【ITニュース解説】Windows 11 SSD issues blamed on reviewers using ‘early versions of firmware’
2025年09月09日に「The Verge」が公開したITニュース「Windows 11 SSD issues blamed on reviewers using ‘early versions of firmware’」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
Windows 11更新後に一部SSDで発生した不具合は、OSではなくSSD側の古いファームウェアが原因と判明。ハードウェアを制御する基本ソフトの不備がOS更新で表面化した形で、ソフトウェアとハードウェア双方の適切な更新が重要であることを示す事例となった。(119文字)
ITニュース解説
最近、特定のWindows 11更新プログラムを適用した一部のPCで、SSDが認識されなくなったり、ブルースクリーンが発生してシステムが起動しなくなったりするという深刻な問題が報告され、大きな注目を集めた。当初、多くのユーザーやメディアは、原因がMicrosoftのWindows Updateにあると指摘していたが、その後の調査で、問題の根本は別の場所にあることが明らかになった。この一連の出来事は、システムの安定性を維持する上で重要な示唆を与えてくれる。
問題の現象は、Windows 11の累積更新プログラム「KB5063878」や「KB5062660」をインストールした後に発生した。具体的には、PCの主要な記憶装置であるSSD(Solid State Drive)が正常に動作しなくなり、データの読み書きができなくなるというものだ。SSDは、内部に搭載された「コントローラー」と呼ばれる半導体チップによって、データの読み書きや管理が行われている。これはSSDの頭脳とも言える非常に重要な部品であり、その性能がSSD全体の性能を左右する。今回の問題が報告されたSSDの多くには、台湾のPhison(ファイソン)社が開発したコントローラーが搭載されていた。PhisonはSSDコントローラーの主要メーカーの一つであり、世界中の多くのSSDブランドが同社のコントローラーを採用している。そして、このコントローラーを制御しているのが「ファームウェア」と呼ばれるソフトウェアだ。ファームウェアは、ハードウェアに組み込まれ、その機器の基本的な動作を司るプログラムである。PCのOSがアプリケーションを動かすように、ファームウェアはハードウェアそのものを直接制御する役割を担っている。
問題発生当初、原因はWindows Updateにあるという見方が一般的だった。特定のアップデート後に問題が発生したため、そう考えるのは自然な流れであった。しかし、SSDコントローラーを製造するPhison社が調査を行った結果、直接の原因はWindows Updateではなく、SSDに書き込まれていた「初期バージョンのファームウェア」と、PCのマザーボードに搭載されている「古いバージョンのBIOS」にあると結論付けた。BIOS(または後継のUEFI)は、PCの電源投入後に最初に起動し、OSを立ち上げるための基本的なプログラムである。Phison社の発表によると、Windows UpdateによるOSの挙動の変化が引き金となり、古いファームウェアやBIOSに内包されていた潜在的な不具合が顕在化した、というのが真相のようだ。これは、ソフトウェアのアップデートが、それまで問題なく動いていたハードウェアの隠れた欠陥を表面化させるという、システム開発や運用において時折見られる典型的な事例である。つまり、Microsoftの更新プログラム自体にSSDを故障させるコードが含まれていたわけではなく、OS環境の変化に対応しきれない古いファームウェア側の準備不足が根本的な原因だったと言える。
さらにPhison社は、この問題が発生したSSDの多くが、製品レビューを行うメディアやインフルエンサー向けに提供されたエンジニアリングサンプル(量産前の試作品)や、ごく初期に製造された製品であったことを指摘している。これらの製品には、開発途中のファームウェアや、後に修正されることになる古いバージョンのファームウェアが搭載されていた可能性が高い。現在、市場で一般的に販売されている製品の多くは、既に対策済みの新しいファームウェアが適用されているため、大多数の一般ユーザーがこの問題に遭遇するリスクは非常に低いと考えられる。もし同様の症状が発生した場合は、使用しているSSDの製造メーカーのウェブサイトを確認し、提供されている最新のファームウェアに更新することで問題が解決する。ファームウェアの更新は、専用のツールを使って比較的簡単に行うことができる。
この一連の出来事は、システムエンジニアを目指す者にとって重要な教訓を含んでいる。第一に、問題発生時の原因究明における「切り分け」の重要性である。一見するとソフトウェア(OSアップデート)が原因に見える問題でも、根本原因はハードウェアやそのファームウェアにある可能性がある。現象だけを見て安易に結論を出すのではなく、システムを構成する様々な要素を疑い、多角的に調査する姿勢が不可欠だ。第二に、ファームウェアやドライバを常に最新の状態に保つことの重要性である。OSのアップデートだけでなく、PCを構成する各ハードウェアコンポーネントのファームウェアや、それらをOSに認識させるためのドライバもまた、システムの安定性を支える重要な要素だ。これらを定期的に更新することで、潜在的な不具合を未然に防ぎ、セキュリティを向上させることができる。最後に、情報の正確性を見極める能力の重要性である。今回はSNSなどを中心に「Windows UpdateがSSDを壊す」という情報が拡散したが、最終的にはメーカーの公式発表によって異なる事実が明らかにされた。断片的な情報に惑わされず、開発元などの一次情報源を確認し、正確な状況を把握することが、エンジニアとしての信頼性を高める上で極めて重要となる。システムの安定稼働は、OS、アプリケーション、ドライバ、ファームウェアといった多様なソフトウェアとハードウェアの精密な連携によって成り立っていることを、改めて認識させられる事例であった。