共通線信号No.7 (シグナリングナンバーセブン) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
共通線信号No.7 (シグナリングナンバーセブン) の読み方
日本語表記
共通線信号No.7 (シグナリングナンバーセブン)
英語表記
Common Channel Signaling No. 7 (コモンチャンネルシグナリングナンバーセブン)
共通線信号No.7 (シグナリングナンバーセブン) の意味や用語解説
共通線信号No.7(Signalling System No. 7、略称SS7)は、主に公衆交換電話網(PSTN)や携帯電話網で利用される、通信を制御するための信号方式プロトコル群である。電話の発信から接続、切断までの一連の呼制御をはじめ、SMSの送受信、番号ポータビリティ、携帯電話のローミングといった現代の多様な通信サービスを実現するための基盤技術として、非常に重要な役割を担っている。SS7が持つ最大の特徴は、その名称にも含まれる「共通線信号方式」を採用している点にある。これは、利用者が会話をするための音声データが通る回線(通話路)と、通信を制御するための信号データが通る専用の回線(信号線)を物理的、あるいは論理的に完全に分離する方式を指す。この信号と音声の分離により、通信網全体の効率性と柔軟性が飛躍的に向上した。SS7が登場する以前の個別線信号方式では、音声と同じ回線を用いてダイヤルパルスやDTMF音といった制御信号を送っていた。この方式では、通話が確立するまで回線を占有し続けるため非効率であり、また、通話中は新たな制御信号を送れないため、提供できるサービスに大きな制約があった。SS7はこれらの課題を根本から解決し、高速な呼接続や高度な付加サービスの提供を可能にした。いわば、電話網全体を制御する高度な神経系として機能するシステムである。 SS7ネットワークのアーキテクチャは、主に3種類の信号局と呼ばれるノードから構成されている。第一の要素はSSP(Service Switching Point)であり、これは一般的に電話交換機に実装される機能である。利用者の電話機に最も近い場所に位置し、電話の発信や着信といった要求を受け付け、それをSS7ネットワーク上で扱える信号メッセージに変換して送出する起点となる。第二の要素はSTP(Signal Transfer Point)である。これは信号網におけるパケット交換機やルーターのような役割を担い、SSPや他のノードから送られてきた信号メッセージの宛先情報を解析し、最適な経路で目的のノードへ中継・転送する。ネットワークの信頼性と効率性を確保するための中心的な存在である。第三の要素はSCP(Service Control Point)であり、各種の付加サービスを提供するための情報が格納されたデータベースとしての機能を持つ。例えば、フリーダイヤル(0120番号)がかけられた際に、その番号を実際の着信先の電話番号に変換する処理や、番号ポータビリティで契約事業者を変更した利用者の正しい接続先情報を管理する処理などを担当する。これらのノードは、電話をかける際に次のように連携して動作する。発信側のSSPが利用者からの発信要求を受け取ると、宛先番号を解釈し、STPを経由して着信側のSSPに接続要求の信号を送る。この過程で、フリーダイヤルの番号変換などが必要な場合は、SSPはSCPに問い合わせを行い、必要な情報を取得する。着信側のSSPは信号を受けて相手の電話機を呼び出し、相手が応答するとその旨を信号で発信側のSSPに返す。この応答信号の確認が取れて初めて、両SSP間で音声データを通すための通話路が確立され、通話が開始される。この一連のやり取りはすべて専用の信号網で行われるため、通話路は実際に通話が始まるまで占有されず、回線資源を極めて効率的に利用できる。 SS7のプロトコル体系は、コンピュータネットワークで標準的に用いられるOSI参照モデルと同様の階層構造を持っている。このプロトコルスタックは、大きくメッセージ転送部(MTP)と、その上位に位置するユーザー部(User Part)に分けられる。MTPは、OSIモデルの下位3層(物理層、データリンク層、ネットワーク層)に相当し、信号メッセージをエラーなく確実に宛先ノードへ転送する基本的な通信機能を提供する。MTPはさらにLevel 1からLevel 3までの3階層に細分化されており、物理的な伝送路の規定から、信号メッセージの誤り検出と再送、そして信号網内でのルーティングまでを担う。MTPの上位には、より高度な機能を提供する複数のプロトコルが存在する。その一つであるSCCP(Signalling Connection Control Part)は、MTPのネットワーク層機能を拡張し、エンドツーエンドでのコネクションレス型およびコネクション指向型の通信サービスを提供する。これにより、単なるノード間の通信だけでなく、特定のアプリケーションを指定した通信が可能となる。さらにその上位には、データベースへの問い合わせと応答といった一連のトランザクション処理を制御するTCAP(Transaction Capabilities Application Part)や、電話やISDNの基本的な呼の接続・切断を制御するISUP(ISDN User Part)などが位置する。これらのプロトコルが適切に連携することで、単純な電話の接続だけでなく、SMSの配送や携帯電話利用者の位置情報管理といった、より複雑で高度なサービスが実現されている。近年、通信網のIP化が進展したことに伴い、SS7信号をIPネットワーク上で伝送するための技術としてSIGTRAN(Signalling Transport)が標準化された。これにより、長年にわたり通信インフラを支えてきたSS7の仕組みを活かしながら、次世代のIP網とのシームレスな連携が可能となっている。