【ITニュース解説】Warner Bros. sues Midjourney to stop AI knockoffs of Batman, Scooby-Doo

2025年09月06日に「Ars Technica」が公開したITニュース「Warner Bros. sues Midjourney to stop AI knockoffs of Batman, Scooby-Doo」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

ITニュース概要

Warner Bros.がAI画像生成サービスMidjourneyを著作権侵害で訴えた。AIがバットマンやスクービー・ドゥなど、同社キャラクターの模倣品を作ることを阻止するためだ。

ITニュース解説

ワーナー・ブラザーズがAI画像生成サービスを提供するMidjourneyを提訴したというニュースが報じられた。この訴訟は、AIが生成するコンテンツと著作権の間に存在する複雑な問題を浮き彫りにしている。特に問題となっているのは、Midjourneyが生成する画像が、ワーナー・ブラザーズが所有する人気キャラクターであるバットマンやスクービー・ドゥといった著作物の「模倣品」、つまり「AIによる模倣品(AI knockoffs)」にあたるのではないかという点だ。この提訴は、既にディズニーやユニバーサル・ピクチャーズが起こした同様の訴訟における議論をさらに推し進めるものであり、今後のAI技術の利用と著作権のあり方に大きな影響を与える可能性を秘めている。

システムエンジニアを目指す上で、AI技術の進化は避けて通れないテーマだが、その技術が社会に与える影響、特に法的・倫理的な側面についても理解しておくことは非常に重要だ。今回の訴訟の核心は、AIが学習したデータから新しいコンテンツを生成するプロセスが、既存の著作権を侵害するかどうかという点にある。MidjourneyのようなAI画像生成ツールは、インターネット上にある膨大な数の画像を学習データとして取り込み、そこからパターンやスタイルを抽出する。そして、ユーザーが入力したテキストの指示(プロンプトと呼ばれる)に基づいて、学習した内容を基に新たな画像を生成する。この技術によって、誰でも手軽に高品質な画像を生成できるようになった一方で、学習データに含まれる著作権で保護されたコンテンツの扱いや、生成されたコンテンツが既存の著作物に酷似した場合の責任の所在が新たな法的課題となっている。

ワーナー・ブラザーズは、Midjourneyが生成する画像の中に、自社のキャラクターの特徴やスタイルを色濃く反映したものが存在し、それがオリジナル作品の著作権を侵害していると主張している。例えば、バットマンであれば、そのマスクのデザイン、エンブレム、コスチュームの色合いやシルエットといった要素が、生成されたAI画像に意図せずとも再現されてしまうケースが考えられる。このような画像は、オリジナルのキャラクターの「派生物」とみなされ、著作権者の許可なく作成・配布された場合、著作権侵害にあたる可能性がある。AIが既存の著作物を単にコピーするのではなく、その「スタイル」を模倣し、再構築して新たな画像を生成する点が、これまでの著作権侵害の議論をより複雑にしているのだ。

MidjourneyのようなAI開発企業は、通常、AIの学習プロセスは著作権法における「フェアユース」(公正な利用)の原則の範囲内であると主張することが多い。フェアユースとは、著作権者の許可なく著作物を利用できる特定の状況を指し、例えば批評、コメント、ニュース報道、教育、研究などがこれに該当する。AIの学習は、情報を「変形」して利用するものであり、オリジナルの市場価値を直接的に損なうものではない、という論法が用いられることがある。しかし、ワーナー・ブラザーズのような権利者側は、AIによる模倣品がオリジナルのキャラクターグッズや関連商品の市場を奪う可能性があり、フェアユースの範囲を超える「商業的な侵害」であると主張する。

この問題の根底には、AIの「学習」という行為が著作権法上の「複製」にあたるのか、あるいは「新たな創作」とみなされるのかという根本的な問いがある。AIが画像を生成する際、内部的には数値を処理し、ピクセルを配置しているだけであり、人間のように「意図」してキャラクターを模倣しているわけではない。しかし、その結果として生み出された画像が、既存のキャラクターと識別困難なほど似ている場合、法的にはどう解釈されるべきか。また、Midjourneyのようなサービスは、ユーザーが入力するプロンプトによって生成されるコンテンツが大きく左右されるため、著作権侵害の責任がAI開発者にあるのか、それともプロンプトを入力したユーザーにあるのか、という点も議論の対象となる。

先行するディズニーやユニバーサルの訴訟も、AIが生成するコンテンツの「類似性」と「商業的影響」を主な論点としている。これらの大手エンターテイメント企業が相次いでAI企業を提訴している背景には、自社の知的財産を保護し、AI技術の無秩序な利用による市場の混乱を防ぎたいという強い意思がある。キャラクタービジネスは、映画やアニメの収益だけでなく、関連商品やテーマパークなど多岐にわたるため、著作権の侵害は企業にとって大きな損失につながる可能性がある。

システムエンジニアを目指す皆さんにとって、この種の訴訟は、単なる法的なニュースとして見過ごせない。AI技術を開発し、運用する際には、技術的な実現可能性だけでなく、それが社会にどのような影響を与えるか、特に著作権やプライバシーといった法的側面を深く考慮する必要がある。学習データの収集方法、AIモデルの設計、生成されるコンテンツのフィルタリングや監視の仕組みなど、技術的な判断が法的なリスクに直結するケースが増えていくことだろう。今回のワーナー・ブラザーズ対Midjourneyの訴訟の行方は、今後のAI開発の方向性、特にコンテンツ生成AIにおける倫理的・法的ガイドラインの形成に決定的な影響を与えることになるだろう。技術革新のスピードに法整備が追いつくことは難しいが、技術者として、こうした社会的な議論を理解し、責任あるAI開発に取り組む姿勢が今後ますます求められる。

関連コンテンツ

関連ITニュース