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ISDN(アイエスディーエヌ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

ISDN(アイエスディーエヌ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

ディジタル総合網 (ディジタルソウゴウモウ)

英語表記

ISDN (アイエスディーエヌ)

用語解説

ISDNとは、Integrated Services Digital Networkの略称であり、日本語ではサービス総合デジタル網と訳される通信規格である。これは、従来のアナログ電話回線網をデジタル化し、1本の電話回線で音声、データ、画像などの多様な情報を統合的に伝送することを目的として開発された。インターネットが一般家庭に普及し始めた1990年代後半から2000年代初頭にかけて、アナログ回線に代わる高速なデジタル回線として広く利用され、日本のデジタル通信の黎明期を支えた重要な技術である。ADSLや光ファイバーといったブロードバンド回線が普及するまでの間、ダイヤルアップ接続の主流として多くのユーザーに利用された。

ISDNの最も基本的な特徴は、通信をすべてデジタル信号で扱う点にある。それまでのアナログ回線では、音声の波形をそのまま電気信号として伝送していたため、伝送距離が長くなるとノイズの影響で信号が劣化しやすかった。これに対し、ISDNはすべての情報を0と1の羅列であるデジタルデータに変換して送受信する。デジタル信号はノイズによる影響を受けにくく、もし信号が多少劣化しても元の0と1の状態に復元しやすいため、アナログ回線と比較して非常に高品質で安定した通信を実現できた。これにより、音声通話は雑音の少ないクリアなものとなり、データ通信においてもエラーの発生率が低減した。

ISDNのサービスは、チャネルと呼ばれる複数の独立した通信路を設けることで、多様な通信を同時に提供する仕組みを持っていた。個人や小規模事業所向けに提供された最も一般的なサービスは「INSネット64」と呼ばれ、2本のBチャネルと1本のDチャネルから構成される。この構成は「2B+D」と表現される。BチャネルはBearer Channelの略で、実際の音声通話やデータ通信に使われる主要な通信路である。1本のBチャネルは64kbpsの通信速度を持つ。DチャネルはData Channelの略で、通信の接続や切断、発信者番号の通知といった制御信号のやり取りを専門に行うための通信路であり、速度は16kbpsである。この「2B+D」の構成により、ISDNユーザーは1本の物理的な回線契約でありながら、2つの通信を同時に行うことが可能だった。例えば、Bチャネルの1本を使って家族が電話をしている間に、もう1本のBチャネルを使ってインターネットに接続するという利用方法ができた。これは、1回線で1つの通信しかできなかったアナログ回線にはない、画期的な利点であった。さらに、2本のBチャネルを束ねて使用することで、通信速度を2倍の128kbpsに高める「マルチリンク」という技術も存在し、当時のインターネット接続環境としては高速な通信を実現した。

ISDNの登場は、インターネットの利用形態にも変化をもたらした。アナログモデムによる接続では、接続が確立するまでに数十秒の時間を要したが、ISDNはデジタル回線であるため比較的短時間で接続が完了した。また、通信料金は接続時間に応じて課金される従量制が基本であったが、特定のプロバイダへの接続に限って月額固定料金で利用できる「テレホーダイ」のようなサービスと組み合わせることで、夜間のインターネット利用が活発になった。

しかし、2000年代に入ると、より高速で常時接続が可能なADSLが登場し、ISDNの優位性は急速に失われていった。ADSLは既存の電話回線をそのまま利用しながら、下り最大数Mbpsから数十Mbpsという、ISDNをはるかに凌ぐ通信速度を実現した。さらに、料金も定額制が主流となり、インターネット利用の主役はISDNからADSLへと移行した。その後、光ファイバー(FTTH)の普及が決定打となり、ISDNはデータ通信の第一線から退くこととなった。そして、通信設備の老朽化や利用者の減少に伴い、通信事業者であるNTTはISDNのデータ通信サービスである「INSネット ディジタル通信モード」を2024年1月に終了し、IP網を利用した代替サービスへの移行を完了させた。これにより、ISDNはデータ通信の手段としての歴史的な役割を終えた。

システムエンジニアを目指す初心者にとって、ISDNはすでに過去の技術ではあるが、その仕組みを学ぶことには意義がある。デジタル通信の基礎、回線交換方式の概念、複数の通信チャネルを制御する仕組みなど、現代のネットワーク技術の根底にある多くの基本原理を理解するための良い教材となる。また、一部の企業の受発注システム(EDI)やPOSレジのデータ転送、ビルのエレベーター監視など、特定の用途ではIP網への移行が完了するまで利用が継続された経緯もあり、レガシーシステムを理解する上でISDNの知識が役立つ場面も想定される。技術の進化の過程を知ることは、新しい技術を学ぶ上でも重要な視点となる。

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