アレスタ(アレスタ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

アレスタ(アレスタ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

アレスタ (アレスタ)

英語表記

ALESTA (アレー スタ)

用語解説

アレスタとは、電子機器や電気設備を過度な電圧、特に「サージ」と呼ばれる瞬間的な異常電圧から保護するための装置である。ITシステムにおいて、サーバー、ネットワーク機器、ストレージなどの重要な機器を安定稼働させる上で不可欠な存在であり、システムエンジニアがシステムの堅牢性や信頼性を設計する際にはその理解が求められる。

過電圧は、主に外部からの要因と内部からの要因によって発生する。外部からの要因の代表格は落雷による「雷サージ」である。落雷が直接設備に落ちることは稀だが、近くに落ちた雷によって発生する電磁誘導や接地電位の上昇により、送電線や通信線に異常な高電圧が瞬間的に発生し、それが機器へ侵入することがある。この雷サージは非常に強力で、数千ボルトから数万ボルトにも達し、機器の絶縁を破壊したり、半導体素子を損傷させたりする。内部からの要因としては、工場の大型モーターや変圧器のスイッチをオンオフする際に発生する「開閉サージ」がある。これは雷サージほど強力ではないものの、頻繁に発生し、機器の誤動作や劣化を引き起こす可能性がある。これらの過電圧は、機器の故障やデータの破損、ひいてはシステム全体のダウンタイムに直結するため、適切な対策が必須となる。

アレスタは、このような過電圧が発生した際に、その電圧を安全なレベルにまで抑制し、機器を保護する役割を担う。その動作原理は、普段は電気を通さない「高インピーダンス」の状態にあり、回路の正常な動作を妨げないことにある。しかし、過電圧が侵入すると、アレスタは瞬時に電気を通しやすい「低インピーダンス」の状態に変化する。これにより、過電圧の大部分を大地へ放流したり、吸収したりすることで、保護対象の機器にかかる電圧を抑制する。過電圧が解消されると、アレスタは自動的に再び高インピーダンスの状態に戻り、通常の電気回路に戻る。この一連の動作は非常に高速で行われるため、機器への影響を最小限に抑えることができる。アレスタに用いられる主要な素子としては、酸化亜鉛(ZnO)を主成分とする「バリスタ」が一般的である。バリスタは、ある一定の電圧を超えると急激に抵抗値が低下するという特性を持ち、繰り返し動作に優れているため、電源ラインや通信ラインの保護に広く採用されている。他にも、ギャップ型やサイリスタ型の素子を用いたアレスタも存在するが、現代のITシステムにおいてはバリスタを主体としたサージ保護デバイス(SPD: Surge Protective Device)が主流となっている。

アレスタは様々な場所に設置され、ITシステムを多角的に保護している。電源ライン用アレスタは、商用電源から供給される電力線に侵入する雷サージや開閉サージから機器を守る。分電盤やコンセントタップに組み込まれるタイプ、あるいは個別の機器の電源入力部に設置されるタイプがある。通信ライン用アレスタは、イーサネットケーブル、電話回線、光ファイバー変換器など、データ通信を行う回線に侵入するサージからネットワーク機器を保護する。特に、建物の異なる区画間を結ぶケーブルや、屋外に敷設されるケーブルはサージの影響を受けやすいため、通信ライン用アレスタの設置は重要である。また、近年ではサーバーやルーター、スイッチなどのIT機器そのものに、小型のアレスタが内蔵されていることも多い。これらのアレスタが連携して、多段階での保護を実現し、ITシステムの信頼性を向上させている。

システムエンジニアがアレスタについて理解することは、システム設計において極めて重要である。アレスタの適切な選定と設置は、高価なIT機器の故障を防ぎ、その寿命を延ばすことにつながる。万が一の過電圧によって機器が破壊されれば、データの消失やシステムの停止を引き起こし、ビジネスに甚大な損害を与える可能性がある。アレスタを導入することで、システムのダウンタイムを最小限に抑え、可用性を高めることができるため、結果的に修理費用や機会損失といったコストの削減にも寄与する。アレスタを選定する際には、保護対象のシステムが晒されると想定されるサージのエネルギー量(耐サージ電流容量)や、保護したい機器が耐えられる最大の電圧(制限電圧)を考慮する必要がある。また、アレスタの性能を最大限に引き出すためには、適切な接地(アース)が不可欠である。過電圧を大地へ安全に放流するためには、低抵抗で確実な接地経路が確保されていなければならない。アレスタは消耗品であり、大電流のサージを受けると劣化したり、寿命を迎えたりすることがあるため、定期的な点検や交換計画もシステム運用の一部として考慮するべきである。これらの知識を持つことで、システムエンジニアはより堅牢で信頼性の高いITインフラを構築し、運用することが可能となる。

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