをどのくらいの時間表示していたか、ツイート内のリンクやプロフィールをクリックしたか、といった様々な情報がモデルの学習データとなる。モデルはこれらのデータから、あるツイートがユーザーにとってどれほど魅力的かを予測し、数値的なスコアを算出する。リツイートや返信、いいねといった積極的なエンゲージメントは高いスコアにつながる一方、報告やブロック、ミュートといった否定的なアクションはスコアを下げる要因となる。このスコアリングによって、候補ツイートはユーザーの関心が高い順に精密に並べ替えられる。
第三の段階は、ランキング付けされたツイートのリストに最終的な調整を加える「ヒューリスティックとフィルタリング」である。機械学習モデルによるランキングだけでは、タイムラインの品質として万全とは言えないため、様々なルールに基づいた処理が適用される。例えば、ユーザーがブロックしているアカウントのツイートや、不適切(NSFW)と判定されたコンテンツ、すでに閲覧したツイートなどはこの段階で除外される。また、同じ発信者のツイートが連続して表示されすぎないように多様性を確保したり、フォローしている人とそうでない人のツイートのバランスを調整したりする処理も行われる。さらに、広告やフォローをおすすめするアカウント情報なども、ユーザー体験を損なわないように適切な位置に挿入される。これらの調整を経て、最終的にユーザーの目に触れるタイムラインが完成する。
このように、Xの推薦アルゴリズムは、複数の異なる技術要素が連携し、膨大なデータをリアルタイムで処理することで成り立っている。ソースコードが公開されたことにより、これまでブラックボックスであった巨大プラットフォームの心臓部が明らかになった。このコードを分析することは、分散システムにおけるデータ処理の流れ、機械学習モデルの実社会での応用、そして膨大なトラフィックを捌くためのエンジニアリング上の工夫を具体的に学ぶための、またとない教材となるだろう。