【ITニュース解説】Windowsでpingが通らない原因はコレ? ファイアウォール設定で応答を許可する方法

2025年09月09日に「@IT」が公開したITニュース「Windowsでpingが通らない原因はコレ? ファイアウォール設定で応答を許可する方法」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

Windows PCの稼働確認に使うpingが通らないのは、初期設定でファイアウォールが応答をブロックしているためだ。セキュリティ機能であるWindows Defenderファイアウォールの設定で「ICMPエコー要求」の受信を許可すると、pingに応答させることができる。(119文字)

ITニュース解説

システムエンジニアの業務において、ネットワークの接続状態を確認することは、最も基本的かつ重要な作業の一つである。その際に広く用いられるのが「ping」というコマンドだ。pingは、特定のコンピュータがネットワーク上で正常に稼働しているか、また、そのコンピュータとの間で通信が確立できるかを調べるための基本的な診断ツールとして機能する。しかし、Windows OSを搭載したコンピュータに対してpingを実行した際、応答がなく、疎通確認ができないという状況に直面することがある。これはコンピュータの故障やネットワークの物理的な問題ではなく、Windowsのセキュリティ設定に起因する場合がほとんどである。

pingの仕組みは非常にシンプルだ。コマンドを実行すると、自分のコンピュータから対象のコンピュータへ向けて、「ICMP Echo Request」と呼ばれる特別なデータパケット(通信データのかたまり)が送信される。これは、相手に対して「そこにいますか?」と呼びかけるようなものだ。この呼びかけを受け取ったコンピュータは、正常に動作していれば「ICMP Echo Reply」という応答パケットを返信する。この「Reply(応答)」が返ってくることで、相手のコンピュータがネットワーク上で稼働しており、通信経路にも問題がないと判断できる。応答が返ってくるまでの時間も表示されるため、ネットワークの遅延状況を把握する目安にもなる。逆に、応答が返ってこない場合は、相手のコンピュータが停止している、ネットワーク経路に障害がある、あるいは何らかの理由で応答がブロックされている、といった原因が考えられる。

Windows OS、特に近年のバージョンでは、初期設定の状態で外部からのpingに応答しないように構成されている。これは、セキュリティを強化するための意図的な仕様である。ファイアウォールは、コンピュータを不正なアクセスや攻撃から守るための壁の役割を担っている。外部からのpingに応答するということは、攻撃者に対して「このIPアドレスには活動中のコンピュータが存在します」という情報を与えてしまうことになりかねない。攻撃者はまず、攻撃対象となるコンピュータを探すために、手当たり次第にpingを送信することがある。これに応答してしまうと、自らの存在を知らせ、攻撃の標的になるリスクを高める可能性がある。そのため、Windows Defenderファイアウォールは、デフォルトでこの種の通信をブロックし、コンピュータの存在を外部から隠すことで、セキュリティレベルを高めているのだ。

しかし、企業内のネットワークなど、管理された安全な環境においては、サーバーやクライアントPCが正常に稼働しているかを確認するために、pingによる死活監視は非常に有効な手段となる。このような場合、意図的にpingへの応答を許可する設定変更が必要になる。この設定は、Windows Defenderファイアウォールの「受信の規則」を操作することで行うことができる。ファイアウォールの規則は、どのような種類の通信を、どの方向(内から外へ、外から内へ)で許可または拒否するかを定義したリストである。pingの応答を許可するには、外部から入ってくるpingの要求パケット(ICMP Echo Request)を受け入れるための規則を有効にする必要がある。

この設定変更を行うには、まず「Windows Defender ファイアウォールの詳細設定」管理ツールを起動する。画面左側のツリーから「受信の規則」を選択すると、現在定義されているすべての受信ルールが一覧で表示される。この中から、「ファイルとプリンターの共有 (エコー要求 - ICMPv4-In)」という名前の規則を探し出す必要がある。「ICMPv4」とは、現在最も広く使われているインターネットプロトコルバージョン4におけるICMP通信を指す。初期状態では、この規則は無効化されており、アイコンが灰色で表示されている。この規則を選択し、右クリックメニューまたは画面右側の操作パネルから「規則の有効化」をクリックすると、規則が有効になり、アイコンが緑色のチェックマーク付きに変わる。この操作により、ファイアウォールはこの規則に合致する通信、すなわち外部からのIPv4によるping要求を通過させるようになり、コンピュータはpingに応答を返すようになる。もし、ネットワーク環境がIPv6(次世代のインターネットプロトコル)で構築されている場合は、同様に「ファイルとプリンターの共有 (エコー要求 - ICMPv6-In)」という規則も有効化する必要がある。

このように、Windowsでpingが通らない原因の多くは、ファイアウォールの設定によるものであることを理解しておくことが重要だ。システムエンジニアを目指す初心者にとって、コマンドが期待通りに動作しない場面に遭遇したとき、その原因がツールの問題だけでなく、OSのセキュリティ機能やネットワークの仕組みに根差していることを知ることは、トラブルシューティング能力を向上させる上で不可欠な知識となる。pingへの応答を許可する設定は、ネットワークの監視や問題解決を容易にする一方で、セキュリティ上の考慮も必要となる。どのような環境で、どのような目的のために設定を変更するのかを正しく判断する能力も、エンジニアには求められる。このファイアウォールの設定は、ネットワークの可視性とセキュリティのバランスを学ぶ上での、実践的な第一歩と言えるだろう。