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【ITニュース解説】Writing an operating system kernel from scratch

2025年09月16日に「Reddit /r/programming」が公開したITニュース「Writing an operating system kernel from scratch」について初心者にもわかりやすく解説しています。

作成日: 更新日:

ITニュース概要

OSの核となるカーネルを、全く何もない状態から自分で開発するプロセスを紹介する記事。システムの根本的な仕組みを理解し、より高度なプログラミングスキルを身につけたいエンジニア志望者にとって有益な情報を提供する。

ITニュース解説

「オペレーティングシステムカーネルをゼロから書く」という挑戦は、コンピュータの最も深遠な部分を探求する行為であり、システムエンジニアを目指す初心者にとって、コンピュータの動作原理を根本から理解するための非常に価値ある学びの機会を提供する。このテーマは、私たちが普段何気なく利用しているスマートフォンやパソコンの裏側で、一体何が起きているのかという疑問に真正面から向き合うことを意味する。

まず、オペレーティングシステム(OS)とは何かを理解する必要がある。OSは、WindowsやmacOS、Linuxといったソフトウェアの総称であり、コンピュータのハードウェア(CPU、メモリ、ストレージなど)と、私たちが使うアプリケーションソフトウェア(Webブラウザ、文書作成ソフトなど)の間に位置する。OSがなければ、アプリケーションはハードウェアを直接制御できず、私たちはコンピュータを効率的に利用できない。OSは、ハードウェアのリソースを管理し、複数のアプリケーションが同時に実行できるように調整したり、ファイルやネットワークの操作を提供したりする、いわばコンピュータ全体の司令塔である。

そして、カーネルとは、そのOSの中核をなす部分を指す。カーネルは、OSの他の部分やアプリケーションからの要求を受け取り、それをハードウェアが理解できる命令に変換して実行させる役割を担う。例えば、アプリケーションがメモリを使いたいとき、ファイルにデータを保存したいとき、あるいはネットワークを通じて通信したいときなど、すべての重要な操作はカーネルを経由して行われる。カーネルこそが、CPUのスケジューリング(どのプログラムにいつCPUを使う権利を与えるか)、メモリの割り当て、デバイス(キーボード、マウス、ディスクドライブなど)の管理、そしてシステムコールの処理(アプリケーションがOSの機能を利用するための窓口)といった、コンピュータの基本的な動作を司っているのだ。

「ゼロからカーネルを書く」とは、既存のOSや開発環境が提供する便利な機能を一切使わず、本当に最初から、つまりコンピュータの電源を入れてからOSが起動するまでの最低限のプロセスである「ブートローダ」から、すべて自分でコードを記述していくことを意味する。これは、普段当たり前のように使っている「printf」のような関数や、メモリを確保する「malloc」といった基本的な機能も、すべて自分で実装しなければならないということだ。既存のOSが提供する高度な抽象化された機能の下ではなく、ハードウェアが直接理解できるような低レベルのコード、具体的にはC言語やアセンブリ言語を用いて、コンピュータの根幹部分を構築していくことになる。

この挑戦がなぜこれほど難しいのか、いくつかの理由がある。第一に、低レベルプログラミングの知識が不可欠だ。メモリのアドレスを直接操作したり、CPUのレジスタ(CPU内部の高速な記憶領域)を制御したりするスキルが求められる。第二に、メモリ管理は非常に複雑だ。アプリケーションごとに仮想メモリ空間を設け、物理メモリと適切にマッピングする仕組み、ページングやセグメンテーションといった概念を理解し、安全かつ効率的にメモリを管理する機構を実装する必要がある。誤ったメモリ操作は、システム全体のクラッシュに直結する。

第三に、プロセス管理とスケジューリングも大きな課題となる。複数のプログラムが同時に実行されているように見せるために、CPUの時間を効率的に割り振り、それぞれのプログラムの状態を保存・復元する(コンテキストスイッチ)仕組みを構築しなければならない。さらに、デバイスドライバの作成も避けて通れない。キーボードからの入力、ディスプレイへの出力、ストレージへの読み書きなど、ハードウェアと直接対話し、それらを抽象化してアプリケーションに提供するためのソフトウェアを開発する必要がある。これは、各ハードウェアの仕様書を深く読み込み、その通りに制御コードを書くことを意味する。

また、ファイルシステムの実装も不可欠だ。データをストレージにどのように保存し、整理し、読み書きできるようにするかというルールと構造を定義し、それをカーネル内で実現する。そして、割り込み処理の仕組みも重要だ。ハードウェアからのイベント(キーボードが押された、ネットワークパケットが届いたなど)や、CPU内部で発生する例外(ゼロ除算など)に対応するため、実行中のプログラムを一時停止し、適切な処理を実行するメカニズムを構築する必要がある。

これらの要素をすべてゼロから構築する過程では、デバッグも非常に困難を極める。通常のアプリケーション開発では、デバッガを使ってプログラムの実行を一時停止したり、変数の値を調べたりできるが、カーネルが動作しない場合、そのデバッガ自体も動かない可能性があるため、ログ出力やエミュレータの活用など、特殊な手法を用いる必要がある。

しかし、このような途方もない挑戦には、それを上回るほどの大きな学びと喜びがある。この経験を通じて、システムエンジニアとして不可欠なコンピュータサイエンスの深い知識、すなわちデータ構造、アルゴリズム、コンピュータアーキテクチャ、オペレーティングシステム原理などを実践的に習得できる。また、複雑なシステムを設計し、実装し、デバッグする能力が飛躍的に向上する。

何よりも、コンピュータの「なぜ」という根源的な問いに対する答えを自分自身で導き出すことができるようになる。アプリケーションがどのように動作し、OSがそれをどのように支えているのか、ハードウェアがソフトウェアの命令にどのように反応するのか、といったシステム全体の流れを鳥瞰し、それぞれのコンポーネントが果たす役割を明確に理解できるようになるだろう。これは、将来どのような技術分野に進むにしても、非常に強力な基盤となる知識であり、複雑なシステムの問題を解決するための思考力と洞察力を養う上で、これほど実り多い経験は他にない。システムエンジニアを目指す者にとって、この挑戦は、技術者としての自身の限界を押し広げ、深い専門知識と揺るぎない自信を築くための最高の道筋となるのだ。

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